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私たちは相思相愛?  作者: ayaペンギン


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2話(ベルンハルト視点)

私のような醜男のもとに嫁いでくるという稀有な姫。

事前に収集した情報ではクオン王国の二の姫は二十二歳で、容姿を理由に婚姻相手がなかなか見つからないと聞いていたが…

この状況はいったい何なのだ!?聞いていた話と違いすぎる!


「くおんおうこく、にのひめ、アリサ・クオンです。でむかえ、ありがとうございます。」

目の前でたどたどしい挨拶をしてくれたこの少女が私のもとに嫁いでくる姫なのか?

どこからどう見ても美少女にしか見えない、こんなに美しい人を私は初めて見た。

その声は鈴を転がしたようで、触れれば折れてしまいそうな儚さに庇護欲をそそられる。

精霊の類だと言われても不思議に思う者はいないだろう。


二の姫を名乗る少女が眉根を寄せる。

きっと嫁ぐ相手がこのような荒々しい男で、さぞ不快な思いをしているのだろう。

なるべく威圧感を与えないように片膝をつき、目線を合わせる。


「ベルンハルト・シュタルクだ。シュタルク侯爵家の当主であり、この国で騎士団総長を任されている。会えて嬉しく思う。」

ゆっくりはっきりとした発音で挨拶を返すと、アリサ姫は微笑んでくれた。

この婚姻は対等なものではない。きっと無理して微笑んでくれているのだろう。


「私の前では無理に微笑む必要はない。何でも遠慮せず伝えてほしい。」

言葉を尽くそうとするが、こちらの言葉をあまり理解できていないように感じる。


彼女の心を少しでも慰められたらと、用意した眉目秀麗な通訳の男にエスコートを任せようとした。

だが、なぜかアリサ姫は怒ったように馬車に一人で乗り込んでしまった。

これ以上彼女の気分を害すわけにはいかない。


同じ馬車に乗るつもりだったが、私が同乗しては不憫だろう。

私は騎乗して、馬車に並走した。


それにしてもあの美しい少女が本当に私の妻になるのか…

未だに夢でも見ているようだ。


今回の婚姻は皇帝の思い付きから始まった。

東の小国に貴重な鉱石資源があることに目を付けた皇帝が、クオン王国に武力をちらつかせ、無理やりに近い形で名ばかりの友好条約を結ばせたのだ。そして人質を兼ねて、私の嫁となる姫を要求した。

皇帝は貴重な鉱脈から得られる資源と私の結婚相手、両方が手に入ると悪い顔で笑っていた。


私は金もあるし地位もある。しかし壊滅的に容姿に恵まれず、そのせいで長く独身を貫き、気づけば三十五歳になっていた。学友だった皇帝からも早く結婚して子をなせと言われ続けていたが、のらりくらりと躱し続けていた。しかし、そのせいで一国の姫にとんだ迷惑をかけることになってしまった。

こんな荒々しく、一部では醜い怪物のようだと恐れられている私のもとに嫁ぐことになってしまったアリサ姫には本当に申し訳ないことをしたと思っている。

皇帝が何と言おうと、彼女を幸せにする覚悟だ。

なんとかアリサ姫にも私の誠意が伝わるといいのだが…


―――――


屋敷に到着すると、通訳の男が我先にとアリサ姫の乗る馬車の入り口の前に立つ。

きっと、エスコートをするつもりなのだろう。


そう思った瞬間、なぜかドロリとした嫌な感情が心を重くする。

アリサ姫に触れられたくない。

とっさにそう思った私は馬車から一人で降りてきたアリサ姫に手を伸ばし、肩を抱く。

アリサ姫は驚いた様子だったがその表情からは安堵も感じられた。


やはり、通訳の男が気に入らなかった…?

この国の中でもなかなかお目にかかれないほどの美しい男を用意したが、人間の次元を超越した美しさをもつアリサ姫から見ればあの男も醜男だとでも言うのだろうか。

であれば、私は何になるのか…そこまで考えて私は思考を放棄する。

これ以上考えたら立ち直れないほどの傷を負いそうだった。


とりあえず通訳の男に触れるなという気持ちを込めて視線を送ると、おびえたように目を逸らされた。

あとで、これ以上の接触は許さないと釘を刺さなければ。通訳を交代してもいいかもしれない。


アリサ姫から一歩離れ、応接室へと案内するために歩き出す。

途中、通訳の男に歩調を落とすよう耳打ちされた。

私とアリサ姫の体格差を考慮できていなかった。

これが通訳の男と私との女性経験の違いかと少し落ち込んだ。


応接室に到着した私たちは、ソファに向かい合って座る。

通訳の男は私の後ろに控えさせた。

通訳の男を介して、これからのことについて話す。


だがまずは謝罪からだろう。

「こんな年上の荒々しい男のもとに嫁ぐことになってしまって申し訳ない。美しく若い姫にこんな男との婚姻を強いてしまうのは心が痛む。アリサ姫の要望は何でも叶える努力をしよう。ただし、皇国法に則り、不貞だけは認められない。気の毒だが…皇帝の決めたことは絶対だ。諦めてほしい。」

私がそう言うと、通訳の男がクオン王国公用語でアリサ姫に通訳してくれる。


アリサ姫はその言葉を聞いた後、眉根を寄せて首をかしげていた。

不貞を認めないという言葉が気に入らなかったのだろうか、それとも私の謝意が足りなかったのだろうか。

だが、これからこの通訳の男のようにアリサ姫に懸想する男がうじゃうじゃ湧いてくるだろう。

その中にアリサ姫のお眼鏡にかなう男もいるかもしれない。

だが、私はアリサ姫が自分以外の男と恋仲になることだけは許せそうにない。

心が狭いかもしれないが、それ以外のことは何でも叶えるから、それだけは受け入れられなかった。


少し待ってから、アリサ姫の言葉を通訳の男に教えてもらう。

『あなたのような素敵な男性に嫁ぐことができて嬉しいです。不貞などするつもりはありません。この婚姻は私にとって喜ばしいことです。不束者ですがよろしくお願いいたします。』

表情を窺えば、その表情には少し戸惑いの色が見えた。


なんと健気な姫であろうか。

アリサ姫はきっと人質としての役割を理解し、私を不快にさせないように気を遣ってくれているのだろう。

気遣いは不要だと通訳を通じて伝える。

するとアリサ姫は目を見開いた後、私の容姿を褒めたたえてくれた。


きっとそうするように祖国で教育を受けてきたのだろう。

あまりにも不憫な姫に私の持つすべてを捧げようと決意した。

まずは、三日後の皇帝の謁見に合わせてドレスと宝飾品を用意しなければ。

今まで使い道がないからとため込んでいた私財を投じる先がやっとできたことに心が躍る。


その後は、状況や今後の予定をできるだけ丁寧に伝えた。

そして、アリサ姫のために用意した侍女に彼女を託すと、私は皇帝に報告するため家を出た。


ちなみに、通訳の男はアリサ姫と別れた後すぐに解雇した。


―――――


「どうだった。」

皇帝の執務室に入ったとたん、リヒャルト・フォン・ガイスト皇帝――リヒトが口火を切った。

「どうもこうもありません!事前に聞いていた情報と何一つ合っていないではありませんか!」

私はリヒトに詰め寄る。


「きちんと伝えてあったであろう?年も間違いではない。あの国では珍しい容姿だということも合っておる。」

リヒトの言葉に頭が追い付かない。

美しすぎて、誰も手を出さなかったということだろうか…?


「あれだけ美しければ近づくことさえためらわれる。そういうことでしょうか?」

私の言葉にリヒトはにやりと笑うだけであった。


「それで、部屋はどこを用意したのだ?夫人の部屋か?」

リヒトに聞かれ、ぎょっとしてしまう。

「そ、そんなわけないでしょう!きちんと客室にご案内しました。」

慌ててそう返すと、リヒトは「つまらん。」と吐き捨てた。


「婚姻前でも手を出していいのだぞ?そのために、姫をベルの屋敷に預けたのだから。」

リヒトの言葉に頭に血が上る。

「なんてこと言うのですか!アリサ姫の尊厳を傷つけるような発言は看過できません。もちろん手を出すつもりもございません。」

私の怒りに、リヒトはおかしそうに肩を震わせ笑い出す。

なぜ笑われているのかわからないが、冗談だとしてもそういったデリケートな話はやめてほしい。


その後、何点か事務連絡を済ませた私は、騎士団訓練所へ顔を出し、屋敷へ戻ったのはすっかり夜が更けた後だった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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