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王立諜報局・第二局分析官  作者: どみさん


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第59話 動き出す番号

 門へ出す照会は、朝のうちに書き上げた。宛の欄には、あの一点の門を入れる。その一枚の下へ、宛を書き直した許しを重ねた。許しの宛にも、同じ門が入っている。判は、押されていた。二枚は、宛の高さが、揃っている。


 クロイスは、二枚を、正規の経路の束へ載せた。回付の順に、決まった机を回る紙だ。下から積んだ番号は、あの一つ上の席の手前で、止まったきりだった。門は、第二局の名では、通さない。だが、この照会には、王家の名が載っている。名は、門の番の手には、負えなかった。


 束は、机を離れた。数日、机の上は静かだった。四枚の控えは、動いた順のまま脇にある。地図の線は、あの席の手前で止まり、その先の欄は、白い。


 書庫の扉より先に、回付の窓が動いた。通過の控えが、一枚、戻ってくる。門の先の、受付の印が、下の隅に落ちていた。照会は、門の内へ、入っている。白い欄に遮られて、これまで紙一枚通らなかった層だ。そこへ、この照会が、初めて入った。


 クロイスは、受付印を指で確かめた。乾いた朱が、紙の面からわずかに盛り上がっている。第二局の名で積んだ番号は、この印の手前で止まっていた。照会は、初めて門の内へ入った。ただ、この印だけでは、あの一点の門まで届くか読めないようだった。


 書庫の扉が、外套の裾ごと開いた。ライサが入ってくる。机の端では止まらず、脇の椅子へ回って、腰を下ろす。地図も、控えも、戻った通過の控えも、クロイスと同じ向きで、彼女の前にあった。


 ライサの目が、受付印で止まった。


 「その印は、門の先のか」


 「門の先だ」クロイスは、通過の控えを、二人の間へ寄せた。「照会が、門の内へ入った。白い欄に遮られていた層だ。下から積んだ番号では、届かなかった」


 ライサは、印を、しばらく見ていた。それから、四枚の控えの、取り下げの一枚へ、指を移す。


 「向こうは、この前、手を止めた」ライサは、その一枚を、指の背で示した。「動けば、判番号が控えに残る。だから取り下げて、動かないほうを選んだ。あんたが、そう読んだ」


 「読んだ」


 「なら」ライサの指は、取り下げの一枚から動かない。「動かないほうを選んだ相手が、今さら、なぜ動く。門の内へ、あんたの紙が一枚入った。それだけで、向こうが、また手を出すのか」


 「出す」クロイスは、通過の控えの受付印を指で示した。「下から積んだ番号なら、向こうは取り下げて止められる。だが、王家の名を載せた照会は、取り下げでは消えない。門の先の席は、これに応じるほかない」


 ライサは、目を上げなかった。


 「応じれば」


 「応じれば、動いた判が控えに残る」クロイスは言った。「取り下げは番号を残さない手だった。だが、この照会には効かない。応じた席の番号が、一つ戻る」


 ライサは、しばらく黙っていた。それから、地図の、白い欄の先を、顎で示した。


 「番号が一つ戻って、それで、その先の名が、割れるのか」


 「割れない」クロイスは言った。「戻る番号が指すのは、あの一点の、縁までだ。その先の名は、まだ控えには出ない。門は越えた。向こうは動く。だが、動いても、そこで止まる先が、ある」


 「止まる先」ライサは、ようやく目を上げた。「あんたは、いつも、そこまでしか言わない。門を越えた、番号が戻る、縁までだ。……その縁の紙で、次に、誰の隊が動く」


 クロイスは、答えなかった。ライサの目は、地図ではなく、こちらを向いている。門を越えたのは紙で、戻るのは番号だ。だが、その番号をどこの席へどう回すかは、まだ戻っていない控えの中にあるようだった。


 三日ほど、机の上は動かなかった。ライサは、脇の椅子と、外の見張りを、行き来している。


 四日目の朝、正規の経路の束に、一枚、増えていた。クロイスは、束を、来た順に繰る。動いた順の三枚、取り下げの一枚、その脇に、見覚えのない判番号が一つ。凍って以来、増えなかった番号だ。


 クロイスは、その一枚を手前へ引いた。指が、束の縁で一度止まる。回付の印は、門の席のものだった。動かすも止めるも、その席の判が要る。その席を、この番号は通っている。取り下げで手を止めていた側は、この一枚では止めていられなかったようだった。


 番号は、あの一点の縁を指していた。地方の棚から抜いた分と、封で止めた綴りの先が、その番号の下で重なる。だが、重なった先の名は、この一枚に書かれていない。


 クロイスは、四枚の控えの脇へ、五枚目を置いた。動いた順の三枚、取り下げの一枚、そして、門の席を通って戻った、一枚。凍っていた盤で、増えなかった番号が、また一つ、控えに戻っている。


 白い欄は、まだ白い。その先の一点へ、番号の縁が初めてかかった。名までは届いていない。だが、手前で止まっていた紙は、今度は門の席を通っていた。向こうは、また判を押すようだった。


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