第34話「隼人の過去」
山を下りる四人。
蓮は隼人の横を歩いていた。
「隼人」
「何だ?」
「昨日言ってたよな。妖怪に村を襲われたって」
隼人は少し黙った。
「……ああ」
「いつのことなんだ?」
隼人は前を見たまま答える。
「玄冥の封印が解かれた後だ」
蓮が驚く。
「やっぱり、あの時に?」
「ああ」
隼人の声が少し低くなる。
「それまで、俺の村に妖怪なんていなかった」
湊も黙って聞いている。
「ある日、突然だった」
「妖怪が現れた」
隼人は拳を握る。
「最初は何が起きているのか、誰にも分からなかった」
「村の人たちも、妖怪なんて昔話の存在だと思っていた」
蓮は黙って聞いている。
「でも、本物だった」
隼人の足が止まる。
「家が壊され、人が襲われた」
「俺は家族と逃げようとした」
隼人は目を伏せる。
「でも、俺を逃がすために……家族は残った」
湊が小さく息を呑む。
「……それで?」
「俺だけが生き残った」
しばらく沈黙が続く。
やがて隼人が顔を上げる。
「だから俺は、妖怪を倒すために刀を覚えた」
蓮が聞く。
「玄冥を倒すために?」
「ああ」
隼人は頷く。
「玄冥が目覚めなければ、あの妖怪たちも目覚めなかった」
黒川が口を開く。
「つまり、お前が玄冥を追う理由は……」
「全部、あいつが始まりだからだ」
隼人は静かに答えた。
蓮は天照を見る。
「俺たちも玄冥を止める」
隼人が蓮を見る。
「……お前は、復讐なのか?」
「違う」
蓮は首を振る。
「これ以上、同じことが起きないようにするためだ」
隼人は少し驚いた。
そして――
「……そうか」
小さく笑った。
その時、湊のスマホが鳴った。
「みんな、ちょっと待って」
三人が振り返る。
湊は画面を確認する。
「次の封印石について、新しい情報が来た」
蓮が近づく。
「場所は?」
「ここからかなり離れた場所。でも、地図に印がある」
黒川が確認する。
「なら、そこへ向かう」
蓮は頷いた。
「今度こそ、妖怪より先に見つけよう」
四人は次の目的地へ向かって歩き出した。
その頃――
遠くの山では、一体の妖怪が蓮たちの向かった方向を見つめていた。
「封印石を探しているか……」
妖怪は静かに笑う。
「ならば、先に奪うまでだ」
第34話 完




