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ロクでもねえ集まり

――ああ。


 結局、死んだか。


 


 暗い。


 音も、感覚もない。


 なのに、意識だけは妙にはっきりしていた。


 


「……まぁ、いいか」


 ぽつりと呟く。


「最後に、あの子助けられたなら……上出来だろ」


 自分に言い聞かせる。


 

 昔から、上手くいかないことばっかりだった。


 勉強も、運動も、人並み以下。


 バイトも頑張ってるつもりなのに、褒められるより怒られる方が多い。


 鍵をなくす。財布をなくす。同じミスを何度もやる。


 


「……ほんと、バカだよな俺」


 苦笑する。


 でも。




「俺、バカだからさ」って。


 俯いて言うのは違う。


 

「俺、バカだけどさ」


 そう、胸を張って言いたかった。


 誰かの役に立てる人間でいたいって。



「……だったら」


 少し息を吐く。


「まぁ……悪くねえ終わり方、か」


 


 ほんの少しだけ、笑う。


 ――ただ。


 


「……あー」


 視線を上げる。


「ちょっとだけ、心残りあるな」


 


 浮かぶのは、あいつらの顔。


 


 誰にも見えなくて、忘れられてた幽霊。


 人に嫌われて、捨てられてきた家。


 いつもボロボロで、片耳ちぎれてた野良猫。


 見つかれば、問答無用で殺されるゴキブリ。


 


「……なんだよあれ」


 思わず、笑う。


「ロクでもねえ集まりだな」


 


 でも。


 


「……似たもん同士、だったよな」


 


 だからかもしれない。


 あの場所は、妙に居心地がよかった。


 


 最初の会話はめちゃくちゃで。


 何が起きてるかも分からなくて。


 ツッコミも追いつかなかったけど。


「……楽しかったんだよな」



 あいつらの声が。


 笑い方が。


 くだらないやり取りが。


 

 気づけば――


 

 少しだけ、救われてた。


「……ああ」


 上手くいかなくても。


 境遇が悪くても。


 周りから敵意向けられてても。



「……それでも」


 生きていこうって、思えたんだよな。


 みんなで、決めたから。


 ここで、生きるって。


「……家族、みたいなもんだったしな」


 ぽつりとこぼす。



 あいつらと。


 飯食って。


 くだらないことで笑って。


 どうでもいいことで揉めて。



「……もうちょい、一緒にいたかったな」


 静かに、そう思った。


 ――そのとき。


 音がした。


 どこからか。


 微かに。


 


 ざらついたような、不快な音。



「……なんだ?」


 暗闇が、わずかに歪む。


 感覚が――戻ってくる。


 

 痛み。


 熱。


 重さ。



「……は?」


 意識が、引き戻される。


 まるで。



 終わったはずの体に。

 無理やり、繋ぎ直されるみたいに。


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