第二話 勇者を倒せ!(1)
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二年生の魔法実技は見物客で大入満員だった。
錬士場を囲うのは防護マット付きのラバーフェンス。攻撃魔法により高く吹き飛ばされても大丈夫なように一般的成人男性の平均身長より約三倍の高さがあるのだが、聴講生の噂を聞きつけたヤジ馬どもは浮遊魔法や飛行術を駆使してフェンスの中を覗き込んでいた。魔術よりも武術や剣術に秀でた腕力自慢は攻城塔にも似た観覧席を製作し、それ以外の者はフェンスを超える高さまで成長した枯木にしがみついている。
「ホッホッホ、大人気の催しだのォ」
膝近くまで垂れ落ちた白く長い髭が印象的な老魔導師が楽しそうに笑った。
「錬士場の教官室や記録室が教員で埋まるのは初めてやないですか? 貴賓室にはセリーニ様もおられるようやし、私もこうして屋内から玻璃越しに見物するんは初めてですわ」
「僕も着任したばかりなので、こうして客観的に魔法実技を見るのは初めてですよ」
「おや、ほんまぁ」
金銀の刺繍が美しい紅色のオリエンタル調衣装に身を包んだぽっちゃりマダムと薄幸そうな顔立ちをした若い男、スパイクが会話を交わす。
教官室に集まった教員たちが懇親会さながらに談笑に興じていると、授業開始を知らせる重厚な鐘の音が響き渡った。
錬士場内に整列する十六人の二年生。男女ともに動きやすい運動服に着替えている。学校指定服ではあるものの、おしゃれに敏感なお年頃。黒一色では味気ないと考えてか、補修糸や補強布にポイントカラーを用いて軽妙洒脱なアレンジを試みていた。魔王立軍士官学校では一学年二十名なのだが、一身上の都合等で入学を辞退したり、途中退学するケースもままある。そういった場合でも追加募集することはないため、定員に満たない学年もそう珍しくないのだ。
「ただ、今年の二年生の場合は、ちょっと勝手が違いますよってなぁ。とんでもない問題児がおりましてん」
「問題児ならどの学年にもひとりやふたりいますでしょう。いや、もっとかな?」
手を焼いた覚えでもあるのかスパイクが笑う。
「そんな笑える次元とちゃいますのや!」
女性が声を荒げた。
「常軌を逸してるとしか思えん、とんでもないクソガキですねん。見たら腰抜かしますえ!」
脅しともとれる険しい表情と声にスパイクは顔を引き攣らせる。
「噂をすれば、ご登場ですわ」
女性の視線の先、整列する生徒たちに動きがあった。




