第6話「初めての勝利」
夕方。
蓮は公園に一人で立っていた。
手には天照。
「……また逃げられた」
昨日の妖怪に襲われた時は、何もできなかった。
今日は天照を振ることができた。
それでも、妖怪を倒すことはできなかった。
「俺がもっと強ければ……」
天照を見つめる。
「こいつの力を、ちゃんと使えるようにならないと」
その時だった。
「そう簡単にはいかないぞ」
「えっ?」
蓮が振り返る。
誰もいない。
「……気のせい?」
その瞬間――
背後の茂みから妖怪が飛び出した。
「見つけたぞ!」
「またかよ!」
蓮は天照を構える。
妖怪は昨日のものとは違う。
体は小さいが、鋭い爪を持っている。
「昨日の奴とは違う……」
「昨日の仲間から聞いたぞ。お前が天照を持っているとな!」
「仲間?」
妖怪が笑う。
「お前を狙っているのは、俺だけじゃない」
「……!」
妖怪が襲いかかる。
蓮は天照で受け止めた。
ガキィン!
「ぐっ!」
腕に衝撃が走る。
「重い……!」
妖怪が連続して爪を振る。
蓮は必死に避ける。
一撃。
二撃。
三撃。
「くそっ!」
蓮は後ろへ下がる。
その時、足元の小石に躓いた。
「うわっ!」
身体が倒れる。
妖怪が目の前まで迫った。
「終わりだ!」
蓮はとっさに天照を横へ振った。
キィィン!
刀身から光が走る。
「ぐあっ!」
妖怪が吹き飛んだ。
地面を転がり、立ち上がろうとする。
蓮は息を切らしながら立ち上がった。
「……まだだ」
天照を握り直す。
妖怪が再び立ち上がる。
「人間のくせに……!」
蓮は一歩踏み込む。
「俺だって、怖いよ」
さらに一歩。
「でも――」
天照が強く輝く。
「逃げたくない!」
蓮は思い切り刀を振り抜いた。
光が妖怪を包み込む。
「ぐ……あああっ!」
妖怪の身体が黒い煙へ変わっていく。
そして――
完全に消えた。
蓮は呆然と立ち尽くす。
「……倒した?」
天照を見る。
「俺が……妖怪を倒した」
初めてだった。
自分の力で、妖怪を倒した。
だが、喜びよりも疑問の方が大きかった。
「……仲間って言ってたよな」
蓮は周囲を見回す。
「俺を狙ってる妖怪が、他にもいる……?」
その頃。
町から離れた山の中。
昨日、蓮を襲った妖怪が暗闇の中にいた。
その前には、さらに大きな影。
「天照を持つ人間を確認しました」
影がゆっくり顔を上げる。
「そうか」
低い声が響く。
「ならば、いずれ我らの前に現れる」
影の赤い目が光る。
「天照の持ち主が、どこまで成長するのか……見届けてやろう」
蓮はまだ知らない。
自分が倒した妖怪は、始まりに過ぎないことを。
第6話 完




