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王立諜報局・第二局分析官  作者: どみさん


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第60話 同じ席を指す

 五枚の判番号は、来た順のまま、脇にあった。差し止めの封から、向こうが動くたびに一つずつ増え、門の席を通って戻った番号だ。下から積んで、席を一つずつ上へ辿ってきた。指してきたのは、あの一点の、縁までだった。


 クロイスは、その脇へ、もう一枚を寄せた。門の先から戻った、許しの写しだ。王家の名を載せて門を越え、その層から、白い欄の先の一点を、上から見下ろしてきた紙だった。名の効く高さは、線の走る面より、上にある。


 二枚を、白い欄の先で、重ねる。下から辿った番号の先と、上から降りた許しの先が、そこで、初めて向き合った。


 下から積んだ五枚は、席を一つずつ上へ辿って、あの一点の縁の手前まで来ていた。上から降りた許しは、門の先の層から、その一点を輪郭だけ見下ろしている。片方だけでは足りなかった二つの線が、白い欄の先の同じ一点で、上と下から同じ高さに重なった。


 番号の先と、許しの先が同じ席を指している。ずっと白かった欄の先の一点に、初めて、職掌を置ける。


 クロイスは、徴税官の職掌を写した図を、その脇へ引いた。線が、合う。地方の棚から抜いた分も、封で止めた綴りの先も、別々の席を通って、この一つの席へ落ちていた。資金の、集まる席だ。徴税官の職掌の、いちばん奥の、集約の席。白い欄の先の一点は、その席の、欄だった。


 クロイスは、その欄に、指を一度置いた。ずっと白かったところだ。今は、職掌が一つ入っている。だが、その席に座る者の名は、まだ欄の中にない。指の下にあるのは席と職掌だけで、主の名は、この二枚が重なっても出てこないようだった。


 書庫の扉が、外套の裾ごと開いた。ライサが入ってくる。机の端では止まらず、脇の椅子へ回って、腰を下ろす。地図も、控えも、重ねた二枚も、クロイスと同じ向きで、彼女の前にあった。


 ライサの目が、重ねた二枚で止まった。


 「その二枚は、別々の紙だっただろう」ライサは、番号の束と、許しの写しを、指の背で分けて示した。「片方は、下から積んだ番号。片方は、門の先から戻った許し。……それが、同じところを、指しているのか」


 「指している」クロイスは、白い欄の先の一点を、指で示した。「下から辿った番号の先と、上から降りた許しの先が、ここで重なる。上と下から、同じ席を指した。片方だけなら、縁の手前で止まっていた。二本が重なって、初めて、席が、指せる」


 ライサは、重なった一点を、しばらく見ていた。それから、徴税官の職掌の図へ、目を移す。


 「この前、私は、聞いた」ライサは言った。「その縁の紙で、次に、誰の隊が動く、と。……で、どこの隊が、動いた」


 「どこの隊も、動いていない」クロイスは言った。「動いたのは、紙が二枚だ。下から積んだ番号と、上から降りた許し。この二枚が重なっただけで、席は、指せた。誰の隊も、外へは出していない」


 ライサは、すぐには、うなずかなかった。職掌の入った欄を、指の背で示す。


 「隊は出さずに、席は割れた」ライサは言った。「なら、聞き方を、変える。この席が割れて、あんたは、その席に座っている奴を、次に、どうする気だ」


 クロイスは、答えなかった。欄には、席と職掌が入っている。だが、その席の主の名は、まだ、欄の中にない。どうする、の前に、まず、その名が、紙に出ていなかった。


 「割れたのは、席までだ」クロイスは、その欄の、名の空いたところを、指で示した。「ここに、職掌は入った。だが、座っている者の名は、まだ、白い。座る者を、どうこうする紙は、この二枚の先に、まだ、ない」


 「あんたは、いつも、そこまでしか言わない」ライサは、目を上げた。その目は、地図ではなく、こちらを向いている。「席は割れた。座っている奴の名は、白いままだ。……その白い一行を、あんたが、次に、どう埋めるか、だろう」


 クロイスは、答えなかった。名の欄は、白い。そこへ何を回すかは、この二枚の重なりの、さらに先で、まだ、形になっていないのだろう。


 その日の午後、書庫へ、ハーグレイヴ局長が寄った。人を番号でなく、名前で覚える男だ。机の上の、重ねた二枚と、職掌の入った欄を、上から見た。


 「前に、俺は、言ったな」局長は、番号の束を、指で示した。「広く掃けば、向こうも、広く消す、と。……これは、広くない」局長の指が、上から降りた許しの写しへ、移る。「上から、一枚だ。狭く、正確に、一点を指した。向こうは、これを、広くは、消せない」


 局長は、職掌の入った欄を、しばらく見ていた。それから、その二枚を、指の背で、一つにまとめる所作をした。


 「この席は、俺が、上へ通す」局長は言った。「ここから先は、お前の机の上では、決まらない。上の席が、要る」


 クロイスは、重ねた二枚を、正規の経路の束へ載せた。ここまでが、この机の上で、指せるところだった。その先へ席を運ぶのは、この束が、決まった机を回る順にある。局長が、束を提げて、書庫を出ていく。


 机の上には、重ねる前の五枚と、許しの写しが、来た順のまま、残った。白い欄の先の一点には、職掌が、一つ、入っている。ずっと、白かったところだ。


 クロイスは、その職掌の、席の、一つ上の欄を、指で辿った。席の主の名を書く、欄だ。そこは、白い。地方の棚も、封で止めた綴りも、みな、この席へ落ちていた。落ちた先の席には、主が、座っているはずだった。だが、その名は、まだ、そこになかった。


 徴税官の職掌の、いちばん奥の席。その名の欄だけが、白いまま残ったように見えた。


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