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陛下vs女騎士


「おっはよーございまーす!フィオナ様っっ」


勢い良く、白いシーツと一緒に高らかに天に上げられた私。フィオナ。ボフンッと体がベッドに落ちたと実感できるフカフカ感にもう一度眠気を誘われるが、声の主が二度寝を許さなかった。


「朝ですよー?起きてください」


み、耳元で言わないでほしい!

声の主はフィオナの耳元でワントーン低く囁くので、ぞわわぁ~っと、身体に電流が走ったような感覚に陥り、重たい瞼を開けた。


「オハヨウ…ゴザイマス」


まだ少し視界が曇っていて脳が働かない。

大きくアクビをしてカイと一緒に伸びをする。

もう、日々の日課と化している。と、言ってもまだ一週間だが…

改めて朝の挨拶をする。人との関係は一に挨拶、二に挨拶だと自分なりに決めていることだ。


「おはようございます。テル」


にっこりと、微笑みいつものようにテルに力一杯抱きつかれた。



キュート!エレガント!ナイス!ラブ!セクシー!と、呪文のように叫ぶテルにも、もう慣れた。

…少なからず、テルには好意を持ってもらっているみたいで良かった。

でも今、私の肩と腰がギシギシいってるのに、テル!気付いて!私、窒息死してしまう!

危うく死んでしまいそうな勢いだったけど寸前でテルが気付いてくれたのでまぁ、良かった。


川の向こうでひぃお婆様がおいでおいでしてたから背中に冷や汗を感じたわ…。


フィオナが一息つくと、後ろから何やら不穏な空気がしてきた。


「テル、貴様…朝から我が妃に何をしているんだ?」


不穏な気配と声の主は陛下(ジーク)だった。

陛下の声に怯む事なく真っ直ぐに立って、完璧な笑顔を見せているテルが口を動かした。


「何って、朝の抱擁ですよ?女騎士なのですからこの腕で包むように守らねば…それが何か?‘‘ちっぽけな桜の木’’と言った陛下様?陛下様はお忙しい身の上なのですからさっさと、業務に戻られたら如何でしょう?それと、フィオナ様は陛下様の妃ではありません」


テルの笑顔は崩れていない。むしろ、黒さが増していると言っていいだろう。フィオナは聞き逃さなかった。テルの言葉の裏には、"さっさと、私とフィオナ様の前から消えろ。ひとでなし"と"フィオナ様は私のだ"と言っているのを…


少なくともフィオナには聞こえた。

テルが発した言葉に片眉をピクッと上げ陛下の背中に黒い影がゆらゆら揺れ始めた。


「あら?陛下さ・ま。何をお怒りになられておられるのですか?フィオナ様ー私が愛した桜の魂は何処にいったのでしょう?」


テルは‘様’の部分を強調して言った。テルは桜の木の事を本当に愛していたのでこの件はジークが悪いだろう。この時のテルの黒い部分は好きだ。なので、テルの悪ノリに付き合う事にした。


「痛みが分かるわ…テル…可哀想に。」


フィオナはテルに極上の微笑みをして、テルはその言葉を待っていたかのように、フィオナの胸に抱きついてきた。嘘泣きを加えて。


「陛下、これの何が悪いのですか?」


フィオナは至って真面目な顔をして陛下を見た。

陛下はプルプルと手を震わせて、カイに肩をぽんっと叩かれている。


さすがに可哀想に思えたのか、テルが優しい声色で言う。


「では、お遊びはこの辺にして、朝食にしましょうか…」


陛下はテルが言った"お遊び"という言葉にぐさっと胸を打たれたような演技をしている。

やっぱり、ここの人間は面白い…



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