自爆 チワワ 着せ替え猫
基礎体力の向上と並行して、各自の七曜属性に合わせた本格的な修行が始まった。
アキラは魔王の指導のもと、火属性魔法と木属性の回復魔法を学んでいた。
「不死であるお前に、火属性は持ってこいだ」
魔王は刀を肩に担ぎながら言う。
「誘導、囮、自爆。本来なら火炎による自傷ダメージがあるが……お前には関係ねぇ」
直後。
轟ッ!!
火炎を纏った斬撃が飛ぶ。
「ぐぁっ!?」
アキラはまともに吹き飛ばされ、地面を転がった。
皮膚が焼け、肉が裂ける。
だが。
ジジジ……ギギ……
嫌な音と共に、肉体が再生していく。
「まだ音がデカいな」
魔王は冷静に言った。
「戦闘慣れした奴なら気づく。不死だと悟られないための回復魔法だ」
アキラへ回復魔法を飛ばす。
「回復で再生してるように振る舞え。内部では回復魔法で再生速度向上、痛み遮断だ」
再び火炎が迫る。
アキラも覚えたての魔法で応戦するが、防ぎきれない。
血を吐き、骨が砕け、それでも立ち上がる。
以前より再生速度は上がっていた。
だが致命傷になるほど、再生音は大きくなる。
「まだまだ!」
文字通り血反吐を吐きながら、アキラの修行は続いていった。
一方。
ジーコはミューズのもとで、土属性による身体強化を学んでいた。
ベルベット・ミューズは召喚士。
そしてオカマである。
「本日の修行はァ〜避けること♡」
ミューズが指を鳴らす。
次の瞬間。
タコの足。
怪鳥の羽。
カメレオンの舌。
無数の精霊の部位が、四方八方からジーコを襲った。
「ちょっ、キモッ!?」
初日は五秒も持たなかった。
だが、十秒。二十秒と記録は伸びている。
そして今日は、ついに四十秒台へ突入していた。
(今日はいける!)
そう思った瞬間。
「え?」
何かにつまずく。
足元には――亀の甲羅。
そして背後から、小さな鳴き声。
「……キャン?」
「え、チワワ?」
ガブッ。
「いたぁーーいッ!!」
今日の記録、四十六秒。
「フフフ♡ 油断したわねぇ♡」
「いや最後のチワワいる!?」
リンは相変わらず、サーカスのような修行を続けていた。
だが今日は、リュシエルが大量の荷物を持ってきている。
「これが〜こうで〜」
「ふむふむ……」
リンが真剣な顔で聞いている。
「そういう事か! わかったニャ!」
「で、これを着て〜ここにこれを入れて〜」
「組み合わせは無限大ニャ!」
武器、防具、魔法具。
まるで着せ替え遊びのように、リンは目を輝かせていた。
その頃。
ツクモの家では、ババ様がレイとツクモに話をしていた。
「レイ。あんたには能力があるが、それはアキラと一緒で元の世界から持ってるものだ」
レイは静かに耳を傾ける。
「死者の先にいる、あんたは月魔法の資質はあるが、明確に何かの魔法を教えては上げられない」
ババ様はレイのスウェット姿を見て、少し笑う。
「ただ、外には出れるだろうし、そのみずぼらしいスウェットも、自分の意思で変えられるとは思うよ」
レイは少しだけ、自分の服を見る。
「それとツクモ」
今度は家全体へ視線を向ける。
「あんたはこれから、仲間の命を預かる上で一番重要だ」
静かな声だった。
「あんたの中に今いる、無数の記憶達は何を求めている?」
ツクモは考える。
家の中に残る、記憶達の声。
『役割が欲しい……』
『存在してもいい理由が欲しい……』
その言葉を、ツクモはゆっくり口にした。
「なら、あんたの出番だ」
ババ様は優しく笑う。
「想像しなさい。あんたの属性は金。金魔法は雷も主体だが、金属生成もできる」
「役割を作ってあげなさい」
「動ける体を作ってあげなさい」
「たとえ仮初の命でも、ツクモの中でしか生きる事が出来なくても、ここにいてもいい理由を作ってあげなさい」
ツクモは静かに考える。
自分もまた、この世界で命を貰った存在だった。
役割を貰った存在だった。
だったら――。
その願いは、少し先の未来で形になることになる。




