主
おかしい…
フィオナは首を傾げながらベッドの上で胡座をかいて目の前にある物に視線を向けた。
何故あの時、真の力を出していなかったのか…
フィオナの頭の中はその疑問でいっぱいだった。
フィオナが示している“ある物”とは、イオンとの手合わせで使った 双剣 の事だ。
普段なら最初の攻撃でイオンを倒せたはず、イオンの早さなら、遊に出来た事。
それが何故…
「真の主でも見つけたんじゃないのか?ご主人」
カイがフィオナの肩に乗って言ったすぐにドアノブが吹っ飛び、血の気がないテルが勢いよく部屋に入ってきた。
「き、きゃーーーーーーーーーーーーーーーー」
もの凄い奇声が城中に響き渡っただろう。
フィオナが人差し指で耳を塞いでいると、もはや生気がないと言えるテルがゆらりゆらりと近付いてきた。
ある意味怖い…
「フィオナ様!!!何なんですかっっその、格好はぁぁぁぁぁぁ!!!」
テルの泣きながらの大迫力に少々押されながらその顔に驚いた。
フィオナがテルに言い訳としようとテルの前に出ると後ろ、詳しくはベッドの上に置いてあるはずの双剣の片割れ…『夜桜』が黄色の光を醸し出しながらベッドの上に浮かんでいたのだ。
フィオナは目の前の光景に唖然した。
これは…テルがこの剣の主だと言うのか?
"名のある双剣が主を選ぶ刻輝く光を身に纏う"
あの森に伝わる理だ。フィオナは不敵に笑っていたかもしれない。
いや、これを笑えないで言えるのだろうか…
名のある双剣が人間を主にするなど…
「この前も見て思いましたけど…綺麗な剣ですよね…」
テルが感心したような言い方でポツリと呟いた。
「欲しい?」
フィオナはニヤッとした笑顔をテルに向けて言葉を投げかけた。
「え?えぇぇえぇえ?そ、そんな勿体無いです!私めが使うような代物ではありません!」
テルは慌てたように手と首を振りながら断りの言葉を並べて言った。
「でも、この剣は貴方を主と決めてるみたいよ?」
片肘をついてテルに言うとテルの顔が綻びた。
「貰っても…宜しいんですか?」
少し弱々しく消えそうな声でフィオナに問うたテルは何時もの元気で無敵さが感じられず、宝物を見つけた子供のような可愛らしい顔をしていた。
フィオナがテルに夜桜を差し出すとテルは右手でしっかりと持ち、真っ直ぐに前に腕を伸ばして夜桜という独特の存在感に惚れ惚れしていた。
フィオナが微笑ましく見ていると、テルの表情が急に硬くなった。いや、言葉が違うか、硬くなったというよりも正しく剣に向き直っている。
なんとも向き直っている時間は緊迫しているのだ。
凛としていて鋭い瞳を夜桜に向けている。
それは、愛しの桜を眺めているテルの表情ではなかった。今、明らかに主従関係が出来上がっていた。
そういえば、忘れていたがテルって女騎士でした。
多少なく、剣には知識があるはず。それは分かっている。しかし、本来のテルの姿はこんなに力強く圧倒させるものがあったのか。
私は初めて知った。
これは、夜桜が主に選ぶ訳だ。
夜桜に負けていないような存在感がテルを包んでいた。
もう一つの双剣の片割れ『暁月』は誰の手に渡るのでしょうか(=^ェ^=)




