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読んでいただいてありがとうございます。

 ヴァッシュの顔を見て青ざめる兄に、ラフィーネは呆れた。

 今までのことを考えたら、ラフィーネの傍にヴァッシュがいることくらい簡単に予想出来るはずなのに、何故か予想外だったらしい。

 確かにラフィーネだって、ヴァッシュが恋人になったことは予想外だったけれども!


「こう……」

「今の俺は、ただのラフィーネの恋人だ。場所を考えろ」


 デリックの言葉を遮って、ヴァッシュが面倒くさそうに言った。

 ここでちゃんと並んで焼き菓子を買っているということの意味に気付け。

 眼光だけでそう言ってデリックを黙らせたヴァッシュは、ラフィーネの手を握った。


「場所を変えよう。ここでは悪目立ちする」

「そうですね。お兄様、大人しくついて来てください」

「あ……あぁ」


 青を通り越して、真っ白な顔色になっている兄が後ろからついて来るのを確認してから、ラフィーネは個室があるカフェに入った。

 貴族たちがお忍びで通うカフェには、個室があるので助かる。

 ヴァッシュとなら別に堂々と表で飲食をするのだが、この兄が何を言うのかが分からなくて怖いので、わざわざ個室のある店まで移動した。

 個室のあるカフェの場所を教えてもらっていてよかった。

 ヴァッシュと外でデートすると聞いた侍女仲間が、わざわざ教えてくれたのだ。

 持っててよかった、情報収集能力に信頼と実勢のある侍女仲間。

 お礼に、クッキーは一箱あげよう。

 当たり前だが、ヴァッシュはラフィーネの隣に座った。


「さて、お兄様、一応個室ですけど、あまり大声は出さないでくださいね」

「分かっている」


 さすがに落ち着いたのか、兄は大人しく座っている。

 ……隣で睨みを利かせている公爵閣下のせいでもあるけど。


「先ほどの話の続きですけど、今回の監査でお父様は伯爵として相応しくないという判断が為されたの。それは、私がどうこうということではなくて、陛下が調査結果を基に判断されたことよ。お兄様も分かっているとは思うけど、うちは最初に頂いた領地をどんどん減らしていった家よ。それも天災とかそういうことではなく、当主の才覚の無さで」

「……そうだな」

「あら、素直に認めるのね」

「さすがに違うとは言えない」

「でしょうね。領地持ちの伯爵家としては、小さすぎる領地だものね」


 昔はどうしてだろうと思っていたけれど、単純に代々の当主に伯爵という地位にいるだけの能力がなかっただけの話だった。

 一応、相応しい能力持ちの伯爵もいたが、ここ何代かは領地を減らす一方だった。


「数年前から、そういう話はあったんだ」

「ヴァッシュ様?」

「リンゼイル伯爵だけじゃない。他にもいくつかの家が、家格に見合った働きをしておらず、没落する一方だと。落とした方が本人たちのためにもいいのではないか、と議論されていたんだ。ただ、落とすにしてもプライドがあって反発するだろうし、何の落ち度もなく落とせば、貴族の間に余計な警戒感や摩擦を生むだけだったから、問題が棚上げされていたんだ」

「では、もっと前に落とされていたかもしれなかったんですか?」

「そうだ。その場合、家名は残らなかっただろうな。そこはラフィーネが皇宮でがんばっていたおかげだ。お前たちがすることは、ラフィーネに感謝することであって、ラフィーネから爵位を取り上げたり、お金をせびることではない」


 ヴァッシュにさらに睨まれたので、デリックは目を合わせたくなくて、そっと伏せた。

 そんな兄の様子に、ラフィーネはため息を吐いた。


「……いいわ、お兄様。お父様に会いに行くわ」

「本当か?」

「えぇ。ただし、ヴァッシュ様も一緒よ」


 その言葉に、デリックは目を見開いた。


「閣下が一緒に来ることなんてないだろう?うちのことなんだし」

「関係あるわよ。閣下と私は、陛下公認の、こ、こ」

「婚約者だ」


 顔を赤らめながらもヴァッシュのことを『恋人』と言おうとしたラフィーネの言葉を遮るように、ヴァッシュが『婚約者』と強い言葉で言った。


「婚約者?閣下とラフィーネはもうそんな?だが、父上の許可が……」

「いらんだろう。ラフィーネは成人しているし、伯爵家の当主だ。強いて言うのなら陛下の許可くらいだが、陛下は大喜びで許可をくれたぞ」


 むしろ、絶対に手放すなと念を押された。

 もう少し落ち着いてから言うつもりだったのだが、ただの恋人と陛下公認の婚約者だと、どう考えても婚約者の方が強い。

 グダグダ言われる前に言っておいた方がいい。


「お前がどこまで聞いたのかは知らんが、リンゼイル伯爵の名はラフィーネか、ラフィーネが生んだ子供にしか継ぐことを許されていない。ラフィーネが婿を取らずに嫁に行く場合、伯爵家が他家に吸収されることになるからな。陛下の許可が必ず必要だ」


 ラフィーネがヴァッシュに嫁ぐことを前提としていた伯爵位の継承だったので、ラフィーネは俸給になっているのだ。


「ラフィーネの婚約者である俺が、無関係なわけがないだろう?」


 どう考えてもトリアテール公爵が一緒に来ると、デリックたちの方が負ける。

 だから、デリックとしては、ラフィーネ一人で来てほしかったのだが……。


「それと、今回のことは全て陛下に報告することになる。色々と気を付けるんだな」

 

 ヴァッシュにそう言われたデリックは、顔を上下に振るばかりだった。

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― 新着の感想 ―
同僚の皆様も、まさかこんな個室の使い方をしたとは夢にも思わなかったでしょうね…。
手遅れだって事を気付いた時、父と兄の今後は厳しいものになるでしょう。しかも訪問後の父兄の返答と対応次第ですが、次代以降も汚名返上出来るだけの成果を帝室に提示し無い限り、その血族は日陰暮らしを余儀なくさ…
兄は気付いてないが、ここに来てる時点で色々手遅れなんだよなぁ……(笑)
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