表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライム食ったら世界を救うことになった【完結済】  作者: エリト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/115

【第109話】世界を救った大罪人と、新たなる旅立ち

俺が世界を救ったあの日から、数年の月日が流れた。


魔力を完全に失った事で、世界は想像を絶する大混乱におちいった。

数年経った今も、その混乱の余波は続いている。


シャリーク国を支えていた魔力草はただの雑草となり、魔法を動力としていた様々なインフラが完全に停止した。


そして、最も人々の命に直結する大きな問題は「医療」だった。今までは治癒魔法で簡単に救えていた怪我や病気の人が、次々と救えなくなっていったのだ。


また、政治的にも世界中で大きな混乱が起きた。

これまで当たり前だった「国力イコール魔力」という絶対的な方程式が崩れ去り、各国の魔法師団は当然ながら解体された。

強大な魔法師団の武力によって強引に統一されていた国も多く、圧倒的な抑止力を失った各地で、様々な内乱が発生したのは言うまでもない。


経済的なダメージはもっと深刻だ。

シャリーク国やその周辺の国々は、経済の柱であった魔力草の輸出が突如としてなくなり、国家経済が崩壊した。代わりとなるような特産品や産業も無かったためだ。

シャリーク国ほど極端では無いにしろ、世界のほとんどの国で物流や経済が大混乱に陥った。


そして、後になって一番深刻だと分かったのは生態系の破壊だ。

魔力を糧に生きていたモンスターたちが急にいなくなった影響は思いのほか大きく、動植物の食物連鎖が崩れ果てた。この自然環境の激変は、今後数十年は続くであろう世界的な混乱の、一番の要因になりそうだった。


これが、俺が世界を救った結果だ。


第三の世界のバイゼル師が「一部を切り取られた我々の世界にも多大な被害が及び、文明は大きく後退した」と語っていたが、まさにその言葉通りの現実が突きつけられている。


果たして、俺たちは本当に世界を救ったのか、それとも壊してしまったのか……今となっては誰にも分からない。


さて、そんな俺たちの近況だが。


残念ながら、絵物語に出てくるような世界を救った英雄とはなれなかった。それどころか、俺たちは世界中から指名手配される「世紀の大犯罪者」扱いとなったのだ。


人々の暮らしを壊し、これほどの世界の混乱を生み出した直接の原因は俺たちにある、ということだろう。各国にとって、やり場のない民衆の怒りを向ける矛先として、ちょうど良かったのだ。


では、そんな大罪人の俺たちが今どこでどうしているかって?


俺たちは今、ゼレナ山脈の中腹にある「銀の城」に住んでいる。

バイゼル師が消え、機能や動力は完全に失われてしまったが、オリハルコンで造られた頑強な躯体は今も健在だ。外界からの攻撃を一切寄せ付けない、最高の城塞となっている。


そして、この巨大な城に住んでいるのは俺たちだけではない。

世界的な政治の混乱や平民たちの暴動によって、居場所を失い酷い目にあっていたかつての魔術師たちも多数、ここへ逃げ込んで暮らしているのだ。

もちろん、この城の護衛にはあのガルシアさんと、ジャック兄さんがついている。


魔法という力がなくなり、魔導武器もまともに機能しなくなった今の世界において、純粋な剣の腕だけで理外の領域に達しているガルシアさんは、もはや「人間をやめちゃっている化け物」だ。彼に真っ向から勝てる人間など、いや、たとえ正規の軍隊が押し寄せてきたとしても絶対に存在しない。


そして、冷静な判断力と統率力を持つエルウィンさんには、この城の……いや、ここに集った者たちが興した「新しい国」の国王になってもらった。


新しく建てたその国の名は「エルティア」と呼ぶ事にした。


かつて、試練の祠でヴォルク師が予言していた「エルティア国」という言葉。

それは遠い過去の国ではなく、こうして魔力なき世界で、俺たちの手によって新しい形で作られる未来の国だったのだ。


食糧問題や外部との交渉など、大変なことはまだまだ続く。

だが、幸いなことに俺たちは皆、怪我もなく元気だ。エルザもドノヴァン師も、カルバン領を離れて今はここで忙しく働いている。


時たま、下界の混乱を思ってやるせない気持ちにはなるけれど、生きていくためには前を向いて歩いていくしかない。

それに、世界で一番ビッグな男になるはずの俺が、いつまでも落ち込んでいるわけにはいかないのだ。


城の中腹にあるテラスから、眼下に広がる青々としたゼレナの森を眺め、俺はそう思い直して大きく伸びをしたのであった。




……と、吟遊詩人の英雄譚なら、まさにここで静かに幕が下りそうな大団円のタイミングだった。


ゴゴゴゴゴッ!!


突如として、テラスの前の空間が激しく軋み、そこには今まで見たこともないような不気味な「次元の裂け目」がぽっかりと現れたのだ。


俺が驚いて身構えたその時、裂け目の中から見知らぬ一人の女性が転がり出てきた。

その人は、息を切らし、ひどく焦った顔で俺を見てこう告げた。


「あなたね! 私はガンズ・テラのミラ。諸悪の根源であるアン・テラに直接介入されて、私たちの世界が今、大変なことになっているの! お願い、多世界を救うために、私とともに戦って欲しい!」


うそーん!

マジかよ、まだこの次元規模のピンチが続くんかい!

俺は盛大に心の中でツッコミを入れた。


魔力がなくなってただの人間になった俺に、一体どうやって多世界を救えって言うんだ!


……だが、そんな文句を思い浮かべながらも、俺の答えは最初から決まっている。

俺は呆れたように笑うと、ミラに向かって力強く拳を突き出した。


「あぁ、もちろんだ!」


〜完〜


本連載は、これにて完結となります。

想像以上に多くの方に目を通していただき、著者としてこれ以上の喜びはありません。

また新たな構想がまとまりましたら、別の作品でお会いできればと思います。

もしこの作品が面白いと思ってもらえましたら、シェアしていただけると嬉しいです。

最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ