第1話
ーールクスガーディアン本部。
門の前には、新発売のゲーム機の待機列のような長蛇の大行列が続いていた。その面々を見ていくと、色んなジャンルの見た目をした人間たちが密集して、志願者層の幅広さが伺える。
「あんな条件余裕だっつーの!ハッハッハッハ!!ロックは想像力だからな!!」
モヒカンで腕にトゲのついたバンドをつけている、世紀末のような見た目の男が余裕を醸し出している。
「俺も映画めっちゃ見てるぜ!SFなんて余裕よ!!」
ニット帽を身に着けたHIPHOPに愛された男のような見た目をした男はオレンジ色のチョッキを見せつけている。
「営業マンとして、日々のコミュニケーションはただの日常。相手を不快にさせない会話術を心得ております。」
スーツを着こなす男は、スラッとした指で眼鏡を押し上げている。
その長蛇の列をずっと後ろへ進んでいくと、最後尾に見慣れた顔をした男がいた。
「......、寝坊しちまった。」
ヴィクターは時計を不思議そうに確認した。
「おっかしいな......、何で今は時間合ってるんだ!?」
ーー5月3日、9:30のことだ。
ヴィクターはぐっすりと眠りについていた。明日は起こすからと宣言していたアルトも、スヤスヤと眠っていた。
しばらくして、焦ったような足音が鳴り、ヴィクターの部屋のドアが勢いよく開いた。
「ヴィクター!起きろ!まずい、寝坊した!!」
ヴィクターは目を見開いた。ハッと気づくように起き上がり、時計を見た。
「ん?まだ.....、8:00じゃないか。何を言ってるんだ?」
「違うんだ!テレビを見てよ!!9:30って書いてある!!」
アルトがニュース番組の時計を指差した。
『ルクスガーディアン本部の前には、沢山の志願者が並んでおりーー』
急かすようにアナウンサーが話し出した。
「ほら.....、もう時間ないよ!もう結構並んじゃってる......」
アルトは慌てるように部屋中を走り回り、鞄に道具を詰め込んでいる。
「.....、なんで時間が違うんだ?どういうことだ!」
ヴィクターは急ぎ足で支度をしながら行った。
「分からないよ!でもとにかく早く行って!!これ、荷物!!」
アルトは鞄をヴィクターに放り投げた。
「おう!」
ーーそして今である。
「待つしかない.....、のか....。」
相変わらずの待機列であるが、それでも人は減っていて、ヴィクターは先ほどの位置から50mほどは前に来ていた。
遠くの方から人が歩いてくるのが見えた。
「あのスペなんとかとか言うやつ!あれほどムカつくヤツは見たことがねぇ!!」
「ああ!意味が分からねぇ!徹夜して並んであの対応かよ?」
いかにもな見た目をしているチンピラたちが後ろに過ぎ去っていった。
「.....、やばいかもな....。」
ヴィクターは頭を掻きむしった。
ーー同時刻、ルクスガーディアン本部試験会場。
「皆さん順番でお願いしま〜す!五人ずついらしてくださ〜い!」
門を越え、中に入ったと思えば、もっと長く待たなければならないと悟った人々は肩を落とした。
「おい、マック。まだ待たなきゃみたいだぜ。」
黒いタンクトップのマッチョは、でこに手を当てた。
「しかしデュークよぉ、ルクスに入れるかもなんだぜ?このぐらい待つだろうよ。」
眼鏡とチョビ髭がトレードマークの男は横から正論を投げつけた。
「お〜い、順番来たみたいだぜ。」
帽子を逆さにかぶっているいかにもチンピラな男が、新たな招集を告げる試験官の方を親指で指した。
「よし、マック、ホーク!行くぞ!!」
デュークは二人を率いて、試験官の下へ向かった。
「え〜、君たちにはこれからーー」
「おい、見ろよ。アーサー・ロイドだぜ?」
マックはホークに小声で言った。
「本物だよ。初めて見た.....。」
「....たち、君たち!聞いているのかね?」
博士が二人に詰め寄った。
「えぇ.....、と.....。」
二人は沈黙した。
「全く.....、物珍しいのは分かるが今はしっかり聞きたまえ。」
「はい....、すみません。」
二人は姿勢を正した。
「よし、ではもう一度。君たちにはこれから特別な光を浴びてもらう。そして、精神世界へと転送する。君たちには光の神スペキュラオスと対話をしてもらう。言ってしまえば、面接試験だな。」
博士は大きなライトを軽く叩いた。
「.....、精神世界?」
全員が揃って言い放った。
「なあ、マック。聞いたか?精神世界だってよ!」
「流石にSF映画の観すぎだぜ!ハッハッ!!」
デュークは目の前の現実を笑い飛ばした。
「そうなるのも無理はないな。だが、行けばわかる。」
博士たちが準備万端とでも言うように部屋の外に出た。
「それでは皆、頑張りたまえ。」
博士がそう言うと、青白い光が部屋中に反射した。
ーーその頃、最後尾。
ヴィクターは、前の方から次々と嘆きながら歩いてくる人を見て、少し怯えていた。
「やっと門が見えてきたな.....、合格したっぽい人は全く見かけないが.....、一体何させられるんだ??」
「......〜す!五人......いらしてください!」
中の方からスタッフと思われる人間の声が微かに聞こえてきた。
「五人......、五人で何かするのか!?だからこんなに減りが早いのか。」
ーー10分後。
「なんか凄い減ったな、どういうことだ.....?まあいい、やっと中に入れた!」
ヴィクターは内部を見渡して目を輝かせていた。
「流石は全国屈指のヒーロー集団だな!クールな見た目してるな!!」
「皆さん順番で.....、お願いします......。五人ずつで......、どうぞ......。」
長時間の誘導で疲れているようで、招集スタッフの声が掠れている。
「おお、さっきのか!五人ずつね。了解!」
ようやく、ヴィクターを含めた最後の五人の順番が回ってきた。
「それでは、五人でお入りください。健闘を祈ります。」
スタッフは長きに渡る仕事を終えて、一息ついた。
中に入ると、そこには博士たちがやっと終わると言いたげな顔でこちらを向いた。
「.....、ムッ!これは.....。」
博士の疲れた顔が驚きへと一瞬にして変わった。
「どうかされましたか?博士。」
スーツを着た男が声をかけた。
「.....、感じる....。彼が....、では何故最後に.....、フフフ....、ハッハッハ!そういうことか!スペキュラオスよ!!」
「性格の悪い神もいるもんですね。まあ、それがあの神の良いところと言いますか。.....、それでは博士説明を。」
「それでは、説明をーー」
博士は先ほどと全く同じ説明をした。
ヴィクターはそれを聞いてワクワクした様子で博士に問いを投げかけた。
「スペキュラオスってあの漫画のか!」
「そう、あの漫画のだ。プリズム.....、だったか?あれは、我がルクスガーディアンも制作に....、おっといけない。その話は後だ。では皆、健闘を祈る。」
博士は部屋の外に出て行った。
「....、ん?後ってどういうーー」
青白い光がヴィクターの体全体を包み込んだ。




