第11話「初めての修行」
蓮と黒川は、学校から少し離れた公園に来ていた。
「ここで何するんだ?」
「修行」
「……急だな」
黒川は蓮を見る。
「先程の戦い、お前は天照の力に助けられただけだ」
「うっ……」
「今のままだと、次は勝てない」
蓮は天照を見る。
「じゃあ、何をすればいい?」
黒川は近くに落ちていた木の枝を拾った。
「まずは構え」
「刀の?」
「そう」
蓮は天照を抜こうとする。
「待て」
「え?」
「いきなり抜くな。まず立ち方からだ」
「そこからなのかよ……」
黒川は呆れたように息を吐く。
「力任せに振っても、妖怪には通用しない」
蓮は言われた通りに立つ。
「こう?」
「足が開きすぎ」
「こう?」
「今度は狭い」
「難しいな……」
何度も姿勢を直す。
最初はうまくいかなかった。
それでも蓮は諦めなかった。
「もう一回」
「そうやって続けろ」
しばらくすると、少しずつ形になってきた。
「……こんな感じか?」
「さっきよりはいい」
「さっきよりはって……」
蓮は苦笑する。
それでも、少し嬉しかった。
初めて、自分から妖怪と戦うための準備をしている。
その時だった。
カサッ。
茂みが揺れた。
二人が同時に振り返る。
「……妖怪?」
蓮が天照の柄に手をかける。
黒川は首を横に振った。
「まだ抜くな」
「でも!」
「気配が違う」
茂みから出てきたのは、一匹の野良猫だった。
「……なんだ」
蓮が力を抜く。
猫は二人を見ると、そのまま走り去っていった。
「びっくりした……」
黒川は空を見上げる。
「今日はここまでだ」
「え? もう?」
「最初から無理をするな」
蓮は天照を収める。
「分かった」
二人は公園を出た。
帰り道。
蓮は黒川に尋ねる。
「なあ」
「何だ?」
「お前は、どうして妖怪のことをそんなに知ってるんだ?」
黒川はしばらく黙った。
「……話すには、まだ早い」
「なんだよ、それ」
「いずれ話す」
黒川はそれだけ言った。
蓮は気になったが、それ以上は聞かなかった。
その夜。
蓮は自分の部屋で、昼間の修行を思い返していた。
「もっと強くならないと」
天照を見る。
すると、刀身がほんの少しだけ光った。
蓮は微笑む。
「……一緒に強くなろうな」
その頃。
遠く離れた山の中。
一匹の妖怪が、夜空を見上げていた。
「天照の持ち主……」
その目が赤く光る。
「まだ弱い」
妖怪は笑った。
「ならば、今のうちに狩る」
静かな山の中に、不気味な声が響いた。
蓮はまだ知らない。
次に現れる妖怪が、これまでとは比べものにならないほど強いことを。
第11話 完




