第33話 闇の目覚め
赤レンガの倉庫街、大きな満月が倉庫の中を照らしている。
体格のいい無精髭の男と胸の大きな女、メガネの神経質そうな男の3人組が誰かの到着を待っている。
女が体格のいい男に話しかけている。
「これで金貨10枚いい仕事よね。ノゲイラ」
「そうだろ?いい仕事だ」
「あの時私を売ろうとした癖に」
女がそう言うとノゲイラは慌てて否定をする。
「あ、あれはだな。あいつからお前を助ける為にだな……」
「ふんっ! どうだか……」
「来ましたよ」
メガネの男が呟く。
カツンカツンと女物のヒールの靴で歩く音がきこえてくる。
月明かりに照らされたその足音の持ち主は胸元がはだけた真っ黒のドレスに身を包み、下唇の右下にあるホクロが妖艶さにアクセントを加えている。
「石板、手に入れることが出来たのかしら?」
女がそう言うとノゲイラは「ああ」と言って手に持っている石板を女に見せる。
「神獣ミノタウロス1対1で倒せる人間がいるとはね。しかし貴方達では無いようね。あれを倒したら贖えない死が訪れるもの」
「一応、助っ人を雇いました……」
「ふーん。小賢しい真似をするのね……まあいいわ早く石板を見せて……」
「は、はい……」
ノゲイラはその女に石板を渡す。
「報酬をお願いします」
女は目を閉じて石板に触れている。
「ええ、確かに本物のようね……報酬をあげるわ」
女はそう言うと石板を割る。ノゲイラが「え?」と声を発すると首がコトリと落ち、女の手はカマキリのように変形している。
残された女と男は何が起こったのか理解できずに唖然としている。残された女が声を出そうとした瞬間、女と男の首は胴体から離れる。
「冥土の土産に教えてあげる。私の名前はデーモン族序列13位『死に鎌』私の手で殺されるなんて名誉なことよ」
そう言うと両手をカマキリの様に変形させた女は姿を消した。
◇◆◇
金貨1枚を握り締め念じる。
これで出る。いやこれで出す! 期間限定無限収納!! 必ず手に入れる。排出確率がなんだ! 出るまで引けば100%だろ!!
ということで穴にお金を入れる。
3333回引けるんだ必ず引ける!!
穴から次々と紙が出てくる。
俺はその紙を一枚ずつ気合いを入れて確認をする……
3333枚の紙の束が目の前にある。
★★★★悪食1枚、千里眼1枚、魔法反射1枚のみ。
★★★★★0枚
口の中に酸っぱい物が込み上げてくる……
なんでだよ……なんでだよ……どうして出ないんだよ!!
このクソ紙が!! もう2度と引いてやんねぇよ!! ふざけんな!!
……俺は最低のクソ野郎だな……アリシアが折角、俺の為に一緒に住める家を探そうって言ってくれてたお金まで使ってこんなゴミを引いてしまって……
ごめん……アリシア。ごめんよアリシア、俺がどうかしてた。
帰ったら真っ先にアリシアに謝ろう。そして一生懸命働いて二人で住める小さな家を借りよう……
さあ帰ろう。アリシアの元に。
不意にポケットに手を突っ込むと銅貨1枚があった。
銅貨1枚か……
ん? 銅貨1枚? 以前に引いてるやつで確か銅貨2枚分の余りがあったはず。
これが最後だ。どうせゴミしか出ないんだろうけど。引退記念にでも取っておくか……
銅貨1枚を穴に滑りこませる。
『銅貨3枚分です。1枚引きますか?』
うんといつもの様に頷く。
すんといつもの様に紙が1枚出て来る。期待はしてなかったが光もなにもしない。
何も期待せずに紙を引っ張りだそうとする、その瞬間……
ドキン! 心臓が高鳴る。あのミノタウロスの時に死んだ時の様に……
俺には俺にはチラッと見えた★★★★★の文字が……
まさか!! 手の中にある紙を大きく開く。
俺の目に飛び込んできたのは★★★★★無限収納。
見えない……何も見えない……性能を見ようとするが見えない。目から何かが溢れだして見えない……
「……やった……やりきった….…俺はやった! やったぞ!!」
涙を拭って改めて紙を眺める。
その性能はズボンの右ポケットに無限収納できますの文字。
おお!! これは凄い!! なんでも右ポケットに詰め込める!!
早速、無限収納の紙を入れてみる。入れた瞬間スーッと消える。
すげー……取り出すときは……ポケットに手を突っ込む。
すると例の文字が現れ収納一覧と表示されており、一覧の中にある物を念ずると手にそれが吸い付く。それを握って取り出すということだ。
こ、これは強い!! 流石★★★★★だ! 帰ってアリシアに見せよう!! この能力だったらアリシアも分かってくれるはず!!
帰ると目を三角にしたアリシアの姿があり、俺と目も合わそうとしない。これは明らかに怒ってる。
で、でもこの★★★★★の能力を知ればアリシアだって機嫌を直してくれるはず!
「……アリシア。ありがとう引けたよ。期間限定……無限収納」
プイッ
俺が話し掛けると別の方を向くアリシア。
だ、大丈夫、能力を説明すればアリシアも分かってくれるはず!
「こ、この能力はズボンの右ポケットに無限に収納できるんだ!! めっちゃ使えるだろ?」
アリシアは表情を変えずに俺に話し掛ける。
「……ポケットより大きな物はどうするんですかね?」
「あ……」




