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スライム食ったら世界を救うことになった【完結済】  作者: エリト


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【第73話】腹黒令嬢の蹂躙と、忘れられない卒業式

エルザとシャルロッテの戦いが始まった。

いや、これを「戦い」と呼ぶのは正確な表現ではない……。エルザによる一方的な蹂躙、もとい、公開いじめが執り行われたのである。


シャルロッテの現在のレベルは18だ。

先ほど瞬殺されたヴェルナーには劣るものの、通常、魔法大学卒業時にレベル12~13になっていれば「良」とされる中、この数字はかなりの好成績である。


補足しておくと、魔術師として働きだした後、10年ほど実戦経験を積んでようやくレベル20を超え「中級魔術師」になるというのが一般的なキャリアだ。そこからさらに、レベル35以上の「上級」に至れる人(至りたいと命懸けで挑戦する人)は、100人に1人いるかいないかと言ったところである。


では、対するエルザの現在のレベルはいくつか。

――なんと、驚異のレベル38である。


4年生になりたての頃はレベル15だったことを考えると、この2年半で一体何があったのか? と疑問に思われるだろう。実は、彼女の実家であるカルバン領で『ある恐ろしい秘術』が行われた結果なのだが……それについては、いずれ語られることになるだろう。


さて、試合が始まった。

エルザが闇魔法使いであり、デバフ(弱体化)魔法の使い手であるというのは学年でも有名だ。また、パペット(操り人形)を持ち込まない限り、直接的な有効打となる攻撃手段に欠けると言うのも周知の事実である。

長期戦にでもならない限り、エルザの勝ち筋はない。

だから、「即決しよう」と開幕から最大攻撃に打って出たシャルロッテの選択は、戦術としては完全に正しい。通常ならば……。


「消えなさい! 『フロスト・エッジ(氷刃魔法)』!!」


シャルロッテが開始の合図と同時に、風と水を掛け合わせた鋭く巨大な氷の刃を放つ。

しかし、エルザはそれを回避するどころか、扇子を広げたままシャルロッテに向かって一直線に走り出した。


「ふん、あんた自爆でもするつも――」


シャルロッテが嘲笑いかけたそのタイミングで、エルザは優雅に魔法を発動した。


「『メビウス・ゲート』」


空間が歪む。直後、凄まじい勢いで飛んでいたはずのフロスト・エッジは、空中で方向を180度変え、術者であるシャルロッテ自身へと向かっていったのだ!


「な!?」


シャルロッテは驚愕し、地面を転がってギリギリのところで自らの魔法を回避する。

だが――体勢を崩した彼女の目の前には、すでにエルザが満面の黒い笑顔で待ち構えていた。


「捕まえたわ。『バーサーク・パペット』」


……ここで、勝負は完全についていたのだが、そのまま終わらせるエルザではない。

この後、シャルロッテが闘技場でどのような姿になり、どうやって決着がついたのかは……彼女の今後の人生と尊厳のために、ここでは語らないでおいてあげよう。(ナムナム)


◇ ◇ ◇


さて、闘技場では色々あったが、俺は何とか無事に卒業式に参加することができた。


厳かな雰囲気の中、式が進んでいく。

次は、いよいよ『卒業生代表の挨拶』だ。

先日、俺に瞬殺されたとはいえ、ヴェルナーは学生でレベル20に至った本物の天才だ。きっと、あの入学式の時のように、代表として堂々とした立派な挨拶を披露してくれることだろう。


俺がのんきに欠伸を噛み殺しながらそう思っていた、その時だった。


「――卒業生代表、カール・フォン・リディア! 壇上へ!」


「…………へっ?」


え?

なに? ちょっと、今なんて言ったの?


静まり返っていた講堂の周りの学生たちが、一気にガヤガヤと騒ぎ始めた。

「おい、フォン・リディアって……王家の姓だぞ!? 俺たちの学年に王族なんていたか?」

「カールって呼ばれたよな? 待て、あのお調子者のカールか!?」


いや、まさに俺もまったく同じ感想だよ!!


「カールくん、早く壇上へ!」

進行役の教師から、ひどく焦った声で急かされる。


――その頃、来賓席にて。

「……あっ!」

エルウィンさんが、ポンと手を打って小さく声を漏らした。


「あいつ(カール)に、王族として『卒業生代表の挨拶』があることを、事前に伝え忘れていたような気がしますが……。まぁ、世界規模の危機に比べれば瑣末なことですね」


(あのアホ上司!! 絶対にわざとだろ!!)


急遽壇上に押し上げられた俺の頭の中は、完全に真っ白だった。

原稿なんてあるわけがない。俺は壇上で、何十人もの生徒と教師を前に、ひたすら支離滅裂なことを言い続けた。

結果、講堂中から腹を抱えて爆笑されるという、忘れたくても一生忘れられないトラウマ級の卒業式になったのだった。


(覚えてろよ、あのマッドサイエンティストめぇーーっ!!)


俺の心の叫びは、卒業を祝う盛大な拍手にかき消されていった。


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