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スライム食ったら世界を救うことになった【祝1万PV】  作者: エリト


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【おまけ 第1話】補助魔法の充足感と、すれ違う恋心

おまけ話をいくつか投稿させていただきます。

※第68話から第71話あたりの話です


クレムは、ヴォルク師と改めて対話する予定の『3ヶ月後』までの間、ガバレリア領での特訓以来こだわっていた「強力な攻撃魔法の習得」や「体術・剣術の強化」をすっぱりと諦めた。


その代わりに、超優秀な光のヒーラーである彼にしか出来ないような、より高度で強力な『強化魔法』の探求に完全にシフトしたのだが、実はその決断の裏には、あるささやかなきっかけが存在していた。


◇ ◇ ◇


クレムと同学年に、土の魔法を得意としているフィアという女学生がいた。


フィアは土魔法で植物を急激に成長させることに長けており、特に国を支える貴重な魔力草を育てることができる特異な魔術師だった。

直接前線で敵を倒したり、怪我人を治したりすることはできない。けれど、間接的に人々の生活を助けることができる。

彼女は、クレムが使う治癒魔法や強化魔法を見て、自分と同じ「誰かを裏から支える補助系」の魔術師だと思い、以前から強い親近感を抱いていた。


そして、あの激闘の勝ち抜きトーナメントでのクレムの勇姿を目にしてからというもの、彼女は彼を異性として明確に意識し始めていた。


ある日のこと。フィアは魔法学校の図書館で、クレムがひどく険しい表情で文献を読み漁っているのを見かけた。


どうしても気になった彼女は、勇気を出して初めて彼に声をかけた。


「どうかしたの? 凄く悩んでいるみたいだけど」


クレムは驚きつつも、正直に「何か強い攻撃魔法のヒントがないか探しているんだ」と打ち明けた。

大事な親友たちに置いていかれないよう、自分も直接的な戦力になりたい。そんな焦りが彼の表情には滲んでいた。


「ごめんなさい。私は土魔法で植物を育てるくらいしかできないから、攻撃魔法のことはあまり知らないの……」


役に立てなくて残念だと俯くフィアに、クレムは優しく問いかけた。


「君は、植物を育てる魔法が得意なんだね。……君は、そうやって補助にまわっていて楽しい?」


その質問に、フィアは少し考えてから、真っ直ぐに自分の思いを口にした。


「強力な攻撃魔法が決まった時のような、瞬間的な爽快感はないかもしれないわ。でも、自分の補助が誰かの役に立った時の嬉しさは、丹精込めて育てた花が、綺麗に咲いてくれた時のような、じんわりと温かい充足感があるの」


その言葉を聞いた瞬間、クレムは目を丸くし、まるで暗闇に一筋の光が差し込んだかのような、新鮮な目でフィアのことを見つめてきた。


(そんなにじっと見つめられると、恥ずかしい……)

フィアは頬を赤くして目を逸らした。


彼女は、自分の何気ないその言葉がキッカケとなり、クレムが迷いを捨てて「自分の得意な補助魔法にすべてを懸ける」という大きな決断を下したことを、この時はまだ知る由もなかった。


◇ ◇ ◇


月日は流れ、卒業の時期が近づいてきた。

フィアは、何事にも真面目に取り組むクレムの姿を遠くから見つめるうちに、彼の事がだんだんと本気で好きになっていた。


ただ、彼女は半ば諦めてもいた。彼にはすでに心に決めた人がいるのかもしれないからだ。


クレムは入学当初から、カールとエルザという二人の規格外の生徒と常に一緒にいた。しかし最近はカールをめっきり見かけなくなり、代わりにクレムがカルバン領魔術師団トップの娘であるエルザと二人きりでいるのをよく見かけるようになったのだ。

そして、どうやら二人でどこかへよく出かけているらしい。


(あの美しくて才能のあるエルザさんが恋人なら、私なんて勝ち目がないわ……)


卒業まで間近に迫ったある日。

珍しく、クレムが一人で中庭のベンチに座っていた。

(この時、エルザは一人でヴォルク師の元へ赴き、極大魔法アトミックブレイクの教えを乞うている最中だった)


フィアは、エルザとの本当の関係を聞いてみたい一心で、意を決して彼に声をかけた。


「クレム君。今日はエルザさんとは一緒ではないの?」


「あ、フィアさん。うん、彼女はしばらくどこかへ出かけるらしいんだ。僕も詳しい行き先は聞いてないんだよ」


クレムの返答に、フィアの心臓が高鳴った。

(恋人同士なら、長期間どこに行くかくらい絶対に伝えるはず……。ということは、二人は付き合っているわけじゃない? これなら、私にもまだチャンスがあるかも!)


フィアは、思い切って卒業式後のパーティに彼を誘ってみる事に決めた。

胸の前で両手をぎゅっと握りしめ、少し上目遣いで話しかける。


「そういえば、もうすぐ卒業式ね」


「あぁ、そうだったね! なんだかあっという間だったなぁ」


「最近、カール君を見ないけれど……クレム君は、卒業後は彼と一緒に故郷のガバレリア領に戻るの?」


「うーん、そうだねぇ……」

クレムは腕を組み、上の空のような顔で考え込み始めた。


(今だわ!)

フィアは小さく深呼吸をした。


「そのぉ……もしよければ、卒業式後のパーティなんだけどぉ……」

フィアが勇気を振り絞って言いかけた、まさにその時だった。


「あっ!!」


クレムが突然、雷に打たれたように顔を上げ、ガタッとベンチから立ち上がった。


「フィアさん、ありがとう! 君のおかげで、一番大事なことを思い出したよ!」

(カールも卒業式に誘わないと!)


そう言うなり、クレムはフィアに満面の笑みを向け、嵐のような勢いで駆け出して行ってしまったのだ。


「え……?」


一人取り残されたフィアは、中庭に吹き抜ける風の中、遠ざかっていくクレムの背中をただただ呆然と眺めるしかなかった。


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