第17話「妖怪を知る少年」
昼休み。
蓮は校舎裏で天照を見つめていた。
「昔の持ち主……一体、誰なんだろう」
その時。
「天照のこと、調べてるんだろ?」
「……!」
振り返ると、一人の少年が立っていた。
「誰?」
「神崎湊」
湊は蓮を見る。
「お前、天城蓮だろ?」
「……そうだけど」
「やっぱりな」
湊は周囲を確認する。
「最近、妖怪に襲われてるだろ?」
蓮の表情が変わった。
「なんで知ってる?」
「俺も最近、妖怪を見たからだ」
「最近?」
「数日前だ」
湊は自分の腕を見る。
「家の近くで、変な影を見た。最初は動物かと思った。でも、人間じゃありえない動きをしてた」
「……妖怪だったのか」
「ああ」
湊は頷く。
「それから気になって調べ始めた。そしたら、最近この辺で変な事件が増えてることに気づいた」
蓮は黙った。
玄冥が目覚めてから、まだそれほど時間は経っていない。
それでも妖怪の存在は、少しずつ人間の世界に現れ始めている。
「お前も妖怪を見たんだな」
「見ただけだ。戦ったことはない」
「怖くなかった?」
「怖かったよ」
湊は苦笑する。
「だからこそ、何なのか知りたくなった」
その時。
校舎の奥から、
ガタンッ!
大きな音が響いた。
二人が同時に振り返る。
「……今の音」
「妖怪かもしれない」
蓮は天照に手をかける。
「待って」
湊が蓮を見る。
「俺も行く」
「危ないぞ」
「分かってる」
湊は頷いた。
二人は音のした方へ向かう。
廊下の床には、黒い足跡が残っていた。
「これ……」
湊がしゃがみ込む。
「さっき話した奴と似てる」
「やっぱり妖怪か」
蓮が天照を抜く。
キィン。
刀身が淡く光る。
その瞬間――
廊下の角から黒い影が飛び出した。
「来る!」
妖怪が蓮へ襲いかかる。
ガキィン!
天照が爪を受け止める。
「ぐっ!」
妖怪の力に押される。
「蓮!」
湊が近くにあった机を押す。
ガタンッ!
机が妖怪の足元へ滑り込む。
妖怪が一瞬よろめいた。
「今だ!」
蓮が踏み込む。
「はあっ!」
天照を振り抜く。
キィィン!
妖怪が吹き飛ばされる。
「ぐあっ!」
妖怪は黒い煙を残し、そのまま窓から外へ逃げていった。
蓮は追おうとする。
しかし、湊が止めた。
「待て!」
「でも!」
「今追ったら、外の生徒に見られる!」
蓮は足を止めた。
妖怪の姿は、もう見えない。
「……逃げられた」
湊は蓮を見る。
「すごいな」
「何が?」
「本当に妖怪と戦ってるんだな」
蓮は天照を収める。
「俺だって、まだ始めたばかりだよ」
「だったら……」
湊が真剣な顔になる。
「俺も協力させてくれ」
蓮は少し驚いた。
「妖怪を調べるだけじゃなく?」
「ああ」
湊は頷く。
「俺も、この先何が起きるのか知りたい」
蓮は湊を見る。
そして笑った。
「分かった。一緒に調べよう」
こうして神崎湊は、蓮と行動を共にすることになった。
まだ正式な仲間ではない。
第17話 完




