第34話 平穏からの
――1週間後
「じゃあギルドに行きますよ」
「はい」
アリシアはあれから事務的な話しかしてくれない。まあ紙も期間限定が終わったし、その後は特に新しいイベントが追加されるようなこともなく、久しぶりに俺は心の平穏を得ている。
平和だ……
本当に平和だ……アリシアが怒ってて事務的にしか接してくれないが、それがどうでもよく思えるほどに平和。この穏やかな自分これが本来の自分。
フェスに期間限定さえなければ俺はこんなにも平穏になれる。フェスや期間限定が発表されてからずっと心がザワザワしていたし、ずっと紙のことしか頭になかった。寝ても覚めてもひたすら紙のことを考えていた自分が嘘のようだ。
しかし紙を引くのは忘れたわけじゃない。勿論、毎日銅貨30枚の小遣いを持って毎日10連は引き続けている。
まあゴミしか引けないので殆どは腹の中に収まっているのだけれど。
アリシアと一緒にギルドに行くと微妙にザワザワとしている。
アリシアがクエスト以外のことで1週間ぶりぐらいに話しかけてくる。
「なんか今日のギルド、ザワザワしてますね」
「ああ。なんだろう?」
ということで聴覚強化(特)の俺は聞き耳を立ててみる。
「ノゲイラのパーティ全滅したらしいぞ?」
ん? ノゲイラ? どこかで聞いたことがある名前だ……もう少し聞いてみよう……
「え?アルルさんも死んだの?」
「ああ、全滅だからな」
「……俺……あの胸、好きだったのに……」
アルル……あの胸……
「あ!!!」
思わず大きな声が出てしまった。その所為でアリシアはビクッとなる。
「急に大きな声出さないでくださいよ」
「ご、ごめん……」
思い出した。金貨5枚、紙16666枚だった。平和ボケで完全に忘れてた……紙16666枚の取り立てに行かないと……
「ウェブ様、ノゲイラさんって方ご存知なんですか?」
「……知らないよ。そんなスイカみたいな胸の人」
「って知ってるんですね」
「うん。アリシアがうちに来る前にちょっとね……」
アリシアの目を盗んで瞬間移動してノゲイラのところに行って金貨5枚を貰わないと……勿論、アリシアには秘密で。アリシアに金貨5枚とかいうと笑顔で全部預かりますねって言いかねないからな。
「パーティ全滅って話しみたいですね……クエストでの事故でしょうか……ウェブ様もお知り合いを亡くされてご心痛でしょう」
……亡くされてご心痛? いやそんなことより紙16666枚なんだけ……ど……ってあれ?
「……ノゲイラ死んだの?」
「パーティで全滅ってみんな言ってるじゃないですか……ウェブ様は強いですけれどいつ足元を掬われるかもしれません注意しましょうね……」
「全滅……」
じゃあ……金貨5枚は貰えないってこと? 金貨5枚だぞ!! 金貨5枚!! 紙16666枚分だぞ!!
「そんなにショックを受けるほどのを知り合いだったんですね……」
「……」
「そんな言葉を失うほどショックをうけてるなんて……私達で弔い合戦をしましょう!! ウェブ様の為に!!」
「……」
別に弔うつもりなんてさらさらないけど……
他の人が話をしているのが聞こえてくる。
「クエストの事故かぁ」
「いや、そうじゃないらしいぞ。死体が見つかったのは倉庫街だ。全員首をすっぱっと斬られてたらしい。物盗りの犯行じゃないかって」
「物盗り?! あのノゲイラ達を殺せる物盗りなんているのか?」
「そりゃそうだよなぁ……」
物盗り、物盗り……お金を盗む。俺の紙16666枚を盗んだ。絶対にぶっ殺す!! ぶっ殺して俺の紙16666枚を頂く!!
「アリシア!! ノゲイラの弔い合戦だ!!」
「分かりました!」




