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第39話:臆病者の家康
「織田さま、ついに支倉常長を乗せた船がローマへ旅立ちました。天下の主として、異国とも対等に渡り合わねば……」
家康が夢見心地で呟くと、信長は図面の上に土足で乗り上げ、家康の耳を思い切り引っ張った。
「対等だと? おみゃあ、まだそんな甘っちょろい夢を見とるのか。伊達政宗のような油断ならん男に船を出させたのは、おみゃあの臆病さが原因だろうが!」
「臆病……? 私はただ、国を開き……」
「嘘をつけ! 異国の神や大砲をチラつかせて、大坂を威圧したいだけだわ。おみゃあは、海を越えた先の王どもさえも自分の身内に引き込んで、豊臣を孤独に追い込もうとしとる。その執念もはや武士でのうて、あきんどの汚さだがや!」
信長は家康を揺さぶり、水平線の先を指差した。
「ええか家康、海の外も地獄だわ。おみゃあが死ぬまでの間、この国を誰にも触らせんという独占欲を世界に見せつけてやるんだがや。おみゃあの作った檻は、もはやこの島国には収まらんのだわ!」
家康は荒れ狂う波のような信長の言葉に、ただ息を切らしていた。




