第12話「迫る強敵」
放課後。
蓮は昨日と同じ公園にいた。
「もう一回!」
「焦るな」
黒川の指示を聞きながら、蓮は何度も木刀を振っていた。
「はぁ……はぁ……」
腕が重い。
それでも蓮は止めなかった。
「昨日よりは動けてる」
「本当か?」
「少しだけな」
「少しだけかよ……」
蓮は苦笑する。
その時だった。
黒川の表情が変わった。
「……静かすぎる」
「え?」
さっきまで聞こえていた鳥の声が消えている。
風も止まった。
黒川が周囲を見回す。
「蓮、天照を出せ」
「妖怪?」
「たぶんな」
蓮はすぐに天照を抜いた。
すると、公園の入り口に人影が現れた。
長い黒髪。
人間のような姿。
だが、その目は赤く光っている。
「……お前が天照の持ち主か」
蓮は刀を構える。
「お前も妖怪か?」
「そうだ」
妖怪はゆっくり歩いてくる。
「名を覚える必要はない」
「なんだよ、それ」
「お前はここで終わる」
蓮が踏み込む。
「だったら――」
天照を振り抜く。
しかし。
カキィン!
妖怪は片手で天照を受け止めた。
「……え?」
蓮の目が見開かれる。
「遅い」
妖怪が腕を振る。
蓮の身体が吹き飛んだ。
「蓮!」
地面を転がる。
「ぐっ……!」
立ち上がろうとするが、身体が思うように動かない。
「昨日の妖怪より……強い」
妖怪は蓮へ近づいてくる。
「天照を持っているだけでは、何もできない」
蓮は歯を食いしばった。
「……まだだ」
立ち上がる。
「俺は……まだ終わってない!」
天照を握り直す。
「来い!」
妖怪が一瞬で目の前まで迫る。
蓮は必死に刀を振る。
しかし、すべて避けられる。
「くそっ!」
「力任せでは勝てぬ」
妖怪の蹴りが蓮の腹に入る。
「ぐあっ!」
蓮は地面に倒れた。
黒川が札を投げる。
「蓮から離れろ!」
札が妖怪へ飛ぶ。
しかし、妖怪は手で払い落とした。
「……!」
黒川が驚く。
「札が効かない……」
妖怪は黒川を見る。
「人間が邪魔をするな」
「くっ……!」
黒川が構える。
だが、妖怪の姿が消えた。
「どこへ……?」
次の瞬間。
黒川の目の前に妖怪が現れる。
「黒川!」
蓮が叫ぶ。
妖怪の腕が振り下ろされる。
黒川は間一髪で避ける。
「危な……!」
地面に大きな亀裂が入った。
蓮は天照を握りしめる。
「黒川に……手を出すな!」
身体中が痛い。
それでも立ち上がる。
天照が微かに光る。
妖怪が蓮を見る。
「その目……」
初めて、妖怪の表情が変わった。
「怒りか」
蓮は構える。
「関係ない」
一歩踏み出す。
「守りたいだけだ!」
天照が強く輝いた。
蓮は全力で斬り込む。
妖怪は受け止める。
しかし――
「……!」
今度は妖怪の足が、わずかに下がった。
「今の一撃……」
蓮自身も驚く。
妖怪は天照を見つめる。
「なるほど」
妖怪は後ろへ飛び退いた。
「今日はここまでだ」
「待て!」
「お前はまだ弱い」
妖怪は蓮を見つめる。
「だが、いずれ面白い存在になる」
黒い霧が妖怪を包む。
「その時に、また会おう」
霧が消える。
妖怪の姿もなくなっていた。
蓮はその場に座り込む。
「……勝てなかった」
黒川が近づく。
「でも、生き残った」
「それだけ?」
「今のお前なら、それだけでも十分だ」
蓮は天照を見る。
「もっと強くならないと……」
黒川は頷いた。
「そうだな」
二人は静かに空を見上げた。
第12話 完




