第30話 アリシア貴族辞めるってよ
ディアゴさんが扉の前で待っている。
俺とアリシアが到着するとその扉を開く。何十人もの人間が座れそうなテーブルがドーンと真ん中に置かれ、一番端に威厳漂う豪華な服をきた白髪の男が座っている。その男の隣にアリシアに似た青いドレスを纏ったアリシアに似た黒髪の女の人が座っている。
アリシアが一礼をし、俺もそれに習って一礼をする。
ディアゴさんに案内され父親と母親の近く席に座る。ちなみにアリシアは母親の隣に座り、俺はアリシアの正面。
それぞれの席にいるメイドが椅子を引き、俺とアリシアが座る。そして給仕係が高そうなワインをテーブルに置かれたグラスに注ぐ。
するとアリシアの親父さんが口を開く。
「此度はアリシアの解呪、大義であった。アリステル家の代表として感謝の意を示す」
そう言って親父さんはグッと頭を下げる。
「我が娘の為に命を賭して戦ってくれた上に僅かな報酬で立ち去るその気概……」
へ?金貨6枚が僅かな報酬?
「大切な娘の命を救った者だ。我がアリステル家の全ての財を差し出してもいいとすら思っていたが……ウェブ・ステイそなたは正に真の勇者だ!!」
は? この家の財全部?……
アリシアの母ちゃんが涙ぐみながら話をする。
「ええ……本当にありがとうございます……アリシアはこのまま目覚めないと思っていました……」
「ああ、そうだな……彼は本当に我達にとって恩人だ……」
「ええ……アリシアさんの為ならばと、俺……僅かな報酬で頑張りました……でも」
俺がそう言いかけるとディアゴさんが口を挟む。
「それでは前菜のご用意ができましたのでお運び致します!」
ディアゴさん俺の横に前菜を持ってきて耳打ちをする。
「アリシア様の為に命を賭して戦ったということにしております……報酬はこれ以上は望まれないと去ったことにしておりますので……もう一度報酬を欲しいと言うのは如何なものでしょうか?」
……如何だろうがなんだろうが貰えるものは貰う!! まあ全部くれっていうのはあれだから半分ぐらいくれって言うのはありなんじゃなかろうか?
ウッヒョオオオアアア!!! 金貨何枚? この家の半分って金貨300枚? いや300ってことはないだろう……3000枚ぐらい? え! それって紙何枚分? 俺の頭がパンクしそうになるほど回転していると親父さんがワインの入ったグラスを掲げる。
「それでは乾杯しよう!」
4人でグラスを掲げ親父さんが一言。
「ウェブ君の前途とアリステル家の前途に……乾杯」
その場の勢いでぐいっと一口、グラスの中のワインに口をつける。
うめぇぇぇこんなワイン飲んだことねぇぇぇぇ!!!
酒弱いけどこれなら何杯でも飲めそう!!
そして前菜に手を伸ばす。見た目雑草と大差ないんだが……一口食べてみる……
……だめだこんな物を食べたら土や雑草、カビの生えたパンが食べられなくなる……
その後も魚や肉料理が出てくる。それらをすべて皿を舐めるほど綺麗に食べる。
「どうかね?うちの食事は?」
親父さんが話しかけてくる。
「美味いです!! 土や雑草とかカビのいったパンが食べられなくなるほど美味いです!!」
「そうか、口にあってよかった」
元々酒に弱いのに飲み慣れない酒を沢山飲んだせいか、世界がぐわんぐわんと歪み始めてそれまで気分が良かったのが少し気持ちわるくなってくる……紙に酒耐性があれば……なんて思ったりしているとアリシアの親父さんが話しかけてくる
「さて……それでは本題に入ろう」
来た! 金貨3000枚!! 最速ムーブで行くぞ……金貨3000枚もあれば★★★★★いくつ出てくるんだろう……もう分けわかんねぇぇぇ
「ほんだい? 報酬のことですね!」
「報酬? なんのことだ? ウェブ君は随分と酔っているようだが……」
「酔いは覚めました! ほうしゅ」
パリンとグラスが割れる音がアリシアの座っている席から聞こえ、そちらを向くとものすごい眼力でアリシアが俺のことを見ている。
「……ごめんさいついグラスを落としてしまって……」
そうは言っていたがアリシアはものすごい眼力で俺のことを見ている。
……本題って……なんだっけ? 適当に誤魔化そ
「あー本題ですね本題……」
「そうだ……アリシアは君と一緒に居たいといって家を抜け出して一緒にいるそうだが……」
あーそっちか……
アリシアが答える。
「はい……お父様……家を抜け出したことは謝ります……ですが私はウェブ様とご一緒したいのです!」
「アリシアはアリステル家を捨ててまで、このウェブ君と一緒に居たいということだね?」
「はい!」
アリシアは力強く答える。
「それでウェブ君はどうなんだね……」
「お、俺ですか……」
アリシアの親父さんの迫力に気圧されて、もういらないと思ったワインをぐびっと飲み干す。
親父さんは目を閉じてジッと聞いている。
「アリシアは大切な……仲間です……彼女がいないと困まります……」
……いやまてよ? 金貨3000枚貰えるならもうギルドでクエストなんてちまちま受けなくてもいいんじゃないか?
俺にアリシアが必要なのそもそも紙を引くためだし……それ以外には必要ないんだよな……
「あのぉぉ……」
俺が話しかけると目を閉じていた親父さんはカッと目を開く。
「娘にふさわしい男かどうか……屋敷に入った時から君のことをつぶさに見させてもらっていた……君は平民だ……いくら娘を救った勇者、ちゃんとした貴族らしい格好をしてはいても……我が娘には似つかわしくない男だろうと思っていた」
「そんなことはありません! ウェブ様は!!」
「黙って聞きなさい!」
アリシアを一喝する親父さん。
パチンと指を鳴らすと執事の一人が水晶玉を持って現れる。
その水晶玉には応接室が映し出されている。
「君が来るということでな、試させて貰った」
そして親父さんはテーブルの上にこ汚い木箱を置く。
「この箱はなアリステル家にあるもの中で一番価値のあるもの……平民にはとても価値のあるものには見えない。綺羅びやかな調度品のほうが価値があると思うだろう」
危な……良かった……ポケットの中に入れなくて……
「君は他の装飾品には目もくれずこの箱に吸い込まれるように動いた。綺羅びやかな調度品に惑わされる事無くこの箱に魅入られた……この箱は神から賜った玉璽を収めていた木箱。王よりこの木箱を賜ることでアリステル家が貴族であるという証なのだ。この箱は表には出しておらん。我が家に伝わる秘中の秘の宝……なぜ気がついた?」
「それは……俺が本物を知る男だから……」
審美眼(中)を使ったからだけどな。
「流石だ……ウェブ君……この箱に興味すら示さん男にはアリシアは任せられん……私が認める本物を知る男ならアリシアを任せても安心だ……」
親父さんは手でを口を抑え目に涙を貯めている
「だが、しかし……私達は貴族……貴族と平民は一緒にはなれないのがしきたりだ。アリシア……そなたはアリステル家を捨てると言ったな……このウェブ・ステイと一緒にいるということであれば、認めよう……アリシアが貴族を捨てるということを……貴族を捨て平民になるという覚悟があるというのであればな……今までの暮らしを全て捨てることになる。私達からの援助も一切ないそれでもいいのだな?」
「はい!」
アリシアは真っ直ぐに親父さんを見て答えている。
それまで黙って聞いていたアリシアの母ちゃんが取り乱し声高に叫ぶ。
「そ、そんな、そんなこと勝手に決めないで、アリシアちゃんは私のかわいいアリシアちゃんは!!」
「ソフィア、アリシアはいつまでも子供じゃない……自らの決断で家を捨てるということを決めたのだ。しかもこのウェブ君なら私達のアリシアを任せても安心だ。彼は本物を知る男、必ずアリシアを幸せにするだろう……」
「……いつもいつもあなたが勝手に決めて!!」
そう言ってアリシアの母ちゃんは部屋を後にする。
「お母様!!」
そう言って立ち上がるアリシア
「放っておきなさいアリシア……家を捨てるといはこういうことなのだ……その覚悟はできているのだろう?」
ワナワナと肩を震わせながら頷くアリシア。
「ソフィアには私から話しておく……もう行きなさいアリシア、ウェブ君と一緒に……」
「お父様……私は……私は……お父様の娘で幸せでした……」
アリシアはそう言って泣きながら立ち上がり、俺のそばにやってきて手をのばす。
「よろしくお願いします。ウェブ様」
俺はこの3人のやり取りに付いていけず唖然としながらハッとする。とりあえずアリシアの手を取って
「あのぉ金貨さ……」
と言いかけるとかぶせるように「ウェブ殿……アリシアをアリシアを頼みます!」
親父さんがこういったものだから俺もつい勢いで「任せて下さい」と言ってしまった。




