第二話 勇者を倒せ!(3)
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授業開始早々のハプニングもあってか、錬士場はさらなる緊張感に包まれる。
負傷した少女の付き添いで三人の女子生徒が席を外したが、オークを含めて十二名の二年生がこの場に残った。どの顔も険しく強張った表情をしている。当然の注意をしただけの少女に対する不条理な暴力に腹を立てているというのが、理由のひとつに挙げられるだろう。だが、それだけではない。なによりも大きな割合を占めているのが、身の上の安全に関する懸念である。
第二学年は最初から十六名だったわけではない。オークの暴虐によって十六名にされたのだ。実技や模擬戦で興奮あまり本能のままに大暴れするオークから学友を守ろうと動いた規範的行為の代償が、欠員という形で刻まれた結果なのである。この唾棄したくなるほどに惨たらしい悪夢のような経験から『オークが実技、模擬戦を行う際は全員で推移を見守り、いざという時は全員でオークを取り押さえよう』という方針が二学年の総意として掲げられたのだ。
今までは上手くいった。しかし、今回はどうだろう。そんな不安が見守り隊の表情から滲み出ている。
当のオークは気にしていない様子だった。気持ちを昂らせつつ、全身に殺気を纏う。筋肉は張り裂けんばかりに膨張し、バルフェルムによる開始の合図を今や遅しと待ち構えていた。一方のチップは刃のついてない訓練用の大剣を受け取り、その大きさと重さからヨロヨロとよろめいている。通常であれば大剣に魔力を流し込み火属性を付加した火殺剣や光を纏う光殺剣、さらには風を巻き起こす風殺剣といった感じで剣の攻撃力を増強させるのだが、チップの持つ剣に変化は見られない。
「⋯⋯きみ、もう準備はいいのかな?」
少し苛立った様子でバルフェルムがチップに尋ねる。
「あっはい」
ふらふらヨロヨロと剣の重さに振り回されるチップが応じる。急に声をかけられ、反射的に返事をしたように思えたが、バルフェルムはそれを準備完了と受け取った。
「では、はじめ!」
バルフェルムの右手が上がる。
死闘の幕が切って落とされた。




