事故物件からのサプライズ
「ちくしょー!! 負けたーーーー!!」
三人の叫びが響く。
そこへフレデリカとリュシエルが駆け寄ってきた。
「みんなすごかったよ〜!」
「お疲れ様。あの皇帝様相手によくやったわ」
リンはその場に大の字で倒れ込み、アキラは再生したばかりの身体を押さえながら笑う。ジーコも汗だくのまま地面へ座り込んでいた。
一方。
「お疲れさん」
ジンは皇帝へ歩み寄り、軽く手を上げた。
皇帝は静かに剣を収める。
「さて!」
ジンが振り返る。
「とりあえずこれで修行は終わりだ! 今日は呑むぞー!」
「おぉーー!!」
その時。
「あ、そうだ〜」
フレデリカが思い出したように声を上げた。
「ババ様が、終わったらすぐ帰ってこいって〜。見せたいものがあるんだって〜」
三人は顔を見合わせる。
「見せたいもの?」
「なんだろニャ」
「サプライズ系?」
疲れているはずなのに、自然と足取りは軽かった。
そしてツクモへ戻る。
家の前には、ババ様が立っていた。
その隣にはレイ。
しかも。
普通に外へ出ている。
「……あれ?」
「レイちゃん外いるニャ」
「やっと外に出す事ができたよ」
ババ様が満足そうに頷く。
(引きこもりだったのかな……)
全員がなんとなくそう思った。
「ツクモ、聞こえるかい」
ババ様が静かに呼びかける。
「今、あんたの願いを叶える時だ」
「記憶達の願い」
「自分が生まれた意味」
「この世界で生きる意味」
「アキラ達と共に生きたい自分の願いを――今、見せなさい」
その瞬間。
ツクモ全体が光に包まれた。
――ゴゴゴゴゴゴゴ!!
轟音。
ただの古い平屋だった家が、外壁を剥がしながら変形していく。
縦へ。
横へ。
まるで大木が急成長するように、建物そのものが巨大化していった。
「うおおおお!?」
「デカくなってるニャ!?」
「すっご……」
外から見ても分かる。
壁はより頑丈に。
部屋数も明らかに増えていた。
やがて変形が止まる。
『――完了しました』
ツクモの声が響く。
『皆様、中へどうぞ』
三人が恐る恐る中へ入る。
そして。
「……は?」
全員が固まった。
そこは別空間だった。
古びていた玄関は新築同然に変わり、廊下は磨き上げられている。居間は広く、キッチンやトイレまで信じられないほど綺麗だった。
まるで――。
『なんということでしょう』
アキラの脳内で勝手にナレーションが流れる。
『匠の手によって、古びた一軒家は快適な空間へと生まれ変わったのです』
「劇的ビフォー⚪︎フターするな!!」
思わずツッコむ。
だが、それ以上に。
視界の端で、何かがチョコチョコ動いていた。
「……?」
「???」
「????!!!!」
「ロボだーーーーー!!!」
アキラのテンションが爆発する。
そこにいたのは、小さな人型のロボット達だった。
どこかオモチャのような丸いフォルム。
エプロン姿。
作業着姿。
それぞれ工具や掃除道具を持ち、忙しそうにツクモ内を動き回っている。
喋ってはいるが、何を言っているのかは分からない。
「かわいいニャ!?」
「ちっちゃ!」
アキラが完全に少年の顔になっていた。
「その子達は、ツクモ内のメンテナンスを担当してくれるのですよ」
静かな声が響く。
そして。
その姿を見た全員が、さらに固まった。
現れたのは。
白い能面。
千手観音のように背後から幾重にも伸びる機械腕。
黒を基調としたメイド服。
人間離れした白い肌。
長い黒髪。
そして圧倒的な巨躯。
静謐さと威圧感を同時に持つ、異形のメイドだった。
「えっ……」
「こわ……キレイ……」
「情報量が多いニャ」
「元々は、ツクモ内にいた生前の人達の記憶。地縛霊と言ってもいいかもしれません」
能面の奥から、静かな声が響く。
「自分達も役割が欲しい。この世界で生きてみたいと願ったのです」
「完全な命ではありません。ですが、ツクモの中でなら生きていけるのです」
そして深く一礼する。
「ツクモです」
「正確には、本体端末の一つですが。記憶や思考は共有しています」
「紛らわしいので、“メイド長”とお呼びください」
驚きすぎて、誰も言葉が出ない。
だが。
「ちなみにデザインは、マスターのスマホデータから検索履歴を抽出しました」
一瞬の静寂。
「黒髪、巨乳、高身長、仏像、ロボ――を参考にしております」
「如何でしょうか?」
「あっさり性癖バラすんじゃねぇぇぇ!!!」
アキラの叫びが、新生ツクモに響き渡った。




