真夏の銃剣(その1)
補習 → 部活 → 家の手伝い → 勉強 → 風呂入って寝る → 補習 → 部活 → 家の手伝い → 勉強 → 風呂入って寝る・・・・・
といった感じの夏休みをしばらく過ごしていた。学校の屋上の‘コンクリートの砂浜’の上をみんなで歩いた以外、特に変わったことも無い日々の中、ようやくイベントの日がやってきた。
8月の頭、第二次大戦の終盤、鷹井市の空襲のあった日。その時亡くなった方々への鎮魂の意味も込めた花火大会の日になった。
昨年と同様、日向家で晩御飯を頂き、5人組+耕太郎で花火を観に行く。女子3人はさつきちゃんのお母さんの指導で晩御飯の準備をし、男子2人は手土産を持って夕方頃にのそのそと行き、女子3人は花火が終わった後は日向家でお泊り会、という内容だ。
昨年と違うのは、さつきちゃんのおばあちゃんがもういない、ということだ。
それともう一つ違うこと。
それは、自転車ではなく、市電で花火大会の会場に向かうことだ。
理由は、今年は女子3人が浴衣を着るから。浴衣では自転車に乗れない。
去年は、‘あまり服装にはこだわりがないから’というようなニュアンスで3人ともごく普通の服装だった。けれども、夏休み前、さつきちゃんが家庭科部で浴衣を仕立てる実習を行ったのだ。週二回しか部活に出られないさつきちゃんは大半の作業は家でやった。脇坂さんと遠藤さんも、
「せっかく、ひなちゃんが頑張って浴衣を作ったんだから、皆で浴衣で行こう!」
と合わせてくれたのだ。とはいっても、脇坂さんも遠藤さんも浴衣を持っていないので、さつきちゃんのお母さんの浴衣と、さつきちゃんの従姉の千夏さんの浴衣をそれぞれ借りたのだ。
晩御飯を食べ終わってから女子3人はさつきちゃんのお母さんに着付けを手伝って貰い、着替えた。
3人とも、とても似合っている。
僕は、さつきちゃんの浴衣の柄を見て、あっ、と思った。
白地に、濃いブルーの花が一輪ずつあしらわれたとても爽やかな柄だ。
その濃いブルーの花は、僕が誕生日にあげたガラス玉のアクセサリーの中に描き出された青い花にとてもよく似ていた。
僕がさつきちゃんの浴衣をじっと見つめているのに気が付いたのか、さつきちゃんは、‘ばれたか’みたいな感じの、めずらしくおどけた表情で、ふふっ、と笑った。




