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スライム食ったら世界を救うことになった【完結済】  作者: エリト


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【第97話】半年後の約束と、残された破壊工作

驚きで固まっている我々を気にもせず、イグリスは淡々と会話を進める。


「日没の門の修復と贄の準備は、いつごろできそうだ?」


エルザが少し考え、「半年もあれば」と答え、エルウィンさんを見る。

エルウィンさんも小さく頷いた。


「そうか。半年後だな。それではそのタイミングで門を繋ごう」

イグリスはそう約束した。

その後、「調査が済んだのなら、すぐに地上界へ帰れ」と言い残し、彼は早々に来た方向へと羽ばたいて帰っていった。


「さすがエルザ! よくやったなぁ!」

俺は満面の笑みでエルザに向けて親指を立ててみせた。そして、

「じゃあ、俺たちもさっそく帰ろうぜ! 思った以上に上手く行ったな」

と、能天気に喜んだ。


すると、背後からエルウィンさんの深いため息が聞こえてきた。

「本当に君は変わらんな。まだやることがあるだろう。その空っぽの頭がうらやましいよ」


酷い言われようだが、毎回その後の反論が的確なので言い返せない。ぐぬぬ。


ジャック兄さんも分かっていないようで、きょとんとした顔で質問した。

「な、何をやるんですか?」


エルウィンさんが呆れた顔で俺とジャック兄さんを交互に見る。

「この門を、半年後に破壊する準備をしておくのだよ」


あ、なるほど。言われて気づいた。(汗)


バイゼル師から言われていた4つ目の課題だ。

「魔界へのエネルギー注入が完了した後は、残り2つの黄泉の門も完全に破壊しなければならない。しかし、ただ物理的に門を壊すだけでは不十分だ。魔界という領域そのものをこの世界から引き剥がしやすくするために、特殊な術式を用いて時空を物理的に切断する必要がある」

……というやつだ。


『残り2つの黄泉の門』の破壊。

元々は、ここ日の出の門と、新たに発覚した3つ目の正午の門を破壊する予定だった。だが今回、魔族のイグリスが正午の門の次元核を日没の門へ移動させて修復してくれることになったので、我々が壊すべきは『日没の門と日の出の門の2つの破壊』に変わったのだ。


で、日没の門は半年後に我々が魔界へ乗り込む際に通るのだから、その帰り際に破壊すれば良い。

ただ、そのタイミングで、わざわざ遠く離れたこの日の出の門までやって来て破壊するというのは、かなり面倒で現実的ではない。


……というわけで、半年後に自動的にこの日の出の門を破壊する仕掛けを、今ここで準備しておけば良いわけだ。


え? でもどうやってやるんだ??

この門、結構硬かったぞ。カルバン領で破壊した時は、俺のレベル90の全力カール・スマッシュだったから一撃で粉砕できたが、それ相応の力じゃないと破壊なんてできない。


「え? どうやるんですか?」

俺は思わずエルウィンさんに聞いてしまった。


「ふふふ。そうだな。君をここに半年間放置しておこうかな?」

悪い顔をしたエルウィンさんが、冗談とは思えない冗談を言う。

この人、本当に性格悪い……。


「くだらない冗談はさておき……そうですね。半年後の起動となると、そんな便利な時限式の魔法は通常はありませんからね」


そう言うと、エルウィンさんはエルザの方を向いた。

「さて、エルザ嬢。君のパペットは、いつまで動かすことが出来るのかな?」


「そうね。半年間ずっと動かし続けることは魔力的に無理だけど、半年後に起動して、その一瞬のタイミングだけ稼働させることは出来るはずだわ。ちょっとだけ術式の準備に時間はかかるけど」


おおー凄い。俺のような魔力でゴリ押しするタイプには想像もつかないような、繊細な術式を使うのだろう。

でも、肝心のパペットの素体はどうするんだ? も、もしかして……。


「では、あの巨大魚を持って来ましょう」

や、やっぱりかー!


ただし、俺には1つ気になることがあった。

「エルウィンさん、仮にあの超巨大魚を突撃させたとしても、この門の材質は相当硬いですよ。壊せないんじゃないですか?」


「君のような馬鹿力で全体を粉砕するようなことはしないさ」

エルウィンさんはにやりと笑う。

「門の上の方を見たまえ。輝く宝石のようなものがはめ込まれているのが見えるかな? あれが次元核だろう。あの次元核を狙って破壊する。最悪、門から弾き飛ばしてしまえば十分だろう」


なるほど。確かに、あの小さな宝石部分を狙うだけなら行けそうだ。


エルウィンさんの計画としてはこうだ。


1.巨大魚を土魔法で門の目の前に埋めておく(外皮が強酸の湖水に耐えるほど固いので、半年間土中にあっても問題ない)


2.半年後にパペットの術式が起動し、土から飛び出す


3.勢いよく飛び上がり、巨大な牙か尾ひれを使って次元核を破壊、または門から弾き飛ばす


あのかなり大きな黄泉の門をギリギリで通れるサイズの超巨大魚だ。これが至近距離で暴れてぶつかれば、さすがに次元核だけなら破壊できそうだ。


さっそく準備に取り掛かった。

魚があまりに大きすぎたのと、確実に飛び上がって次元核に当たるかどうか、寸止めでのリハーサルを何度も行ったため、準備にかなり時間を食ってしまった。


さて、ようやくすべての仕掛けの準備が終わった。

俺たちは、日の出の門をくぐり、長かったシャリーク国の地下探索を終えて帰路へつくのだった。


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