表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライム食ったら世界を救うことになった【完結済】  作者: エリト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/115

【第89話】残された四つの試練

「魔界の存在……これを聞いた時にある程度の予測は立てていましたが、やはりこの世界に満ちる魔力の根源は、あちら側にありましたか」

エルウィンさんは、自らの顎に手を当てながら、静かな声でそう呟いた。


幾多の世界が衝突し、崩壊の危機に瀕しているという衝撃的な真実を突きつけられた直後だというのに、彼は驚くどころか妙に深く納得した様子で頷いている。その瞳には、世界の終焉に対する恐怖よりも、長年追い求めてきた魔道の真理の一端に触れたことへの、抑えきれない知的好奇心の色が浮かんでいた。


さすがマッドサイエンティスト。世界の根幹に関わる謎が一つ解明されたことに対して、この絶望的な状況下でほんの少しだけ歓喜しているようにすら見える。


「一応確認させていただきますが……トロワ・テラの他の方が、我々と衝突する予定のガンズ・テラに直接侵入し、そちらの世界の一部を利用して衝突の連鎖を止めてもらうことは出来ませんか?」


エルウィンさんは、淡々とバイゼルへ問いを投げかけた。

その言葉に対し、虚空から響くバイゼルの声は一段と苦々しい響きを帯びた。


「残念ながら、それは不可能だ。我々にはもう、そこまでの余力は残っていない」


バイゼルは重々しい口調で続ける。

「今回、無理やりこのセーズ・テラへ私の意識をコピーして侵入させたわけだが、通常では到底支払いきれないほどの膨大なエネルギーを代償として捧げているのだ。もしこの提案を君たちが拒むというのであれば、我々に次なる救援の手を差し伸べる余裕はない」


「……ですよね。一応、可能性として伺ったまでです。お気を悪くされたのであれば、申し訳ない」


エルウィンさんは表情一つ変えずにそう返した。相手を怒らせないギリギリの線を攻めつつ、自分たちが背負うべきリスクと他力本願の可能性を天秤にかける。この人は本当に、どんな絶望的な状況でも対等以上の交渉を仕掛けようとする恐ろしい男だ。


さて、これで一通りの状況説明と質疑応答は終わったようだ。

次元のさざ波だの、表裏の世界だの、正直なところ聞き慣れない概念や浮世離れした真実が長々と続いたおかげで、俺の精神はもう疲労困憊だった。だが、休んでいる暇はない。ここからが本当の本題なのだから。


「では、これから君たちが何を成すべきか、その道筋を伝えよう」


バイゼルの澄んだ声が、銀の城の広間に響き渡る。彼がこれから語るのは、幾多の世界を崩壊から救い出すための、あまりにも過酷な行程だった。


「一つ目の課題であった『銀の城の奪取とヴォルクの消滅』に関しては、思いがけず早い段階で実現することができた。ゆえに、直ちに二つ目の課題に入ってもらいたい」


◆二つ目の課題:魔界への侵入


「魔界への次元エネルギーの注入、および魔界そのものの切り離しは、この銀の城の中枢から遠隔操作のみで行えるものではない。必ず現地……つまり魔界へと足を踏み入れ、そこで直接対応する必要がある」


バイゼルの説明によれば、先日彼が魔界の入り口へ転移した際、次元の狭間のエネルギーを魔族の肉体へ流し込む形となったが、それと同様のことをさらに大規模に行う必要があるのだという。

また、魔界とこの地上界の繋がりを完全に断つためには、各地に点在する『黄泉の門』をすべて破壊しなければならないとのことだった。


「黄泉の門は、この世界に三つ存在している。先日君たちがカルバン領の地下で壊したのは、そのうちの一つに過ぎない。残りの二つの門は現在使われておらず、深い封印の底にある。まずは、その未知なる黄泉の門を見つけ出し、何らかの手段で扉をこじ開けて魔界へ乗り込むのだ」


(いやいや、無理だろそれ……)

俺は思わず頭を抱えた。

残りの門がどこにあるかも分からないのに、世界中を探し回れと言うのか。しかも見つけた上で、再びあの禍々しい門を開けなければならないなんて、正気の沙汰ではない。


「それが終われば、三つ目の課題だ」

俺の嘆きを他所に、バイゼルの指示は止まらない。


◆三つ目の課題:魔界へのエネルギー注入


「魔界の奥深くには、この世界に流通する魔硝石を産み出し続けている巨大な(コア)が存在する。そこは魔界を統べる王家が厳重に管理している聖域だ」


バイゼルが先日乗っ取った魔族の個体は、その王家の一員であったらしく、彼の意識の残滓から(コア)の存在を読み取ったという。


「その巨大な(コア)に、限界を超えて次元の狭間のエネルギーを注入する。もし私が乗っ取った魔族の肉体が健全なまま残っていれば私が代行できたのだが、現在の私は銀の城のシステムと深く結合しているため、物理的にそこへ赴くことができない。そして何より、このエネルギー注入には、ヴォルクが君に授けた『テンパメント』の力が不可欠なのだ」


つまり、俺が魔界の深部まで乗り込み、魔族の王家が守っている核に直接力を打ち込まなければならないということだ。

(やべー、これってつまり……俺が魔王と対面するってことか? しかも内容的に、力ずくで倒して突破する必要があるんじゃないか……?)

レベル九十を超えた今の俺なら、戦うこと自体は不可能ではないだろう。だが、相手は魔力の源泉に住む本場の魔族だ。考えただけでも胃が痛くなってくる。


◆四つ目の課題:魔界の切り離し


「魔界へのエネルギー注入が完了した後は、残り二つの黄泉の門も完全に破壊しなければならない。しかし、ただ物理的に門を壊すだけでは不十分だ。魔界という領域そのものをこの世界から引き剥がしやすくするために、特殊な術式を用いて時空を物理的に切断する必要がある」


これに関する具体的な手法や魔法の構築については、時が来ればバイゼルから改めて詳細を伝えるとのことだった。


◆最後の課題:魔界を次元の隙間へ打ち出す


「すべての準備が整った後、銀の城とテンパメントの力を連動させて、魔界を次元の狭間へと放逐する。ここに至れば、もう難しいことはない。銀の城と一体化している私が、システムの全機能を用いて自動的に執行しよう」


バイゼルからの説明がすべて終わった。

こうして、俺たちが歩むべき道は明確に示された。


まずは最初の難関、魔界への侵入ルートを確保することだ。

しかし、どこにあるかも分からない黄泉の門をどうやって探し出し、どうやって開けばいいのか。


俺は目の前に突きつけられた無理難題の数々に、ただただ途方に暮れるばかりだった。この八年間、必死に修行して伝説の領域と呼ばれるほどの力を手に入れたつもりだったが、世界を救うという重荷は、個人の武力だけでどうにかなるほど生易しいものではなかったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ