第24話 穴があるぅぅぅ
瞬間移動した俺の目の前にあった。あのお金を入れると紙が出て来る穴が確かにあった!!
「うぉぉぉ!! 穴があるぅぅぅぅぅ!!」
俺は穴を見つけると全力で駆け寄る。その穴に近寄ると『お詫び10連を回しますか?お詫びは★★★確定ではありません』と例の文字が現れる。
俺はコクリと頷く。
まずは最初の10回……これはお詫びの10連。
いつもの調子で10枚まとまった紙が出てくる。
おおおおおおお!! これだこの感覚!!
★★★は確定じゃないないけど……穴から紙が出てくる……それだけでいい……俺はそれだけで……
は?全部ゴミ?……全部★とか……ただの紙じゃねぇぇか……ふざけんな!! こっちは穴が無くなったと思ってどんだけ落ち込んだと思ってんだ!! お詫びに★★★★ぐらいよこしやがれ!!
……
俺は首を横に振る。
落ち着け……俺……落ち着け……紙がでてくるだけでいいはずなのに。穴が無くなったときのことを思い出せ……
そう穴から紙が出てくるだけでいいはずなんだ……穴がそこにある。それだけ良かったんだ……それに銅貨30枚もある、あと10枚も紙が出てくる!!
袋の中にある銅貨を取り出して1枚入れる。スーッといつものように吸い込まれる……おおおおおおおおおお!! ……この感覚!!
30枚の銅貨があっという間に穴の中に吸い込まれていく。
『銅貨30枚の入金を確認しました。10連は★★★確定です。10連を引きますか?』の文字が現れる。
俺は力強く頷く。
ファーストペーパーオープン……★★魅了耐性(微)!!おおおやっぱり金を入れただけのことがある!! 新規追加の魅了耐性だ!!
さあ次だ次……★聴力強化(微)はいゴミー!この調子で8枚の紙を見ていく。ゴミが4枚、★★が5枚で新規追加で引けたのは魅了耐性だけ……★★★は光属性付与(微)のみ……
……落ち着け……落ち着け……大丈夫だ。そう俺にはアリシアがいる。彼女とパーティを組んでいるから金はすぐにでも稼げる。まだ陽は高い。今すぐに帰ってギルドに行けば、銅貨30枚ぐらいのクエストならあるはず!
よし瞬間移動! 家!
「アリシア! 今すぐクエストに……ってあれ? いない?」
おかしい俺が穴に行ってから10分も経ってない……なんでいないんだアリシア……早くギルドに行って金を稼がないと……
「私は帰りません!! お父様にそう伝えて下さい!!」
家の外からアリシアの声が聞こえる。
するとどこかで聞いた声……そうあれはアリステル家の執事ディアゴの声が聞こえてくる。
「なりません!! お嬢様! やっと呪いが解けたと思ったらこの様な場所に……お父様、お母様のご心痛を考えて下さい!」
「私はウェブと居たいのです!!」
玄関から出るとディアゴさんとアリシアの姿がある。俺を見て会釈をするディアゴさん。
「ディアゴさん。なにが有ったんですか?」
「これはこれはウェブ様、先日はアリシア様を解呪頂きありがとうございます。実はアリシア様はお屋敷を抜け出してこちらに来られておるのです」
「……知ってます」
「知っているのであれば話は早い。アリシア様は解呪が成ったと思えば、お屋敷を出奔され、アリシア様のお父様、お母様のご心痛はそれはそれは……」
「ディアゴ! 私はウェブ様とご一緒に居たいのです!! もう私も18、一人で進む道ぐらい決めますわ!」
「なりませぬ。お嬢様! 私ディアゴと一緒に帰りましょう」
アリシアがこのまま家に帰るとクエストが1週間は受けられない……その間、金が稼げない……それは不味い……紙が引けない……
なんとかしないと……俺が困る!
「アリシアの意思はどうなるんです! アリシアは俺と一緒に居たいと言ってるんだ! 本人の意思を尊重すべきだ!!」
「これはアリステル家の問題です。いくらお嬢様の命の恩人とて簡単に口を出せる問題ではございません!」
「アリシアは俺と一緒に居たいんだよな?」
俺がそう問いかけるとディアゴを睨みつけて頷くアリシア。
俺はアリシアとディアゴに向けて話しかける。
「そうだよなアリシア。君は俺とパーティを組んでる仲間だ! そうアリシアは俺にとって大切な人なんだ!!」
俺の言葉を聞いて、アリシアは頬を真っ赤に染める。
「シスディアスを倒したあなたは相当な手練……しかし私もアリステル家の為に引くことができないのも事実。お嬢様を連れて帰るにはあなたを倒すしかないのでしょうか?」
ディアゴは腰に下げた剣を抜こうとしている。
「え……ディアゴ……止めて!」
アリシアがそれを見て青い顔をして止めようとしている。
「俺に勝てないよ……」
「覚悟の上です……」
「ディアゴ!!」
アリシアが叫び、ディアゴが剣を抜いた瞬間、俺は間合いを詰めて、その剣を掴んで放り投げる。
「は……速い……」
「ああ、俺の素早さはSだからな」
「私の負けです……ですが……私の命に変えても、お嬢様をお連れしなければならない……」
アリシアは観念したのか、顔を伏せながらポツリとこういった。
「分かったわ……私、帰る……ウェブ様と一緒に居たいけれど……私の所為でディアゴが傷つくのは耐えられない……」
「え……」
俺の顔は青ざめて行く。このままじゃクエストが……報酬が……紙が引けない?
「ありがとうございます。お嬢様。このディアゴめにそのようなお言葉、執事冥利に尽きます。……分かりました……お二人がこれ程までに思い合っているということであれば、このディアゴ、お嬢様とウェブ様の為に人肌脱ぎましょう」
「ディアゴ!!」
アリシアは顔を上げディアゴをまっすぐに見つめる。
「私、妙案がございます。こういうのはどうでしょうか? お父様、お母様にお嬢様の命の恩人であるウェブ様を紹介する。そしてウェブ様がお嬢様にとって相応しい人物であるかどうかを名門貴族のご当主であられる、あなたのお父様、グエン様に見定めて貰うというのは……」
アリシアはそう言われて嬉しそうな顔をして俺の目を見ながら話しかけてくる。
「ウェブ様。私の父と会ってくれますか?ウェブ様なら私の父、グエンも必ず気に入ってくれるはずです。あなたは私の命の恩人ですから」
……流れが変わった? これならギルドに行ってクエストを受注できる!!
「ウェブ様……」
アリシアは俺のこと期待するような目で見ている。
「分かった……だがとりあえずはギルドに行ってクエストを受注したい。その後でアリステル家に行って話をするというのはどうだ?」
俺がそう言うとディアゴさんは頷く。
「ええ、グエン様にお話を通さなければなりませんし、本日の晩餐の席にお招きを致すということで」
ディアゴさんはそう言うと待たしてあった馬車に乗って去っていった。




