ボクとまおう
これで一章がひとまず終わります!
ここまで読んでいただいて
本当にありがとうございます!
太陽が一番高く昇った頃。
見送りの為、皆がツクモの前へ集まっていた。
ジン。
フレデリカ。
ババ様。
ミューズ。
リュシエル。
そして皇帝。
「皆さん! 一年間ありがとうございました!!」
アキラが叫ぶように頭を下げる。
「アキラ」
ジンが袋を放り投げた。
「うおっ」
「当面の金と、この世界の服が入ってる。餞別だ。持ってけ」
「……ありがとうございます!」
アキラは改めて深く頭を下げる。
「さて、じゃあ元気でな――」
そう言いかけた空気が。
全員、ふとツクモへ向いた事で止まった。
(……どう運ぶんだ?)
誰も口には出さない。
だが全員同じ事を思っていた。
(デカくね?)
(流石に無理では?)
(運ばないとダメかな〜?)
その時。
『移動形態へ移行します』
ツクモの声が響く。
『皆様、下がってください』
次の瞬間。
――ガガガガガガガガ!!!
轟音。
家全体が持ち上がる。
「……え?」
「うそ」
「あ」
「あ、足が生えたーーーー!!?」
全員が叫ぶ。
ツクモの下部から現れたのは。
巨大な八本の機械脚だった。
蜘蛛のように大地へ突き刺さり、家全体を支えている。
『言ったでしょう?』
『マスター達と共に生きたいと』
「かっけぇぇぇぇ!!」
「ロマンニャ!!」
「テンション上がるんだけど!?」
三人のテンションが爆発する。
「急いで乗り込めーー!!」
「出発だーーーー!!!」
「みんなありがとニャーー!!」
「落ち着いたらお土産持ってくるねー!!」
皆が手を振る。
『全員乗りましたね?』
『では、出発します』
ガション、ガションと音を鳴らしながら。
ツクモが歩き始めた。
*
「さて」
リュシエルが振り返る。
「私達も行きましょうか?」
フレデリカと皇帝へ声を掛けた。
ジンは少しだけ寂しそうにしながらも、フレデリカの頭を優しく撫でる。
「行ってこい」
「ありがと、お父さん!」
「お父さんも、おばあちゃんも、ずっと大好きだよ!」
フレデリカが満面の笑みで抱きつく。
その空気を。
「――そ・の・前・に〜?」
リュシエルが悪い顔でぶち壊した。
「昨日の試練で、“皇帝様が勝ったら何でも言う事聞いてやるよ〜”とか言ってませんでした〜???」
「あ」
ジンの顔に“思い出した”と書いてある。
「確かに言ったな……」
ジンは皇帝を見る。
「でも皇帝の事だから、珍しい食材とか、魔国産の幻の酒でも要求してくると思ってたんだよ」
「宴会でも兜外さねぇし、飯も食わねぇし……」
「忘れてるもんだと」
「確かに言ったわ〜」
ミューズがニヤニヤしている。
「で、皇帝どうする?」
「今なら何でも言う事聞いてやるぞ〜?」
ジンが豪快に笑う。
だが。
皇帝の様子がおかしい。
モジモジしている。
「……?」
リュシエルが肘でツンツンする。
「ホラホラ」
急かされる皇帝。
その様子を見て。
ババ様。
フレデリカ。
ミューズ。
全員が笑いを堪えていた。
そして。
――バチィ!!
「……ん?」
――プシューーーッ!!
「プシュー?」
ジンが首を傾げる。
同時に。
黄金の鎧が、音を立てて分離していった。
まるで強化スーツのように。
可動部が開き、装甲が外れていく。
そして中から現れたのは。
小柄な女性だった。
「ふぅ……」
最後の兜を外す。
長い髪がさらりと落ちる。
「……お、お前は」
「アリア……か!?」
「え、何で???」
「ジ〜ン〜♡」
「本当、貴方って最後まで気づかないんだから!」
「今日こそ観念するっスよ!」
そこにいたのは。
皇帝リオン・エルデンではない。
皇帝次女。
アリアドネ・エルデンだった。
呆然とするジン。
空いた口が塞がらない。
「お父さんだけだよ?」
「何年も前から来てくれてたのに気づかなかったの」
「普通わかるわよねぇ?」
「まぁ私はアリア様推しなので楽しめましたが〜」
「昔から鈍感だからモテないんだよ」
周囲から罵詈雑言が飛ぶ。
現役魔王。
そして。
「――ところで〜?」
アリアドネが笑う。
ジンが恐る恐る振り向く。
「何でも言う事聞いてくれるんスよね?」
「じゃ、じゃあ……」
顔を真っ赤にしながら。
「ボクと……」
「結婚してください!!!!」
ジン、硬直。
(あー……)
(そういや昔も部下になれとか言われたな……)
走馬灯みたいに思い出す。
いや、そんな場合じゃない。
「で、でもなアリア!」
「俺オッサンだぞ!?」
「もっと若くていい男いるって!」
「皇帝も反対するだろ!? 昔殺し合いしてた奴と娘が結婚とか!」
「お父さんには説得済みっス!」
「暴力で」
「早く孫の顔見たいって言ってたっス!」
「怖ぇよ!!」
「それに――」
「それに?」
アリアドネが笑顔で続ける。
「ジンが振り向いてくれないなら、ボク以外の女を皆殺しにするっス♡」
本気か冗談か分からない。
だが目が笑ってない。
ジンが助けを求めて周囲を見る。
「お父さんもそろそろいいんじゃない?」
「あの言葉は嘘だったのかしら〜?」
「あぁ〜推しの結婚まで見れるなんて幸せ〜♡」
「全くだからお前はモテな――」
「あぁもう!! わかった!!」
ジンが頭を掻きむしる。
「昔から好意があるのは分かってた!」
「それに、この数年間」
「俺の衝動に付き合ってくれてたのがアリアなら――」
「俺にとって必要な人だ」
アリアドネが息を呑む。
「アリア」
ジンが真っ直ぐ見る。
「俺はオッサンだし、お前の知らねぇ部分もいっぱいある」
「お前も、俺の知らねぇ部分がいっぱいある」
「上手くいく保証なんてねぇ」
「それでもいいのか?」
「――不束者ですが、よろしくお願いしまっス!!」
即答だった。
「うおおおおおお!!!」
歓声が上がる。
嬉しさのあまり。
アリアドネ、フレデリカ、リュシエルの三人が手を繋いでグルグル回り始めた。
「あー楽しいもの見れた〜」
ミューズが満足そうに呟く。
「これで私も旅立てるわ〜」
「お前も行くのか?」
「まぁ元々気ままな旅人だし?」
ミューズは巨大な鷹の精霊を召喚する。
飛び乗り、笑った。
「アディオス〜♡」
「全く最後まで読めねぇ奴だな」
ジンが苦笑する。
「……寂しくなるな〜」
「イテッ!?」
ババ様がジンの頭を小突いた。
「あんたも旅に出るんだよ」
「……え?」
ジンが固まる。
「皇族がいきなり嫁に来たら、ここも色々大変だろう?」
「あんたらも皇帝に挨拶行ったり、新婚旅行でもしてきな」
「あーマジかー……」
ジンは頭を抱える。
(まぁ……調べたい事も、探したい物もあったしな)
遠く地平線の向こう。
八本脚の家が、小さく歩いていく。
「なぁアキラ」
「ん?」
「旅って何するニャ?」
「……知らん」
静寂。
数秒後。
「知らねぇのかよ!!」
ツクモの上から大爆笑が響いた。
こうして。
アキラ達の本当の旅が始まった
一章完結です。
少しでも楽しんでもらえたなら嬉しいです!
本当にありがとうございました。
引き続き二章もよろしくお願いします。




