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Absolute Zero 5th  作者: DoubleS
第四章
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再会

「まったく、何度も呼び出しやがって。依頼料は高くつくぞ」

「おいおい、僕と君の仲じゃないか。でも、構わないさ。払うのは僕じゃないんだから」

 警視庁の一室で塩沢と内野は向かい合っていた。霜華はできるだけ彼らとはかかわるまいと、少し離れた位置にあるソファーに無言で座っていた。

「これが、三条霧矢についての情報だ。正直、特記すべきことはないんだが……」

 フラッシュメモリを塩沢は内野に手渡した。内野はUSBをパソコンにつなぐと、中にあるファイルを参照した。

「なるほどね。まあ、どこにでもいそうな高校生ではあるね。ここ数か月を除いて」

「……教団の中堅幹部、トマス・アイゼンベルグを撃破。魔族二人を保護下に置き、他にも魔族三人及び契約主四人と親交がある。先月に起きた火災事件にも関与、そして……」

 内野はやっぱりといった納得の表情でデータを見た。噂通りのことが書かれている。

「放出魔力量は常人のそれよりも極端に多い。また、現在、格闘術の訓練中」

 その後、内野は声を出さずに資料を読んでいた。そして、すべて読み終わると、ノートパソコンの画面を閉じ、真顔で塩沢の方を向いた。

「君、この子を事務所の影響下に置くつもりなら、警察としては、君らに対しての監視をさらに強める必要が出てくるんだが」

「うちの事務所の所在地に警視庁は管轄が及ばないはずだが?」

 内野はため息をついた。今朝、管轄が及ばないことに不満を漏らしていた相手も、ちゃっかり、警視庁の管轄が及ばない地域を利用している。

「及ばないにしても、監視するくらいのことはできる。ただでさえ、君たちは裏社会の中じゃ一級レベルの人材を有しているのに、さらにこんな連中を取り込まれたら、下手をすれば裏社会のパワーバランスが崩れてしまう」

「……百歩譲って影響下にあるとしても、今後、彼らを事務所の仕事に動員するつもりはない」

 内野の懸念に対して、塩沢は低い声で答えたが、内野は信じようとしなかった。

「君の意見と、古町の意見、そして、相川所長の意見。それぞれ、結構隔たりがあると聞いたけど? 君は消極的だが、古町は割と積極的だ。相川さんがどう思っているのか僕は知らないけれど、君ほど消極的でもないだろう。違うかい?」

 内野の質問に、塩沢は苦々しい表情を浮かべると、そのままため息をついて内野のデスクの隣の椅子に乱暴に腰を下ろした。

「それ以上は答える気はない…と。まあ、それならそれでもいいけど……」

 内野は時計を外の空を交互に眺めた。空は茜色に染まり始めており、空腹も若干感じるようになっていた。呼び出した人間はまだ現れてはいないが、もう少し待っても現れないのなら、再び電話を掛ける必要も生じるだろう。

「……それにしても、さっきから、君は本当に一言も話さないね。そんなに僕のしたことが気に入らなかったのかい?」

 不満に満ちた表情でソファーに座っている霜華を、内野は困り顔で眺めた。塩沢は予想通りといった表情で、内野に見下した顔を見せていた。

「なあ、塩沢。僕は同業者に嫌われるのは慣れているけれど、一般人の女の子にこんな態度をされると、ちょっと心にグサリと来るんだよ。何とかしてくれ」

「俺も彼女からはあまり好かれていない。それに、困った時だけ俺に頼るのはやめろ」

 塩沢は愚痴っぽい口調でつぶやくと、それでも、霜華の向かいのソファーに座った。

「…まあ、見ればわかると思うが、こいつは人の感情を逆撫ですることにかけては、日本一と言ってもいい。気分を害したと思うが、まあ、それは誰だって思うことだ」

「なあ、塩沢。それはフォローなのかい? それとも単純に僕の悪口なのかい?」

 内野の質問を無視して、塩沢は続ける。

「まあ、君と会うのは正月以来だな。それにしても、また事件に巻き込まれるとは…」

 独り言を言う塩沢に、霜華はようやく反応した。内野とは口を利きたくはないようだが、塩沢とならばまだ話をする余地はあるらしい。

「…塩沢さんは、何故東京に? また、お仕事ですか?」

「……警視庁の仕事を裏側から手伝えとの、相川さんの指示だ。最近の放火事件は、君が見た通り、契約主の仕業だし、黒幕は意外と大物のようだからな」

「彼女の単独犯行ではないんですか?」

 鋭いところを突いてきた霜華に、塩沢は内野の目を見た。内野は首を横に振る。

「…捜査情報なので、部外者には話すなとの、担当警察官のご命令だ」

 皮肉を込めた口調で塩沢は首を振った。霜華は大して気にも留めずに話題を変えた。

「塩沢さんと内野さんはどういうご関係ですか? 仕事だけの関係には見えませんが」

「高校時代からの知り合いだ。そのまま、卒業後は疎遠になればよかったんだが……」

「…そんなこと言うなよ。そのまま疎遠になっていたら、僕はハローワーク通いになるところだったんだから。君には感謝してるよ」

 内野は猫なで声で塩沢に語り掛ける。塩沢は吐き気をこらえるような顔をすると、内野から顔を背けて、青葉のデスクの方を向いた。

「青葉警視はまだ戻っていないのか?」

「……上役から呼び出しを食らったよ。今は会議室で延々と事情説明中だろうね」

「お前の同僚の姿も見えないんだが」

「二人は運ばれた何でも屋から事情聴取するために、病院へ行ったよ。残りは非番。僕も休みを早く取りたいものだね」

 内野がしみじみとつぶやいていると、青葉のデスクの電話機が鳴った。内野は駆け寄ると、受話器を取り上げた。

「はい、もしもし……了解。そちらに向かいます」

 受話器を戻すと、内野は楽しそうな表情を浮かべてオフィスの戸を開けた。

「件の三条君がいらっしゃったようだ。迎えに行ってくる」

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