第28話 買取お願いします
仕立て屋に瞬間移動するとヒゲ紳士が俺の為に仕立て服を手に待っていたようで、俺たちが現れると待ってましたというような表情で声をかけてくる。
「お待ちしておりました。服も仕上がっております。奥で着替えましょう」
ヒゲ紳士に案内され、奥へ向かう。
今着てる服を脱いで、できたばかりの俺の服に袖を通す。色形は普通の黒い燕尾服だけど、着た時の肌触りなどはすごく良いし、サイズもジャストサイズでおかしいところは何一つない。素材も腕も確かということなんだろう。
ヒゲ紳士が上着を広げそれに袖を通す。
「完璧でございますね」
「すごいですね……こんな服なんて着たことないですよ」
「アリシアお嬢様は幼い頃から本物に触れられてお育ちになられた名門貴族であられますからね。そのお嬢様のお目に叶うものとなれば当然本物ということになります」
「……で、この服おいくらなんですか?」
「金貨2枚といったところでしょうか」
は? この服で紙6666枚引けるんだけど……
「……分かりました。明日この服、持ってくるんで金貨1枚で買い取ってくれますか?勿論アリシアには内緒で」
「……当店は服の買取は行っておりません……」
「なんとかなりませんか?」
「申し訳ございませんが……」
「だったら銀貨50枚でもいいんで」
「無理でございます……」
「だったら銀貨30枚で! お願いします!!」
「……申し訳ございませんが……」
ヒゲ紳士の眉をひそめ困りましたというような表情を見せている。
「なんとか! そこをなんとか!!」
俺がヒゲ紳士に頼みこんでいるとアリシアの声が聞こえ、
「着替えに時間掛かりすぎでしょ? 何してるんですか?早くしないとウェブ様の家にディアゴが来ますよ?」
ヒゲ紳士はアリシアが来てくれて助かったというような表情を見せている。
「お、お嬢様……」
「な、なんでもないよ。アリシア、ちょっと着替えるのに手間取っただけだよ」
「そうですか? なにかご主人を困らせることでもしてたんじゃないんですか?」
ブルブルと俺は首を横に振ってヒゲ紳士を真顔で見る。
ヒゲ紳士は挙動不審な感じで「いえ……」と一言答えた。
アリシアは俺のこと上から下まで見たあとヒゲ紳士ににこやかに話しかけている。
「うん。良く似合ってます。この短時間で完璧に仕上げるなんて流石ですね! これなら父も納得すると思います。ご主人、ありがとうございます」
「アリシアお嬢様にそう言って頂けるなんて身に余る光栄です」
そう言って頭を下げるヒゲ紳士。
……この服を穴に突っ込んだら紙出てこないかな……穴の大きさ的に入るわけないか……金を入れろって文字が出てくるしな……例え服が入ったとして、服を入れても紙は出ないだろう……明日、朝一で服を質屋に持っていって金を作ればいいか……この店買い取ってくれないみたいだし……1回しか着てないのにな……
そんなことを考えているとアリシアの声が聞こえてくる。
「……ウェブ様?……ウェブ様!!」
「何ぼーっとしてるんですか? 早くウェブ様の家に行かないとディアゴが着ますよ?」
「あーごめんごめん。ちょっとこれからのこと考えてて……」
「これからのこと……」
アリシアはそう呟くとポッと頬を赤らめて「ウェブ様……必ずお父様に認められましょう!」と言って俺の手を握る。
「うん。アリシアがいないと困るからね」
俺がそう言うと嬉しそうな表情を見せて「そ、そうですよね!!」と言った。
そういうことで俺の家の前に瞬間移動をする。
家の前に黒塗りの立派な馬車が止まっている。
「ディアゴ、おまたせしました」
アリシアが馬車の前で待つディアゴさんに話しかける。
「いえ、先程、到着いたしましたので……」
ディアゴさんはそう言うと俺を見て目を細める。
「ほぉ……これはこれはどこの紳士かと思えばウェブ様ですか……このご洋服はお嬢様が?」
「ええ。いつもの仕立て屋で仕立て来ました」
「なるほど馬子にも衣装とはこのことですかな。さすがお嬢様」
「それじゃ行きましょう」
アリシアと馬車の後ろに乗り込む。
アリシアの家まで瞬間移動で行けばいいと思うのだが、招待を受けているのでお迎えの馬車に乗らないと失礼に当たるらしく、大人しく馬車に揺られながらアリステル家に向かうということなっている。
ディアゴさんが言うにアリステル家に到着した時からアリシアのお父さんの審査?が始まっているらしくアリシアと一緒に居たいなら降りた時から気をつけてと言われた。
そして30分ほど馬車に揺られていると馬車が止まった。




