このお方には敵わない
「も、申し訳ありませんでした…。」
冷たい床に正座をして手を前で揃え土下座をする。
記憶がなかったらどんなに楽か…漸く酔いが覚めた今、自分が犯したいろいろな失態が頭の中を駆け巡っている。
嫌な汗を額から流しながら顔をあげれないでいるのだ。
「記憶はあるんだな?」
「はい…」
「俺たちに濃厚なキスをしてきたのも覚えてるんだな?」
「は、は…ぃ…」
うー…穴があったら入りたい。
2人が仁王立ちをしてフィオナの前に立っているので嘘はいえない。
酔っていたとはいえ自分がしたのを羞恥に耐えながら2人からの尋問を受けていた。
「フィオナ様…実はされるより、する方がお好きな方なんですね…驚きました…」
イオンが手で口を抑えて左下を見ている。
フィオナはその行動が妙に居た堪れなくなり顔をもっと俯せる。
そんなフィオナを見て陛下が何やら言い辛そうに言葉を発した。
「フィオナ…男いるのか?」
は、はぁぁぁぁぁぁ!?
フィオナは羞恥心とか一先ず置いといて陛下の言った言葉に酷く顔を歪めた。
男なんて居るわけないではないか!嫌味か‼
陛下に少し心の中で舌打ちをして、だが、どうしてそんな事を聞くのかと首を傾げる。
「はぁ、どうしてそんな事を聞くんですか?」
今度は陛下だけではなく、イオンまでもが言い辛そうに違う方を見ている。気になるではないか…
フィオナの眼差しに気付いたのか、途切れ途切れに話してくれた。
「いゃ…何というか…なぁ?」
「はい…何というか、酔ってる時のフィオナ様は…」
「乱れが激しいというかだな…エロくなってしまうというか…」
フィオナはキスをしてしまった事だと思い赤面して白く細長い指で顔を隠す。
「そ、それは本当に申し訳ありませんでした…私のキスなんて…へ、下手っぴなのに、不愉快な思いをさせてしまって…」
フィオナがズーンっと床に沈んでいたので男2人が同じように手で口を隠して赤みがかった頬を指で隠そうとした姿をフィオナは知る由も無い。
「……ない」
「はい?」
陛下が小さく呟いたように言うので聞き取れなかった。
「だ・か・ら!別に不愉快ではないと言ったんだ」
「そうですよ、フィオナ様。ていうか…上手すぎでした…」
イオンが赤面して言うのでこっちが恥ずかしくなる。…上手いって何がだろう…………………
「!!!!」
キスか!!
フィオナは漸く2人の言った事を理解し、顔に熱が上がってくる。
「ハハハハ…そ、ソンナバカな…」
フィオナは壊れた。
キスなんて自分から初めてなのにしかも酔ってしたキスなのに、う、上手いだと!?
「だから、経験があるのではないかと思ってだな…」
「どうなんですか?」
2人して前のめりにグイグイと言ってくるのでフィオナは焦った。
「い、いないに決まってるじゃないですか!」
フィオナは最早泣きそうな声で、顔で、叫んだ。だが、そんな叫びも虚しく散り。
「では、そんなキスを何処で学んだんだ?」
あり得ないと言う顔をして問うてくる陛下にどんな尋問よりも恐ろしいと感じたのは言うまでもない。
でも、なんだか…懐かしかったような…
少し思考が別の方に飛んでいたが2人は逃がしてくれないらしい。
「おい?キスをしてる時は無意識とか言うなよ?」
「そんなことを言われましても…無意識の他、有りません…です。」
ダラダラと流れている冷や汗をイオンが全て吹き飛ぶような事を言った。
「もう一回、お酒を飲ましてみたらいいんじゃないですか?キスのやり方とか分かるかもしれないですし。」
おい、イオン!
キラキラとした目つきで提案しない!そして陛下は『ほぅ』と感心しない!
「いや、嫌ですからね?どうして同じ羞恥を繰り返さなくちゃならないんですか!それに迷惑も多いに掛けてしまったみたいですし、ダメですよ、ダメダメ。
え?お酒を飲んで良い年齢だから大丈夫?
な訳ないでしょ!
ちょっと、その陛下の手に持ってる物は何ですか、や、やめてーーーゴクッ」
必死に抵抗するも男2人に叶う筈がなく…え?魔法はって?手と口を抑えられてたんだよ…嫌な図でしたよ?
でも、口の中に
あの美味しく甘い香りが広がってきたところで、アレ?
世界がぐーるぐーる…
「…ど、どうだ?」
「どうなんでしょう…」
目の前に男2人…ぼゃ~とした視界で認識された陛下とイオン。
大きく腕を広げてイオンよりも近くにいた陛下を包み込む。
下からジャンプで包み込んだので結構な力が陛下に降り注いだ。案の定、陛下は後ろに倒れた。
「嫌がる女性に対して無理やり飲ませるなんて最低ですよ!なので、このフィオナ様がお仕置きして差し上げます。」
フィオナの白く細長い人差し指が陛下の唇をちょんと押し、自分の唇にそれを翳す。
翳す際に艶やかな笑みを見せるものだから陛下は一瞬フィオナに見惚れてしまった。
陛下の喉がゴクッと音がしたと同時に苦い何かと生温かい湿った何かが口内に入ってきた。
「!?」
「プハッ、フィオナ様のお仕置きはどうかな?激苦ジュースです~んー…私まで口の中が苦い…甘味舐めるー」
ガサガサと包みを開いて甘味を頬張る。
「甘~い~なぁにジーク?いるのー?では、あげましょおー」
そう言ったフィオナがジークに口移しで甘味を渡すのは当たり前だった。
ジークの口の中に甘い欠片が渡ってきた。
とろんとしたフィオナの瞳につられ、ジークはフィオナの唇を貪るように奪う…しかし、それを黙って見る筈もないイオンが止めようと一歩前に出ると怒りが込もったような声が聞こえた。
「こらージークー!勝手に私、フィオナ様にキスをするんではない!また、お仕置きをしてほしいのか。」
フィオナがジークの胸倉を掴み右足でジークの腹を抑えていた。
なんとも奇怪な後景だ…
ジークよりも遥かに小さいフィオナに足で抑えられ上から…フィオナの口からお仕置きと言う言葉を艶めかしく言われてるこの国の王は絶対に気持ち悪い印象になるだろう。
イオンはフィオナの首根っこを掴み持ち上げる。
「さて、フィオナ様、どんなキスのやり方をしたんですか?」
我が姫を持ち上げるには荒っぽいが今はこれが1番気になるのだ。
「いーやーーーー!
何するのよーイオンー離しなさい!!」
イオンに首根っこを掴まれ足をバタつかせる。
「……………。」
「 ? 静かになったな………………っ!?」
ふわっとイオンの身体が宙に浮き咄嗟にイオンはフィオナを離す。
「イオン…いつからそんな悪い子になったの?このフィオナ様にお仕置きして欲しいのかしら?」
フィオナを包み込む紫のオーラが漂っている。
冷たい声とは裏腹に口元が笑っている。
フィオナの白く細長い指がイオンの頬をツーッと滑らせ顎を優しく掴む。
このお方は…自分の力を知ってるにも関わらず、しかもこの状態で。
あぁ、もう。絶対このお方には敵わない…。
フィオナがお仕置きと称してイオンの顎を持ちながら濃厚なキスを30分ほど続けたのは言うまでもない。
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