少女の怒り(その2)
高校2年生の前半だけで色んなことがあったけれども、この先はいわゆる‘普通の’色んな行事がある。
今は9月の半ば。去年はちょうど今頃、白井市のロードレースに参加したなあ、と思い出に浸る瞬間があり、年を取ったのかな、とぼんやりと思う。
10月には陸上部の秋季大会がある。去年僕は市で3位だった。来年のインターハイ出場を目指すためにも、是が非でも武田さんのように、市のチャンピオンにならねば、と気負う。走り幅跳びチームの一年生3人も練習熱心な上に健気で可愛い。こんな頼りない僕を「小田さん、小田さん」と、きちんと先輩として扱ってくれる。
さつきちゃんも家庭科部の‘大会’がある。‘食欲の秋’だからか、各校が旬の食材を使っての創作メニューを競うものだそうだ。そもそも家庭科部のある高校が少ないので、いきなり県レベルの大会だそうだ。
それらの各部の秋季大会が終わった後、10月下旬に体育祭がある。今年はどういう巡り合わせか、僕とさつきちゃんがクラスの体育祭実行委員に選ばれた。さつきちゃんは運動神経の良さが皆に知れ渡っていることもあり、22票と最多推薦票。僕は、6票で次点選出。おそらく、その内の3票は、太一、脇坂さん、遠藤さんだろう。さつきちゃんが圧倒的得票で選ばれるのを見越してのお節介のようだ。更に6票のうちの1票が、もしさつきちゃんだったら・・・ちょっと嬉しい気分になるのだけれど。
秋季大会の練習優先なので、体育祭の実行委員会は18:00くらいと遅い時間から始まる。今のところは週一回ほどなので、まだそんなに負担は感じない。それと、どうでもいいことかもしれないけれど、さつきちゃんのような文化部の生徒が委員に選ばれたのは、長い鷹井高校体育祭史上初めてのことだそうだ。
「今日は打合せをする組と、ホームセンターに資材注文をしに行って貰う組に分けたいんだけど・・・誰か、ホームセンターに家が近い人はいるかな?」
はい、と、2年生陸上部短距離チームの女子が手を挙げる。あれ、あの子の家、ホームセンターに近かったかな、と僕は不思議に思う。
「小田くんと日向さんがいいと思う」
えっ、とその女子の方を思わず僕は見る。さつきちゃんも同じようにその子に視線を向ける。
「え、でも、小田くんも日向さんも家はホームセンターの反対方向じゃないか?」
司会者の疑問に、短距離チームの女子ははきはきと答える。
「誰が行くんでも、どっちみちここからだとホームセンターへはバスじゃないと遠くて行けないじゃない?それに、日向さんは夜遅くなるから今日は自転車じゃなくてバスで学校に来たんだよね?」
さつきちゃんはその子のペースに巻き込まれて、うん、と頷く。
「じゃあ、同じクラスだし、帰りの方向も同じ2人がいいと思う。それに日向さんちのバス停の辺りは物騒なところだから、ついでに小田くんに家まで送って貰えば?ね、小田くん、大丈夫だよね?」
僕も完全にその子のペースに巻き込まれて、うん、と頷いてしまった。
それから、その子は僕に向かって、誰にも分からないように、悪戯っぽい笑みを向けた。彼女は、去年の白井市のロードレースの時、僕とさつきちゃんの関係をしつこく冷やかした子だ。
「じゃあ、ホームセンターの営業時間は21:00までだから、もう出発して。これが注文の品物リスト。毎年買ってるホームセンターで話は通してあるから、請求書を貰って後でお金を払う段取りだから。悪いけど、頼むね」




