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第44話:お堀を埋める信長
「織田さまぁ、おやめください! 貴方様自らが率先して堀を埋めるなど……和議の体裁がめちゃくちゃですぅ!」
外堀を埋める工事現場、家康は顔を覆って泣き叫んだ。だが信長は、着物の裾をまくり上げ兵たちに混じってウキウキで巨大な岩を堀へと投げ込んでいた。
「 楽しいにゃあ、城を殺す作業は! おみゃあが吐いた外堀だけという話をわしがこの手で内堀まで広げてやっとるんだで感謝せぇ。ほれ、おみゃあも岩を運べ!」
「内堀まで埋めたら、秀頼さまの逃げ場がなくなります! 私は誠実な交渉人として大坂を説得したのにぃ!」
「誠実? おみゃあのその狸の空々しい笑顔があったからこそ、俺は安心して内堀を埋められるんだわ。おみゃあは最高の囮ダヌキだで、いい餌だわ!」
信長は、家康の腰から扇子を奪い取ると泥だらけの足で埋め立ての音に合わせて無邪気に踊り始めた。
「ええがや、ええがや! 英雄の城がただの更地になるわ! 家康、おみゃあがこれから作るのは、こうやって嘘と泥で固めた誰も逃げ出せん平和という名の牢獄だわ。もっと土を盛れ!」
家康は泥の中に膝をつき、信長の高笑いと城が埋まっていく鈍い音を絶望と共に聴いていた。




