7話「両親が見に来てくれた」
アルフレートとお茶を飲む。それ自体はこれまでにも経験のあることだ。しかしここでゆったりお茶をするのは初めてかもしれない、とも思う。私の記憶に間違いがなければそうだろう。けれども、嫌な時間かといえばそうではなく、むしろ幸せな時間だと思える。
「これいいね! 美味しいよ」
「貰い物なの」
「貰い物?」
「ええ。お客さんに貰ったのよ、お金だけじゃ気が済まないからって」
今は室内には私と彼しかいない。
そんな中、彼は口を開く。
「ルレツィアさんって、偉いよね」
ぽつりとこぼされた言葉に戸惑う。
「え……」
「生まれ持った力を人のために使おうとする心、尊敬するよ」
ティーカップを手にしたままアルフレートはこちらへ視線を向ける。
「ゆくゆく、この国を護っていく気はない?」
アメジストみたいな瞳で見つめられる。
それはまるで神の核のよう。
神々しい瞳に見つめられると気の利いた言葉をすらすらと発することは難しい。
「え、っと……」
戸惑ってしまっていると。
「ああううん、いいんだ。べつに何でもないんだ」
彼はそう言って話を消した。
……何だろう?
……何か言いたいことがあったのだろうか?
疑問符を抱きながら、彼とのティータイムを楽しんだ。
「ルレツィア! ここが貴女の仕事場なのね? 素敵だわ!」
今日は両親が職場へ来てくれた。
初めてのことだ。
私が何を始めたか何をしているのか、その辺りは両親に隠していたわけではない。簡単には伝えていた。しかし両親がここへ来る流れには特にはならなくて。それゆえ、両親を招くことはしないまま月日が経っていた。
「良い場所だな」
母も父も初めて訪れるこの場所に興味津々であった。
「ストライプの壁紙がおしゃれだな、それも派手過ぎない色合いのストライプでいるだけで落ち着く。ルレツィア、素敵な場所で良かったな」
「ありがとう」
父は内装に興味を持っているようだ。
舐めるように視線を動かしている。
「ああもう! ここに住みたいくらいだわ!」
「私はここにいることが多いの」
「住んでいるの?」
「そんな感じ」
「素敵ね、本当に」
母と私が喋っている間も父は内装ばかりに意識を向けていた。とにかく内装が気になるらしい。愛しい絵画を見つめる者のように、この部屋の内装に夢中になっている。機嫌は良さそうだ。ただ、途中天井と壁を集中して見すぎるあまり、ごみ箱に足先が引っ掛かってしまって転倒しそうになっていたが。
「この時計! かっこいいな! この木の色が渋くこれまた素晴らしい! つるつるする表面が素晴らしい、触り心地も考慮してきちんと磨かれ整えられている。さらに、短針長針のデザインが作り込まれていてデザイン性も低くはなく、その中でも見やすさを考えたデザインになっているところが時計であることを忘れていない証明となり……」
部屋の壁に貼り付くように存在している壁掛け時計の評価を語り出す父。
「引かれてるわよ、あなた」
「あぁそうだ、こちらの棚もまたおしゃれだな。ここの角のデザインなんか、深みのある大人の魅力があって……」
「娘に引かれるわよ、あなた」
「……え? 何だ? 何か言ったか?」
「言いたいことをすべて言うのはやめた方がいいわ、落ち着いて」
「あ……あ、あぁ、そうだな」




