フィオナの提案
フィオナは陛下の手を握った。あの技を遂行するために…
下からの目線で涙を溜めてジークを見る…上目遣いをする。
「ジーク…イオンは団長なのでしょ?手合わせしてみたい…だ、ダメ?」
少しはにかんだが、これぞ、テルから教えられた。秘技…上目遣いでお・ね・が・い攻撃!
何故か涙の溜め方とか、角度とか、アングルとか仕草とか声の高さとかをすーっごく叩き込まれたのがこの成果!
なるほど…こうゆう時に使うのか。
ジークは頬を染まらせ、あぁ、フィオナが言うなら…と了承してくれた。
どさくさに紛れてキスをしようとしてくるが両手でガードした。影ながらテルがグッチョブをしてくれている。多分、上目遣い攻撃とキス阻止を華麗に成し遂げたからだろう。
うん。テル…今度から真面目にその、女の魅力向上授業を受けるよ…
フィオナは静かに頷いた。
軽く腕や肩を回して、足を伸ばして息を整える。
イオンと勝負をするので名のある双剣『夜桜と暁月』を使うことにする。代々昔からあの森の奥深くの木に隠されていた双剣、『夜桜』…一目見れば漆黒の夜に舞う桜のような強く儚げな印象を持つ。それに比べて『暁月』は赤よりも濃い炎が渦巻いているみたいな力強く存在感を漂わせている。…ズシッとさっき持った双剣なんか比じゃないほど重たい。強い魔力が埋め込まれているみたいだ。フィオナは双剣に目を向けその魔力の大きさにゾクゾクした。
ゆっくりと、目線をあげる。イオンの瞳とかち合う。イオンの瞳は戦闘的で獣みたいな目をしていた。絶対に逃さない…と語っていた。こんな瞳はゾクゾクする。さすがは団長を任されているだけある。
「もちろん、魔法はありですよね?影の魔法騎士の団長さん?」
これは、とても楽しくなりそうだ。
「もちろんだ。」
イオンの口が少しばかり引き攣っていた。
私達は向かい合い、一言、言葉を並べる。
「少しは強くなりましたか?」
「フィオナ様が負けたら…キスのご褒美頂戴ね」
フィオナは薄く笑った。勝てるものならねと、言って。
始め!と言う合図とともに風の力を使って地を蹴り一瞬でイオンの前に行く。
先程と早さが全然違うフィオナを見て魔法騎士達も息を呑む。
夜桜と暁月を横から力強く振るいイオンの首を両方から狙う。
だが、流石は団長を務めているだけはある。フィオナのこの早さについて来れたのだ。フィオナが双剣を振るうと同時に高く飛び、しかも、イオンの右足が横から迫ってきた。フィオナは寸前で気付いたが、イオンの足の方が早く、手加減のない蹴りがフィオナを直撃した。フィオナは横に飛ぶが、空中で態勢を立て直す。降りた時に地面に膝と手をなんとも、鈍い音がしながら降りたので大きく擦りむいた。
鈍い痛みがしたが真っ直ぐにイオンを見る。周りの魔法騎士達がまたざわざわしだした。
「なるほど。少しは強くなったようですね?では、魔法の方はどうでしょうか…」
フィオナは魔法を使った。火龍、風龍、翠龍、雷龍、土龍、と、五大龍を一瞬に現したのだ。
この五大龍の威力は凄い。ズーンと重たくデカく何より魔力が凄まじいのだ。
そんな五大龍を出した瞬間場は静まる。魔法騎士の中には気絶する輩もいた。誰かの喉がごくっと鳴る。
そんな恐ろしい五大龍に囲まれながらイオンは負けじと高度な魔法で攻撃をしているが、何分、フィオナの方が魔力が遥かに大きいため、最後には魔力が切れて冷たい土の上に倒れた。イオンは肩で息をしている。立ち上がる気力も体力も残っていないようだ。周りにいた魔法騎士達は口をあんぐりと開け動揺していた。それもそうだろう、この団で1番強い団長までもが娘相手に負けたのだから。
「楽しかったよ。イオン。また手合わせ頼むな」
フィオナはイオンを後に片手を軽く上げプラプラしながら銀髪を靡かせながら艶やかな笑みで陛下の所…ではなく、テルの方に駆けて行ったのだった。あの時の陛下の顔は絶対に忘れられないと思う。だって、顎が外れてるんじゃいかってぐらい口が開いてそこから白い魂がでてきた。これは、笑いを耐えるの頑張った。
イオンと本当に久々に闘ってみたけど、
魔法では勝てるが体術では、危なかったかもしれないな。
これでも、イオンが強くなっている事を感じながら今度は体術で勝負してみようと心で決意したのだった。
この時のフィオナの名はもはや、城中に知られていた。
下働きから大貴族にまでその名を知らないものはいないだろう。
気高く美しい銀髪と顔立ちの持ち主…最強の高嶺の花…フィオナ様…と…




