マジですか?
今日は王宮内を陛下が案内してくれるらしい。
とてつもなく楽しみで仕方がない。フィオナは大抵は王宮内を歩き回ってもいいのだが、何故か自分が何処にいるのか分からなくなってしまうのだ。
ほら、王宮って壁の色とか同じだし、城の形も似ているから全然分からないんだよな…でも、すぐにテルが探し出してくれるから何時も歩き回っている。
ん?世にゆう方向音痴だって?違う違う。入り組んでるんだって。この城。
おっと、話がずれてしまった。
と、ゆうわけで楽しみなのだ。
今日の服装はテルに任せている。主に白が基調のスラリとしたドレスに黒のレースが少し見える感じのシンプルだけど、レースがちょっとしたアクセントになっていて可愛らしくも見えるドレスだ。
テルのセンスは最高だと常々思うよ…うん。
最初はどうやら、根本的に貴族の人達が好きそうなのを見せてくれたらしい。ヒラヒラとか、布の面積が少ないやつ。
今では毎日テルに任せている。
テルがフィオナの髪を解いてくれていると、フィオナの部屋をノックする音が聞こえた。
丁度、髪もとき終わったみたいで、フィオナの髪はサラサラストレートになっている。
恐らく、今日はこの髪型なのだろう。
あのノック音はやはり陛下だった。
陛下が魔女相手に自ら出迎えるとか、この世にあっただろうか…いや、ないだろう。
「おはようフィオナ。準備は出来たか?」
扉に片手をついて聞いてくる。
「おはようございます。準備出来てるのですぐに行きましょう!」
フィオナは目を輝かせながらジークの手を引っ張る。
この王宮案内はテルも一緒だ。主に騎士として側にいる。
なんだか…美形に囲まれている感じ。フィオナの立ち位置は、ジークとテルに挟まれている状態なのだ。落ち着かない…
いや、テル、守る相手が違くないか?
「違くないですよ、フィオナ様。」
驚きで体が震えた。テルは超能力者か?
フィオナが新たにテルの七不思議に追加をしていると、横から声が聞こえた。
「フィオナ、何処に行きたいんだ?」
ジークが少し目線を下げて聞いてくる。
フィオナはもう決めていた。いっつも行きたくても、辿り着けないか、関係者以外立ち入り禁止となっているあの場所にもう一度行きたいと…
「鍛錬場に行きたい!」
フィオナは少し飛び上がって行きたい所を言った。
ジークは少し考えていたがそうだな、と、
「今日は魔法騎士が鍛錬している日だな。よし、ついでにフィオナと手合わせをやらせてやるか。」
「いーんですか?」
ジークは、あぁ、と言って鍛錬場に連れて行ってくれた。
*****
「今日は、フィオナと手合わせをしてもらう。」
魔法騎士の熱気が溜まっている鍛錬場に響くジークの声。
魔法騎士達はフィオナを連れてきた陛下を見て目を見開いて口を開けている。余程驚いた以外にこの顔は出来ないだろう。でも、と正気に戻った魔法騎士達がいくら陛下の命令だとしても、フィオナみたいな女にかまっている暇はないと反感がやってくる。
それを聞いていた陛下がフィオナの肩を掴んでにやりと悪い笑みをした。
「甘く見てると死ぬぞ。本気でかかっても叶う相手ではない。」
陛下の言葉を聞いた魔法騎士達が静まり返る。だが、まだ若い魔法騎士の1人が手合わせを申し込んできた。その魔法騎士は近くの魔法騎士達に軽く剣を交じあわせてくるなどと、余裕の表情で挑んできた。
フィオナはとにかく手合わせ出来るのが嬉しくて、フィオナを甘く見ている魔法騎士の言動を聞いてはいなかった。
髪を一つに括り戦闘服に着替えた。
実は得意な戦闘の一つに入る双剣…一つの剣の重さ15kgの剣を一つず右手と左手に持ち、構える。
「魔法は使用可能ですか?」
「君、魔法使えるの?」
と、ちょっと馬鹿にしたような返答が返ってきた。フィオナはそれに答える。
「ええ、少々は…」
少々と言ったのは少し若い魔法騎士の言い方がムカついたからだ。
「ふーん…まぁ、手加減してあげるから安心していいよ」
ピキ。
フィオナはジークの方を見た。目で、手加減しませんよ?と少し怒りが滲み出ている笑顔を見せる。
ジークは笑いを堪えながらどーぞ。お好きなように…と返ってきた。
「では、」
開始の合図とともに、天高く上に舞い飛び、双剣を魔法騎士に向かって振り落とす。なんとも重い音がして、どうやら間一髪で剣で庇ったらしい。周りがざわめく。
しかし、そんな事はお構いなしに魔法騎士は剣でフィオナの双剣を庇っているのでフィオナは体を地に下ろす事なくその体制のまま、足を高く上げくるりと回り魔法騎士の顔面を狙った。
そこで魔法騎士が魔法を使い始めた。
フィオナの蹴りは魔法騎士の魔法…バリヤーで防がれた。
フィオナは一旦、態勢を整えて火の龍を出した。
フィオナが龍を出した途端、魔法騎士が倒れた。いや、正しくは気絶したのだ。
フィオナが『えー』という顔で気絶した魔法騎士を見ていると、ジークが笑い出した。
「手加減しないんじゃなかったのか?何時もより格段に遅かったが…ッックックック」
バレバレだというジークの顔にフィオナは悪い笑みに近い笑顔を見せた。
「では、今度はジークが相手をしてくれます?」
「おいおい、王である俺に恥をかかすつもりか?手合わせは2人のときにな?」
と、ジークが言った途端に周りがざわめきたつ。
『陛下が負けるのか?』
『嘘だろ?』
と言う声が広がる。
と、ここに第三者の声が響いた。
「陛下はフィオナ様に敵わないもんねー」
そこにいたのは騎士服を着ているイオンだった。
イオンの登場に周りの魔法騎士達が声を上げ始めた。
「おはようございます。フィオナ様。ってうゎっっ!これ陛下がやったの?」
「違う。フィオナだ」
「ちょっと、フィオナ様。殺してないでしょうね…?」
「失礼だな、加減ぐらい分かっている。」
「ちょっと、この人を治療室に運んどいてくれる?」
「は、はい!」
近くにいた魔法騎士達が一斉に動いた。
「イオンって偉いんだな…」
ポツリと呟いたそれはイオンと陛下に聞こえていたらしくて目を見開いている。
「フィオナ…知らなかったのか?イオンはここ、黒の魔法騎士の団長を任せているんだぞ?」
フィオナは驚きを隠せなかった。こ、こんな奴が!?
「フィオナ様、声に出てるから…どう?惚れた?」
イオンはフィオナの腰を抱き寄せて顔を近づけて言った。どうやらあの時のが効いたのはあの時だけだったらしい。
ていうか、陛下のオーラが黒くなっているんで離して欲しいんですが…
「おい、イオン。てめー…我が妃に…」
間に合わなかった。陛下の手がイオンの肩を掴む。
さて、どう対処をしようか…
そこで、フィオナの頭の上に豆電球がピコんと浮かんだ。




