新幹線さんのボヤキ
そして突然――
教室が静かになった、その時。
笑美が急に背筋を伸ばす。
両手を横へ広げる。
「ちょっと待ったーーーー!」
子どもたち。
「だれー?」
笑美は胸を張る。
「ぼく、新幹線です!」
先生が思わず吹き出す。
「まさかの新幹線!」
新幹線のぼやき
笑美は両手をビューンと前へ伸ばす。
「ビューーーーーーーン!!」
「ビューーーーーーーン!!」
「京都駅を出発しまーす!」
そして急ブレーキ。
「ちょっと待ってや!」
新快速と普通列車の間へ割り込む。
「君ら、まだマシやで!」
新快速。
「えっ?」
普通列車。
「そうなん?」
新幹線は腕を組んで言う。
「俺なんか、最高時速二百八十五キロや!」
園児たち。
「はやーーーーい!」
新幹線は肩を落とす。
「京都出たら……」
間を空ける。
「新大阪。」
「のぞみやったら、その次は名古屋!」
教室。
「えぇーー!」
「遠い!」
新幹線。
「止まれへんねん!」
「ずーーーっと走るねん!」
「運転士さんも集中しっぱなしや!」
さらに続ける。
「しかもな!」
「雨の日!」
両手で顔を隠す。
「バチバチバチバチ!」
「雨が当たるねん!」
「めっちゃ痛いねーーん!」
子どもたち大笑い。
「新幹線さん痛そう!」
笑美は顔をしかめながら続ける。
「雪の日なんか、もっと大変や!」
「寒いし!」
「風ビュービューやし!」
「『遅れたらあかん!』って、みんな応援してくれるけど……」
胸を押さえて一言。
「俺も必死やねーーん!」
そこへ新快速が言い返す。
「でも、お前、線路広いやん!」
新幹線。
「それはそうや!」
普通列車も負けじと。
「駅いっぱい止まるんも大変なんやで!」
新幹線。
「ほな今度、一日交代してみるか?」
新快速。
「いや、それは遠慮しとく。」
普通列車。
「私も!」
教室は大爆笑。
最後は三人そろって前へ出る。
新快速
「速いけど長距離でヘトヘト!」
普通列車
「止まって走っての繰り返しでヘトヘト!」
新幹線
「止まる駅は少ないけど、超高速でヘトヘト!」
三人同時に叫ぶ。
「みんな、お客さんを安全に運ぶために頑張ってまーーす!」
最後は三人で敬礼。
「今日も安全運行で、出発しまーす!」
教室は拍手と笑いに包まれた。
「アハハハハ!」
「新幹線さんも大変なんや!」
「また電車さんシリーズやってー!」
担任の先生は笑いながらお腹を押さえる。
「笑美ちゃん……」
「はい?」
「先生、今日は腹筋のトレーニングになったわ。」
笑美はにっこり笑って一礼した。
「ご乗車ありがとうございました!」




