相談
「本当に、ついて行かなくてよかったの?」
「……私自身、どうしたらよいのか、わからないのだ。だから、ここにいる……」
池袋駅構内のコーヒーショップで、三人はしかめ面で座っていた。
「霜華こそ、あの二人について行かなくてよかったのか? セイスが三条を通じて時雨がらみのことで協力を頼もうとしたらしいが」
「……悪いけど、中里時雨さんって、どんな人なのか私にはわからないし、よくわからない人のために、危険を冒すほど、私もお人よしじゃない」
文香と晴代は顔を見合わせた。霜華の口調がいつもとはかけ離れて冷たかったからだ。
「…ねえ、霜華ちゃんって、あの子のこと、嫌い?」
「……晴代はどうなの? 殺されかけたと聞いたけど?」
「…確かにそれは、そうだけど…」
冷たい口調で聞き返した霜華に、晴代は口ごもった口調で答えた。その冷淡さに、晴代も文香もやや圧倒された様子で背筋を伸ばした。
「昨日のお昼、私がこの街の裏路地で誰に出会って、どんな目に遭ったか。それを考えたら、そう簡単に好きになることなんてできない」
霜華はそう言い放つと、絆創膏の貼られている手のひらを二人に見せた。
「で、でも、仮にも、霧矢のお友達だし……」
「随分、その人の肩を持つんだね、晴代は。私には理解できないな」
霜華は無表情のまま、アイスティーのストローに口をつけた。冷たい液体で喉を潤していると、文香が口を開いた。
「もしも三条が、西村の手伝いをすると言い出したらどうするのだ?」
「……やめさせる。セイスには悪いけど。危険すぎるし、私には何の得にもならない」
「三条が説得に応じなかったら?」
「……その時は、仕方がないから。私も付き合う。霧君を守ってあげないと。場合によっては。セイスの思うつぼになっちゃうけどね」
霜華はため息をついた。文香はやや微笑を浮かべた。
「いいコンビだな。契約しているわけでもないのに」
「ほんと。でも、セイスも言ってたけど、どうして、霜華ちゃんは契約しないの?」
「必要がないから。別に誰かと戦うわけじゃないし、魔力が足りないわけでもないから」
「じゃあ、必要になったら、霧矢とも契約するってことだね?」
晴代の問いに、霜華は表情を曇らせた。
「できれば、契約しないで済むといいけどね。私が契約すると、術が強力になり過ぎて、相手を殺しちゃうかもしれないからね」
霜華の言葉に二人は顔を見合わせた。
「だったら、それでもいいだろう。私も、他人事に首を突っ込んでまで、無理に三条と契約しろとは言わないし、そもそも、私にそんなことを言う権利はない」
「そうしてくれると、助かるな」
淡々とした口調で霜華は答えると、霜華は店の時計をちらりと見た。
浦沼に帰るのならば、そろそろ電車に乗る支度をしなければならない。新幹線に乗るのならば話は別だが、在来線で帰るとなると、これ以上長居はできない。しかし、これからどうするのか決めるに当たっては、霧矢や西村がどうするのかを知らなければならない。
「そろそろ、連絡くれるといいんだけど……でないと、帰るか残るか、決められない」
霜華の独り言に、晴代が反応した。顔には恐れの表情を浮かんでいる。
「…あたしは帰りたい。お金の都合もあるし……あの子には、会いたくない」
「霧君をあの人と二人きりにしてしまうのは癪だけど、私もできれば帰りたいな」
「私は、帰りたくはない。かといって、残って何ができるのかもわからないのだが…」
文香は陰鬱な声でつぶやいた。
「文香の気の向くまま動けばいいわよ。あたしはそう思う」
晴代の言葉に、文香は顔を上げた。




