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死なない俺の使い方  作者: 鬼瓦源次郎
第二章 最強最悪な狐の子?

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22/23

管理職の憂鬱

 冒険者組合で働くバンは、今日も大量の書類に追われていた。


 元々は優秀な男だった。


 仕事も早い。

 面倒見もいい。

 部下からの信頼も厚い。


 順風満帆。



 ケチが付き始めたのは半年前。


 新設ギルドの担当になってからだ。



「バンさん」


「また新しい報告書です」



 部下が新しい束を置く。


 嫌な予感しかしない。


 だが仕事である以上、見ない訳にもいかなかった。



 薄目で書類を見る。




「また九十九の奴らじゃねーか!!!」


 

 組合中に怒号が響いた。


 半年前に登録された新ギルド。




 九十九キュウジュウキュウ




 問題は、所属してる連中が全員イカれている事だった。




 いつの間にか増えている違法建築。



 犯罪集団の立てこもり事件では、人質救助までは良かった。


 だが最終的に建物ごと爆破。


 火災発生。


 全焼。



 災害モンスター討伐では、


「生態系保護の為、半数だけ駆除してください」


 と説明した結果。



 全滅。



「絶滅させろとは言ってねぇだろ!!」



 その時も叫んだ。



 他ギルドとの共同任務ではさらに酷い。


 異様な速度で動く褐色ギャル。


 加速に服が耐えきれず毎回破れる。


 全裸だが本人は気にせずそのまま戦闘続行。


 周囲からは大クレームだった。


「集中できませんでした」


「敵より危険です」


「どこ見ればいいんですか」



 知らねぇよ。



 そして一番ヤバいのがギルドホーム。


 苦情対応へ向かった職員達が、何故か全員怯えて帰ってくる。


「もう行きたくありません……」


「呪われます……」



 何があった。



 バンは机へ突っ伏した。


「はぁ……」


 深いため息。


 胃薬はもう相棒だった。


 ただ。


 問題ばかり起こすくせに、人的被害だけは絶対に出さない。


 犯罪をしてる訳でもない。


 むしろ話してみれば、根は善人だ。


 善人だから余計タチが悪い。


「もうちょっと……」


「もうちょっとだけでいいから……」


「上手くやってくれねぇかなぁ……」


 遠い目をするバン。


 だが彼はまだ知らない。


 自身の胃が、更なる限界へ到達する事を。



 *



「いっらしゃいやせーー!!」


 今日もアキラは元気だった。


 なお、職場はコンビニである。


 ――何故こうなったのか。


 数日前まで話は遡る。


 バンは嫌々ながらも、九十九のギルドホームへ向かっていた。


「行きたくねぇなぁ……」


「めんどくせぇなぁ……」


 だが文句を言っても目的地には到着してしまう。


 見上げた瞬間、バンは顔をしかめた。


「……なんかまたデカくなってねーか?」


 堂々と掲げられた『九十九』の看板。


 以前より明らかに建物が大きい。


 部屋数も増えている気がする。


 気のせいじゃない。


 多分。


 だが考えると胃が痛くなる。


 なので考えるのをやめた。


 呼び鈴を鳴らす。


 すると、静かに扉が開いた。


「お待ちしておりました」


 メイド長だった。


 相変わらず怖い。


 バンはリビングへ通され、そのままソファへ座る。


「茶はいらねぇぞ」


「まず全員呼んできてくれ」


「あとメイド長」


 メイド長が静かに首を傾げる。


「……また家デカくなったか?」


「セクハラですよ」


「すみませんでした」


 反射的に謝った。


 今の時代、ハラスメントほど怖いものはない。


 そうこうしているうちに、アキラ達が集まってくる。


「バンさん!」


「久しぶりっす!」


「今日はどうしたんですか?」


「もしかして俺また何かやっちゃいま――」


 


「痛ぁぁぁぁぁッ!?」


 


 バンのアイアンクローが炸裂した。


 アキラの頭がギリギリ鳴る。


 周囲は「うわぁ……」という顔で見ていた。


「お・ま・え・ら・が!!」


「いつもやらかすから!!」


「俺が来てんだろうが!!」


 バンの怒号が響く。


「戦闘能力だけ無駄に高ぇんだから!」


「周りの被害にもっと気を配れ!!」


「はいぃぃ……」


 アキラが涙目で頷く。


「あと何だあの爆破!」


「建物ごと吹き飛ばしてんじゃねぇ!」


「あれは敵が悪いんです!」


「全部燃えてんだよ!!」


「結果的に解決したっス!」


「過程が最悪なんだよ!!」


 ジーコがケラケラ笑う。


 リンは目を逸らしていた。


「あとお前!」


 バンがジーコを指差す。


「はいはーい?」


「服を着ろ」


「着てるって〜」


「破れてんだよ!!」


「だって動くと破けるし〜」


「じゃあ丈夫なの着ろ!!」


「かわいくないじゃん」


「知らねぇよ!!」


 さらにバンの視線がリンへ向く。


「リン」


「ニャ?」


「街中で銃火器ぶっ放すな」


「必要だったニャ」


「必要でも駄目なんだよ!」


「あとロケットランチャーは何処から出した!」


「リュック」


「万能だな!!オイ!!」



 バンは深呼吸して気持ちを落ち着けると、持ってきた書類を机へ置いた。


「……とりあえず仕事紹介する」


「指示があるまで大人しくしとけ」


 そう言って書類を配る。


 三人が覗き込む。


 


「コンビニ?」


 


 全員同じ反応だった。


 


「そうだ」


「お前ら全員コンビニ勤務だ」


 


「えぇ〜!?」


 


 ジーコが露骨に嫌そうな声を出す。


「ウチもっとこう……冒険者っぽい仕事とかだと思ってたんだけど〜」


「お前らにまず必要なのは社会性だ」


 バンが真顔で言う。


「社会性……」


 アキラが遠い目をした。


「アキラ」


「はい!」


「燃えるな。爆発するな」


「はい!」


「リン」


「ニャ」


「銃火器ぶっ放すな」


「努力するニャ」


「絶対守れ」


「ニャーい……」


「ジーコ」


「はーい」


「脱ぐな」


「無茶言わないでよ〜」


「無茶じゃねぇ!!」



 胃が痛い。


 本格的に痛い。


 だがバンは諦めなかった。


「いいかお前ら」


「接客業はな、一般常識を学ぶ場所でもある」


「大声出すな」


「店燃やすな」


「客に武器向けるな」


「服を着ろ」


「最低限それだけ守れ」


「ハードル低くないっスか?」


「お前ら相手だと高ぇんだよ!!」


 アキラ達は顔を見合わせる。


 そして。


「……頑張るか!」


「やるニャ!」


「コンビニとか楽勝っしょ〜!」



 バンは面倒見が良かった。


 だからこそ、九十九の連中も黙って言う事を聞く。


 ……今のところは。

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