第14話「変わり始める力」
放課後。
蓮は公園で木刀を振っていた。
「一、二、三……!」
昨日よりも身体が軽い。
百回振り終えても、以前ほど腕が重くなかった。
「……ちょっと変わってきたかも」
黒川は黙って蓮を見る。
「まだまだだ」
「厳しいなぁ」
「妖怪は待ってくれない」
蓮は木刀を置き、天照を抜いた。
「じゃあ、これも」
構える。
昨日までとは違う。
足の位置も、刀の握り方も安定している。
「……いいな」
黒川が初めて素直に認めた。
「本当に?」
「ああ。少しずつだが、身体が刀についてきている」
蓮は嬉しそうに笑う。
「よし!」
その時だった。
カサッ。
公園の茂みが揺れた。
蓮がすぐに天照を構える。
「妖怪?」
「まだ分からない」
二人が警戒していると、茂みから友達が顔を出した。
「蓮?」
「えっ、お前?」
友達は蓮の持っている刀を見て驚く。
「何それ?」
蓮は慌てて天照を隠した。
「これは……木刀!」
「いや、どう見ても刀じゃん」
「ちょっとした……遊び道具」
「変なの」
友達は笑いながら帰っていった。
蓮はホッと息を吐く。
「危なかった……」
黒川は真剣な顔をしていた。
「蓮」
「ん?」
「今の反応、かなり速かった」
「そう?」
「ああ。前のお前なら、あれほど早く構えられなかった」
蓮は自分の手を見る。
少しずつだが、自分自身が変わっている。
その夜。
蓮は家へ帰り、自分の部屋で天照を眺めていた。
「今日は、前より上手く振れた」
刀身に触れる。
その瞬間――
キィン。
天照が光った。
「……!」
今までよりも強い光。
蓮の頭の中に、一瞬だけ見知らぬ景色が浮かんだ。
燃え上がる森。
無数の妖怪。
そして、誰かが天照を握っている。
「……誰だ?」
映像はすぐに消えた。
蓮は呆然とする。
「今の……何だったんだ?」
天照は静かに光を失った。
翌日。
学校。
蓮が廊下を歩いていると、黒川が近づいてきた。
「昨日、何かあったか?」
「……分かるのか?」
「顔に出てる」
蓮は昨日見た光景を話した。
黒川の表情が変わる。
「燃える森……?」
「ああ」
「他には?」
「妖怪がたくさんいた」
黒川はしばらく黙った。
「それは、ただの夢じゃないかもしれない」
「どういうこと?」
「天照が、お前に何かを見せた可能性がある」
蓮は天照を見る。
「この刀が……?」
その時。
校舎の外から、低い唸り声が聞こえた。
二人が窓を見る。
校庭の隅。
誰もいない場所に、黒い影が立っている。
「……妖怪だ」
黒川が呟く。
「行こう」
「待て。まだ授業が残ってる」
「でも、あいつが学校に入ってきたら……」
蓮は窓の外を見る。
黒い影が、こちらを見上げていた。
そして――
ニヤリと笑った。
第14話 完




