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第1回〜アキラさんパーティー体力テスト大会


 スゥーーーーッ……。


 ピュ〜フロロ〜〜……。


 ピッ! ピピーーーーーー!!


「第1回〜アキラさんパーティー体力テスト大会〜! 始めま〜す!」


「ワー! ワー! パフパフー!」


 フレデリカの掛け声と同時に、ミューズと召喚されたらしき精霊たちがメガホンを持って騒ぎ出す。


 その横では、魔王がなぜかジャージ姿で気合い十分だった。


「よっしゃあああ!!」


 その前に体育座りで並ぶ三人。リンとジーコは完全にポカンとしている。


 だが、アキラだけが異様に姿勢がいい。


「本日は!! よろすぅっくお願いしまぁす!!」


 元気よく叫ぶ。


「……うわ」

「……あー」


 二人は同時に察した。


 こいつ、アレだ。

 仕事とか行事とか、クソ真面目にやるタイプだ。


 コホン、とフレデリカが咳払いをする。


「えぇ〜今日は体力を見るために、いくつかテストしま〜す。なお、レイちゃんとツクモちゃんはお休みです〜」


「はい!」


「うるせぇ」

「うるさいニャ」


 今度は普通に言われた。


「ではまず〜握力から〜」


 結果。


「えっ……」


 リンが固まる。


「いや待って。これマジ?」


 ジーコも引いていた。


 アキラの記録は、かなり低い。


「小学生……?」

「小学生でももうちょいあるニャ」


 笑えなかった。


 次は、20mシャトルラン。


 ピッ、ピッ、ピッ――。


「はっ……はっ……!」


 アキラは開始早々で限界だった。


「いや早すぎでしょ!?」


 一方、リンは平均より少し上。息を切らしながらも、なんとか粘っている。


 そしてジーコは。


「……まだやる?」


 余裕だった。


 もはやテストではない。


 最後は50m走。


 合図と同時に、三人が走る。


 アキラは遅い。

 リンは普通に速い。

 そしてジーコは――一瞬でゴールしていた。


「は?」

「今、何したニャ?」


「んー? 普通に走っただけだけど☆」


 軽い。

 いろんな意味で軽い。


 少し離れた場所では、黄金の鎧がじっとその様子を見ていた。


「ア……あの、皇帝様?」


 賢者が、少し慌てたように声をかける。


「私たち、そろそろ戻らないといけませんが……」


 皇帝は動かない。


 ただ無言で、アキラたち?を見ている。


「……わかりました。もう少し滞在しましょう。連絡は入れておきます」


 賢者は小さくため息をついた。


 一方その頃。


 ババ様は、ツクモとレイから事情を聞いていた。


「ふむ。大体の事情は分かったよ」


 穏やかな声だった。


「テストが終わったら、皆を集めて話そうか。それに……あなた達も、なかなか面白いね」


 にこりと笑う。


「これからが楽しみだよ」


 その瞬間。


 レイは、死んでから初めて。

 ツクモは、生まれて初めて。


 恐怖を感じた。


 太陽が一番高く昇った頃、テストは終了した。


 結果は


 アキラ――壊滅的。

 リン――平均よりやや上。

 ジーコ――規格外。


「ほんっじつは、ありっがとございやしたー!!」


 肩で息をしながら、アキラが叫ぶ。


「……すごいね」

「ここまで来ると逆に尊敬するニャ」


(運動音痴でクソ真面目タイプだ)


(漫画とかの委員長ニャ)


 二人は心の中で同意した。



「お疲れさん」


 魔王が手を叩く。


「じゃあ昼飯にすっか。多分、婆さんの方も色々分かってきた頃だろうしな」


 そして、にっと笑う。


「飯食ったら、今後についてのミーティングだ」


 その一言で。


 体力テストという名の騒ぎは、ひとまず幕を閉じた。





 昼食を終え、アキラたちはツクモの居間でくつろいでいた。木の温もりを感じる空間は、異世界とは思えないほど落ち着いている。


『マスター。魔王様、ババ様がいらっしゃいました』


 ツクモの声に、全員が顔を上げる。


「おう、集まってるな」


 気楽な調子で魔王が入ってきて、その後ろからババ様もゆっくりと姿を見せた。


「基礎能力は見せてもらった。次は魔力と魔法についてだ」


 そう言って魔王は腕を組む。


「アキラ。お前らの世界に“曜日”ってのはあるか」


「ありますよ。七日で一週間のやつですよね」


「そうだ。この世界も同じだ。そして――その曜日がそのまま魔法の属性になっている。七曜属性ってやつだ」


日 特殊 

月 特殊 

火 火炎 爆発

水 水氷 

木 植物回復 

金 金属化 雷 

土 肉体強化 



「人にはな、大小はあれど魔力がある。自分の属性に合った魔法は習得しやすいし威力も出る。ただし違う属性でも使えないわけじゃない」


 魔王はそう説明しながらババ様の方を見る。


「このばあさんは、その属性を見抜ける数少ない実力者だ」


「あと一つ忠告だ。自分の属性は基本他人に教えるな。

強い奴ほど本命は隠す……まぁ経験談だ」


 軽く笑うが、その言葉には重みがあった。


「さて、ばあさん。どうだ?」


 ババ様は小さく頷き、一人ずつ視線を向けていく。


「まずアキラ。あんたは火だね。

火は扱いが難しく、自分にもダメージが返ることがある。普通は武器や道具に付与して使うが……」


「あんたには必要ないかもしれないね」


 意味が分からずアキラは首をかしげる。



「次はジーコ。土だね。

元々のフィジカルが高いから、肉体強化との相性がいい。あんたにぴったりだ」


「へぇ〜いいじゃん☆」


 軽く笑うジーコ。


「レイ。あんたは元々不思議な力を持っているね。前の世界の影響かもしれない。魔力もある。」


「属性は月……希少だよ」


 レイは静かに視線を落とした。


「ツクモ。あんたはかなり特別だ。基本は金。

ただ、中に複数の属性の気配がある。それぞれは弱いが数が多い。そして……あんた自身が魔宝具に匹敵するかもしれない」


「魔宝具?」


 アキラが反応するが、「それはまた今度だね」とあっさり遮られた。


 その間もリンは尻尾を揺らしながら、自分の番を今か今かと待っている。


「……以上だね」


 一瞬、空気が止まった。


「え? 私まだニャ!?」


「ババ様、私!私ニャ!!」


 ババ様は露骨に目を逸らす。


「……い……」


「え? 何ニャ?」


「……ない」


 静かな宣告だった。


「リン。あんたはこの世界でもかなり珍しい……」




「魔力ゼロだ。」




「残念だが魔法は使えない」


 


 期待に揺れていた耳が、ゆっくりと垂れる。尻尾も力なくしなだれる。


「ただ、その分――」


 続きは届かなかった。


「あんまりニャーーー!!」


 リンは泣きながらその場を飛び出していった。

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