第15話「校庭の妖怪」
昼休み。
蓮は窓の外を見ていた。
校庭の隅にいた黒い影は、もう消えている。
「……いない」
「移動したんだろうな」
黒川が周囲を確認する。
「生徒がいる場所で戦うのは危険だ」
「じゃあ、どうする?」
「俺が誘い出す」
「一人で?」
「お前は天照を持ってないことにしておけ」
黒川はそう言って教室を出た。
蓮も少し遅れて廊下へ出る。
その時――
「天城」
後ろから教師に呼ばれた。
「はい?」
「放課後、職員室に来てくれ」
「分かりました」
教師が去っていく。
蓮は黒川を探す。
しかし、どこにもいない。
「……黒川?」
その頃、校舎裏。
黒川は一人で妖怪と向き合っていた。
「ここなら、生徒は来ない」
妖怪が笑う。
「人間が一人で何をする?」
「お前をここから離す」
「なぜ?」
「学校にいる人間を巻き込みたくない」
妖怪は黒川へ飛びかかった。
黒川は札を投げる。
「封!」
札が妖怪の身体に張り付く。
だが――
ビリッ。
札が破れる。
「なっ……!」
妖怪の腕が黒川を弾き飛ばした。
「ぐっ!」
その時。
「黒川!」
蓮が走ってきた。
「来るな!」
「でも!」
妖怪が蓮を見る。
「……天照の持ち主」
蓮は息を呑む。
「お前、俺を知ってるのか?」
「もちろんだ」
妖怪が笑う。
「玄冥様が目覚めた今、天照の持ち主が現れたことは、我らの間でも知られている」
「玄冥……」
その名前を聞いた瞬間、蓮の表情が変わった。
神社で出会った、百鬼の王。
「玄冥は何をするつもりなんだ?」
「いずれ分かる」
妖怪が迫る。
「その前に、お前を消す」
蓮は天照を抜いた。
キィン!
刀身が光る。
「黒川、下がって!」
「無茶するな!」
妖怪が襲いかかる。
蓮は一撃をかわす。
昨日までなら、反応できなかった。
しかし今は違う。
「見える……!」
妖怪の動きが分かる。
蓮は横へ回り込み、天照を振る。
ガキィン!
妖怪の腕に傷が入る。
「ぐっ……!」
蓮は驚いた。
「当たった!」
「調子に乗るな!」
妖怪が地面を蹴る。
蓮は構える。
「もう一度!」
妖怪の爪と天照がぶつかる。
キィン!
その瞬間、天照が強く輝いた。
「……!」
蓮の頭の中に、昨日と同じ光景が一瞬だけ浮かぶ。
燃える森。
無数の妖怪。
そして――
天照を握る、謎の人物。
「また……!」
蓮の動きが止まる。
「隙あり!」
妖怪の爪が迫る。
「蓮!」
黒川が叫ぶ。
蓮はとっさに身体をひねった。
爪が頬をかすめる。
「危な……!」
蓮はすぐに距離を取る。
妖怪も追撃しようとした。
その瞬間。
校舎からチャイムが鳴った。
生徒たちが校庭へ出てくる。
「まずい!」
黒川が叫ぶ。
妖怪は周囲を見る。
「今日はここまでだ」
「待て!」
妖怪は黒い煙となり、校舎裏から消えていった。
蓮は天照を握ったまま、その場に立っている。
「……また逃げられた」
黒川が近づく。
「今は仕方ない」
「でも、少しだけ分かった」
「何が?」
蓮は天照を見る。
「俺は、もっと強くなれる」
天照が静かに光った。
黒川はその様子を見つめていた。
「……その力が何なのか、調べる必要があるな」
二人は校舎へ戻っていった。
しかし――
校舎の屋上。
誰もいない場所で、先ほどの妖怪が二人を見下ろしていた。
「天照の力……」
妖怪は笑う。
「思ったより早く目覚め始めている」
第15話 完




