親友
ハヤトは毎朝サッカー部朝練が始まる前に学校併設の寮へと向かう、朝食と昼食は寮で寮住まいの皆と一緒だから。
「ハヤト、おはよう」
トイレからあくびをしながら出てきたサッカー部部長のタケルがハヤトに気付いて挨拶する。
「あ、部長おはようございます!あの、お願いがあります」
「ん?お願い?」
ハヤトら一年生の入学入部から約三ヶ月半、ハヤト初めてのお願いであった。
「なんだ?話してみろ」
「……実は——」
——寮食堂。
暗黙のルールみたいなもので一年生と二年生が席や食卓を用意していく、ただ今日だけ準備開始時に姿が見えない二人が居た。
ハヤトとマサルは寮の屋上でタケルを交えて向かい合っていた、ハヤトのお願いは叶えられていた。
「マサル、俺もっとサッカー上手くなるぞ」
「っ!……だからなんだよ」
「俺はマサルが付いて来てなきゃ嫌だからな、だから……」
「……わかったわかった、お前には負けるよ、俺だっていつまでも試合出れたチャンスをスカした事引きずらないよ」
「マサル!」
「ったく部長まで巻き込んで……すいませんでしたタケル部長」
タケルは笑いながら二人を見つめる。
「ハッハッハ、俺はただ飯の時間まで屋上の風に当たっていただけだ!ほら、朝メシ用意行ってこい!」
「はい!」
「願い聞いてもらってありがとうございました部長!」
ハヤトとマサルは二人急いで食堂に向かう、二年生からは怒られるだろうがそれもまた部活だ。
「ふふ、今年は狙えるかもなインターハイ優勝、一年坊主達に残してやりたいぜ」
タケルは屋上から見えるグラウンドを見つめながら大きく笑った。
食卓準備をサボった罰として今日の部活終わり寮掃除がペナルティとしてハヤトとマサルに課せられた、二人は甘んじて受け入れる。
「マサル〜頑張ろうぜ」
「全く、結局ハヤトのマイペースに付き合わされて俺までペナルティじゃねぇか……まあ今回は良いさ」
マサルはどこかスッキリした顔で呟く、ハヤトはそんなマサルを見て満足気だった。
朝練自体はランニングや筋トレが主なのでハヤト達サッカー部の本番はやはり放課後からである。
十五時過ぎから二十時までみっちりと練習に励む、スポーツ強豪校の私立天神高等学校サッカー部は特に力が入り専用芝グラウンドで練習が出来る。
人一倍楽しそうに舞う様にボールを操るハヤトは前回の練習試合デビュー大活躍から「超大型新星」と呼ばれチームの軸に据えられるであろうと部員達から思われる。
ハヤト本人は少し降り掛かる重圧を感じはするが本人は「サッカーが楽しい」でやってきているので勝ち負けは二の次だった、今朝のマサルトの話し合いまでは。
今は違った、同じデビューを飾ったマサルは全く活躍出来ずハヤトの影に隠れ悔しい思いで試合を終えた。
「マサルが付いてきてくれなきゃ嫌だ」
純粋に出たハヤトの思いは勝ち負けやチームの為と言った枠を、ハヤトに芽生えさていた。
マイペースにのんびりとサッカーを楽しんできた天才が一歩先に進んだ日になった。
——二十時、部活練習終了時間。
今日もハードな練習を終えて、さあ帰ろうとハヤトは荷物を担いだ時だった。
「ハヤト……お前帰れないぞ……」
「え?なんかあったっけ?」
「あほ!俺とお前で寮掃除だろうが!」
「あ」
「はぁ……お前のマイペースは変わりようがないな、結局お守りしてやらんといかんのか……」
「マサルは凄いな〜ありがとう」
「やかましい!ほらさっさと掃除するぞ」
「あ、ちょっと待ってアン……親戚のお姉さんに連絡するから」
「あ〜飯作ってくれてるもんな、早くしろ」
スマホを操作して少し遅くなる事をメッセージで飛ばす。
すぐさまアンナから返事があり可愛らしいスタンプで「了解」と「頑張って」が送られてきた。
「悪いな、じゃあやろっかー」
「お前適当にするなよ?掃除はマイペースとかいらんからな?」
マサルからガミガミと注意されながらも面倒見てくれる関係にハヤトは感謝しながら、やっぱりどこかマイペースにやってマサルを怒らすのであった。




