残り一分間!!!
「今、何分〜?」
フレデリカがジンへ尋ねる。
「まだ二分程度だな」
ジンは腕を組んだまま答えた。
「とはいえ……皇帝もまだ様子見だ。意外と警戒してる」
(多分、あいつも俺と同じ事を考えてる)
(不死者をどう対処するかを)
皆が見守る中、三人の攻防は続いていた。
ジーコが超高速で散らばった武器を拾い、四方八方から攻撃を繰り返す。その間に、アキラがリンへ声を飛ばした。
「残り武器は!?」
「投擲できそうなのは三十本! 近接大型が二本! ポーション十二個! あと奥の手が一個ニャ!」
「わかった! 援護頼む!」
アキラも再び前へ出る。
リンは空中で次の奇襲準備に入った。
初めこそ、皇帝もジーコの超高速機動に反応が遅れていた。何発も攻撃を受けている。
だが、ノーダメージ。
しかも徐々に慣れてきていた。
あの重厚な黄金鎧のまま、ジーコの速度に対応し始めている。
(……アキラを狙ってる?)
(囮が効いた? いや、それとも――)
ジーコは気づく。
皇帝の狙いは、自分ではない。
明らかにアキラを優先している。
その瞬間。
「いっけぇぇぇニャ!!」
リンの奇襲。
空中から、身長の二倍はある巨大な戦斧が落下する。
皇帝が初めて大きく回避した。
「今ニャ!!」
三人はその隙に、一度後方へ下がる。
「おそらく、俺の再生と音には気づかれてる」
アキラが荒い息で言う。
「逃げ回れば時間切れは狙える。けど追いつかれたら終わりだ」
ポーションを飲み干しながら、二人は頷く。
「次が最後の攻撃だ」
アキラが笑う。
「耐えきれよ!」
そして単騎で皇帝へ突っ込んだ。
――バチィ。
雷鳴。
空気が震える。
「残り一分」
ジンが小さく呟く。
皇帝が今まで待っていた理由。
一分あれば十分だったからだ。
――バチバチバチバチ!!
初めて。
皇帝が明確に“構えた”。
全身へ雷が走る。
黄金鎧が眩く発光し、大剣へ稲妻が集束していく。
リンのポーション。
回復魔法。
それらでアキラの再生速度は一時的に向上していた。
囮になり、盾になり、無茶苦茶な連携で攻め続ける。
リンの援護。
ジーコの超高速。
アキラの特攻。
その時だった。
皇帝が。
半歩、下がった。
「――チャンス!!」
アキラが飛び込む。
そして。
皇帝と目が合った。
(しまっ――罠!!)
気づいた時には遅かった。
ズバァッ!!
アキラの上半身と下半身が、完全に分断される。
(このダメージなら、再生には時間がかかる)
残るは二人。
皇帝が仕留めに動く。
雷を纏った大剣が、リンとジーコへ振り下ろされる。
「ヂヂヂヂヂヂヂ」
不快音。
(再生するか……)
皇帝が、地面へ転がるアキラへ視線を向ける。
(……早いな。対処する)
「ヂヂヂ」
アキラが。
口で音を真似していた。
一瞬。
ほんの一瞬だけ。
皇帝の意識が逸れる。
この戦いで最初で最後の油断。
それを見逃さなかった。
「うおおおおおニャァァァ!!」
リンが回転しながら大型ハンマーを叩き込む。
「これはワタシ分ニャ!!」
さらに。
「ライダァァァァーーーキィィィック!!!」
ジーコが最速で飛び込み、ハンマーごと皇帝を蹴り抜く。
――ズズズズズッ!!
皇帝が後退する。
亀裂へ。
「トドメは――自爆だァァァ!!」
アキラが爆発した。
轟音。
土煙。
衝撃波。
そして。
――ピィィィィィーーーッ!!
時間切れの笛が鳴る。
「どっちだ……?」
誰もが固唾を呑む。
土煙が、ゆっくり晴れていく。
そこに立っていたのは――
皇帝だった。
三人の最終試練は。
敗北に終わった。




