表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死体の山で蝿に囲まれていた少女は、“蝿の王女”と呼ばれながら人間になることを学んでいる  作者: ベルモット
第3章 使われる力

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/96

選ぶ場所

 夜の空気は冷たかった。


 二人は街の外れまで移動していた。


 人の気配は少ない。


 古い倉庫街。


 灯りもまばらで、静かだった。


 タケトシが足を止める。


「ここなら」


 短く言う。


 ミリアは周囲を見る。


 広さ。

 遮蔽物。

 逃げ道。


 全部を確かめる。


 悪くない。


 狭すぎない。


 だが、開きすぎてもいない。


「……使える」


 小さく言う。


 タケトシは頷く。


「向こうも追ってくる」


 確信だった。


「なら、場所はこっちが選ぶ」


 ミリアは視線を動かす。


 入口は二つ。


 高低差もある。


 屋根の上も使える。


 閉じ込められにくい。


 逃げるためではない。


 戦うためだ。


「三人」


 ミリアが言う。


 本隊。


 あの三人。


 タケトシは頷く。


「連携が強い。

 一人ずつ崩さないと、押し切れない」


 ミリアは思い出す。


 正面から入って、止められた。


 速さだけでは届かない。


 だから。


「……ずらす」


 短く言う。


 タケトシが少しだけ笑う。


「そうだ」


 正面から壊せないなら。


 形を崩す。


 位置を。

 順番を。

 判断を。


 そのために使う。


 この場所を。


 タケトシは古い鉄扉を見る。


「ここは音が響く」


 倉庫の壁。


 狭い通路。


 死角。


「誘導できる」


 ミリアは静かに聞く。


 頭の中で形にしていく。


 一人を切る。


 二人を分ける。


 サクには通じない。


 だが、本隊には届く。


「……やれる」


 自分に言うように。


 小さく。


 だが、確かに。


 タケトシが近づく。


「無理はするな」


 短い言葉。


 それだけだった。


 ミリアは視線を上げる。


「する」


 即答だった。


 だが、乱暴ではない。


 ただ事実として。


「止まれない」


 タケトシは少しだけ目を細める。


 困ったように。


 でも、どこか安心したように。


「知ってる」


 それだけ返す。


 ミリアは何も言わない。


 だが、その空気は嫌じゃなかった。


 沈黙が重くない。


 それは少しだけ、昔とは違う。


 その時。


 風が変わった。


 気配。


 遠い。


 だが、確実に近づいている。


 ミリアの視線が鋭くなる。


「……来た」


 タケトシも振り返る。


 街の奥。


 闇の向こう。


 まだ姿は見えない。


 だが、分かる。


 本隊。


 そして、その先に。


 もっと上がいる。


 ミリアは息を吐く。


 恐怖はない。


 あるのは確認だけ。


 届くかどうか。


 それを知るために立つ。


「始まるな」


 タケトシが低く言う。


 ミリアは頷く。


 短く。


 静かに。


「……うん」


 二人は動かない。


 逃げない。


 待っている。


 自分たちで選んだ場所で。


 次の戦いを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ