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スライム食ったら世界を救うことになった【完結済】  作者: エリト


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【第72話】二年ぶりの学校と、二人の腹黒令嬢

久しぶりのリンギア魔法大学である。

……といっても、スリープ状態で爆睡していた俺の体感では「3ヶ月ぶり」くらいなので、長期のフィールドワークに出ている時とさほど感覚は変わらない。


だが、校舎を歩いていると、すれ違う同級生たちが次々と目を見開いて声をかけてきた。

「おぉ、カール! お前生きてたのか!!」

「久しぶりだなぁー!!」


(いやいや、死んだ扱いになってたのかよ!)

2年ぶりに会った皆は背も伸びており、少し大人びて見えた。現在、俺たちは卒業間際の16歳だ。そりゃあ見た目も変わるだろう。


そこへ、ツンツン頭の見慣れた貴族のボンボン――ヴェルナーが現れた。


「ついに見つけたぞ、カール。フィールドワークが始まって以降、学校でまったく見なくなったので、恐れをなして逃げたのかと思ったぞ」


え? 何から? なんで俺が逃げてることになってるの??


「何か用かよ?」と俺が面倒くさそうに返すと。


「卒業前に、貴様に負けた屈辱を晴らすべく、再戦を申し込ませてもらおう!!」


えぇ……マジで面倒くさい……。俺は今、次元の崩壊とかレベル90とかで頭がいっぱいなんだけど。


「ふん! 貴様に敗れて以降、俺は血の滲むような必死の特訓をした! 今や貴様と同等の、レベル20を超える『中級魔法使い』になったぞ!」


ヴェルナーが胸を張ると、まわりからは「おおっ!」と感嘆の声があがった。

無理もない。卒業間際の16歳という年代で、レベル20(中級)の大台に乗るのは、魔法大学の中でも奇跡と言っていいほどの超エリートなのだ。


「貴様が逃げると困るからな! 既に試練の闘技場は予約済だ! さぁ戦え!」


(まぁ、やってもいいけどさぁ……力の差がありすぎて手加減が難しいんだよな)

俺が渋っていると、隣から「にやり」と笑う声がした。


「せっかくの記念に付き合ってあげれば? (絶対に殺さない程度にね)」

楽し気に煽ってくる。この腹黒令嬢は本当に……。


◇ ◇ ◇


結局、戦いが始まった。

卒業式前の決闘は魔法大学でよくある伝統行事らしく、闘技場にはそこそこの観客が集まっていた。


試合開始の合図が鳴った早々、ヴェルナーは得意げに杖を掲げ、自身の周囲に鉄壁の防御壁を張った。


「『アブソリュート・ウォール(絶対障壁)』!!」

ヴェルナーが高らかに宣言する。

「これは我がフェルディナント家秘伝の魔法だ! 中級になった今、ようやく発動することが出来るようになった!」


どうやら、前回俺が攻撃の決め手とした拳や、石礫のような物理攻撃を完全に弾き返し、おまけに光魔法の『ア・レイ』なども反射出来るという優れものらしい。


正直、今の俺とヴェルナーではレベル差があまりに大きすぎる。俺の身体能力なら、力まかせに壁ごと粉砕することは簡単だ。

でも、俺はふと「一つ試したい魔法」を思いついた。


「さぁ! 己の攻撃が通じない無力を思い知るが良いー!」


高笑いして叫ぶヴェルナーへ、俺はいともあっさりと歩み寄った。

そして、彼の張った絶対防御の壁の上にポンと手を当て――銀騎士対策で習得した装甲透過魔法を放った。


「フラクトフラッシュ」


もちろん、相手が死なないように可能な限り力は抑えて、だが。


結果は言うまでもない。

防御壁をすり抜けた衝撃波がヴェルナーの腹部に直接クリーンヒットし、彼は闘技場の端までゴムボールのように吹っ飛び、そのまま白目を剥いて気を失ったのだった。


(やっべ……。ちょっと内臓破壊しちゃったかも……汗)

俺が冷や汗をかいていると、待機していたクレムがすかさず最上級の『ヒール』をかけたので、なんとかセーフだった。


◇ ◇ ◇


圧倒的すぎる秒殺劇に静まり返る闘技場。俺たちは目立つ前にそそくさと退場しようとしたが、そこへ。


「あら? また卑怯な手でも使ったのかしら?」


と、クールな腹黒お嬢様ことシャルロッテが、腕を組んで冷ややかな声をかけてきた。


「あら? 目でも悪くしましたの?」

すかさず、こちらの腹黒令嬢エルザがバチバチの笑顔で応じる。


「男の陰に隠れて、良いご身分ね。エルザさんはお持てになること」

「ふふふ」


(ヒィィ……! 女性同士の嫌味の応酬、怖いわぁ……)


シャルロッテは鼻で笑うと、扇子を広げたエルザに向かって言った。

「せっかくの卒業式前イベントですし、私とエルザさんも、余興として戦ってみるのはどうかしら?」


わざわざ公衆の面前で提案してくるあたり、性格が悪い。

シャルロッテは、以前の勝ち抜きトーナメントの準優勝者である。予選落ちしたエルザを完全に見下しており、この観客が多い機会に、はっきりと力の差を見せつけてやろうという魂胆だ。


「そうね。楽しそうだわ。ふふふ」

だが、あのエルザが一切怯むことなく、嬉しそうに応じた。


周りの生徒たちは「おいおい、大丈夫かよ」「エルザ様が怪我しちゃうんじゃ……」とざわざわして、エルザを心配している声が聞こえた。

シャルロッテの強さは学年でも有名だ。普通の学生なら、そりゃそう思うだろう。


でも、エルザの本当の実力(巨大トカゲを同士討ちさせた狂乱魔法や、カルバン領で習得したヤバい魔法)を知っている俺は――。


(シャルロッテ……お前、無事で済むのか……?)


まったく逆のベクトルで、対戦相手のシャルロッテの命の心配をするのであった。


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