第42話「天照と玄冥」
門の前。
蓮たちは、先ほどまで響いていた声が消えた後も、その場を動けずにいた。
「……玄冥は、俺のことを知ってる」
蓮は天照を見つめる。
湊が首を傾げた。
「でも、なんで?」
「分からない」
黒川が答える。
「だから調べる必要がある」
隼人は門を見ていた。
「俺が知っている古い記録なら、何か分かるかもしれない」
蓮が振り返る。
「天照のこと?」
「ああ」
四人は一度門から離れ、近くの社へ戻った。
黒川が持っていた古い資料を机の上に広げる。
「天照について書かれた記録は少ない」
湊がページをめくる。
「これ……」
一枚の古い絵が描かれていた。
そこには、一人の剣士と巨大な妖怪が描かれている。
その剣士の手には――
蓮の天照とよく似た刀が握られていた。
「これが……天照?」
隼人が絵を見る。
「間違いない」
黒川が絵の下にある文字を読む。
「『王を封じし者、太陽の刃を携えたり』……」
蓮が目を見開く。
「王って、玄冥?」
「おそらくな」
さらにページをめくる。
そこには玄冥についての記述があった。
「『百鬼を従えし大妖、玄冥。かつて人の世を覆わんとし、封印される』」
湊が続きに目を移す。
「でも、その後が破れてる……」
紙の下半分が失われていた。
蓮は天照を握る。
「じゃあ、天照は玄冥を封印した刀ってこと?」
黒川は首を横に振った。
「正確には違う」
「え?」
「天照だけで玄冥を封印したわけではない」
黒川は三つの封印石を見る。
「封印石と、天照。そして複数の術者によって封印されたと考えられる」
蓮は黙り込む。
すると隼人が口を開いた。
「だから封印石が天照に反応したんだ」
「……そういうことか」
しかし、湊が別の記述を見つける。
「待って」
全員が湊を見る。
「ここに変なことが書いてある」
湊が読み上げる。
「『王の封印が弱まる時、太陽の刃を持つ者もまた現れる』」
蓮の表情が変わる。
「俺が……玄冥の復活と同じ時期に現れたってこと?」
黒川が頷く。
「そういう意味にも読める」
蓮は天照を見る。
自分がこの刀を手にした理由。
なぜ封印石が反応するのか。
まだ分からない。
その時――
外から、妖気が漂ってきた。
隼人が立ち上がる。
「誰か来る」
蓮も天照を抜く。
「また妖怪?」
黒川が外を見る。
「一体じゃない」
湊が息を呑む。
「複数……?」
社の外。
森の中から、いくつもの赤い目が現れた。
一体。
二体。
三体。
その数は徐々に増えていく。
そして森の奥から、低い声が響いた。
「天照を持つ者を……渡せ」
蓮が刀を構える。
「俺を狙ってるのか」
隼人も横に並ぶ。
「どうやら、そのようだな」
黒川が札を構える。
湊は封印石を抱えた。
「ここから離れた方がいいんじゃない?」
蓮は首を振る。
「いや」
天照の刀身が光る。
「ここで迎え撃つ」
森の中から、妖怪たちが一斉に姿を現した。
そして蓮たちの前に、新たな戦いが始まろうとしていた。
第42話 完




