第13話「修行の始まり」
翌日の放課後。
蓮は黒川と公園に来ていた。
「昨日の妖怪、強かったな……」
「今のお前じゃ勝てない」
「やっぱり?」
「だから修行する」
黒川は木刀を一本、蓮へ渡した。
「まずは体力」
「刀の修行じゃないの?」
「刀を振るだけじゃ妖怪には勝てない」
蓮は木刀を握る。
「何するんだ?」
「走る」
「……え?」
「公園を十周」
「十周!?」
「嫌なら妖怪に負け続けろ」
「……やる」
蓮は走り始めた。
最初は余裕だった。
三周。
「まだいける!」
五周。
「……ちょっときつい」
七周。
「はぁ……はぁ……」
九周。
「もう……無理……」
「あと一周」
「鬼かよ……!」
それでも蓮は走り切った。
その場に座り込む。
「はぁ……死ぬ……」
「死んでない」
「そういう問題じゃない……」
黒川は少しだけ笑った。
「次」
「まだあるの!?」
木刀を構える。
「今度は百回振れ」
「百……」
「始め」
蓮は木刀を振る。
一回。
二回。
三十回。
腕が重くなる。
五十回。
「くっ……!」
七十回。
「まだ……!」
九十回。
「あと十!」
百回。
「終わった……!」
蓮は木刀を下ろした。
黒川は頷く。
「今日はここまで」
「え?」
「明日も同じだ」
「……マジか」
蓮は苦笑した。
それでも、どこか嬉しかった。
昨日まで何もできなかった自分が、少しずつ変わろうとしている。
帰り道。
蓮は天照を見つめた。
「もっと強くなるからな」
天照は何も答えない。
ただ、刀身が僅かに光った。
「……今、光った?」
蓮が笑う。
その頃。
遠く離れた山の中。
昨日、蓮と戦った妖怪が、誰かの前に跪いていた。
「天照の持ち主と接触しました」
暗闇から声が響く。
「力は?」
「まだ未熟です」
「ならば急ぐ必要はない」
妖怪は顔を上げる。
「しかし……天照は、奴を認めているようでした」
しばしの沈黙。
「……そうか」
暗闇の奥で、赤い瞳が開く。
「ならば、いずれ大きな障害になる」
第13話 完




