本隊
路地を抜けた先で、ミリアは足を止めた。
空気が違う。
重い。
さっきまでの連中とは、明らかに異なる。
前方。
影が並んでいる。
三人。
数は多くない。
だが、それで足りる。
動きが揃っている。
隙がない。
タケトシが低く言う。
「……来たな」
確認ではない。
確信だった。
ミリアは視線を外さない。
距離を測る。
近い。
だが、踏み込めない。
踏み込めば、崩される。
そう分かる。
中央の一人が、一歩前に出る。
音はない。
だが、圧だけが伝わる。
「対象、確認」
低い声。
感情がない。
まっすぐにミリアを見る。
「抵抗、確認済み」
淡々と続く。
「回収を開始する」
その言葉と同時に、動いた。
速い。
だが、あの影とは違う。
見える。
だが――重い。
ミリアが踏み込む。
先に動く。
間を取らせない。
拳を振るう。
防がれる。
正確に。
無駄がない。
すぐに返される。
衝撃。
腕が弾かれる。
距離が開く。
ミリアは止まらない。
踏み直す。
角度を変える。
再び入る。
だが、同じ。
読まれている。
もう一人が動く。
横。
挟まれる。
ミリアは位置をずらす。
抜ける。
だが、遅い。
掠る。
服が裂ける。
浅い。
だが、重い。
今までと違う。
ミリアの呼吸が、わずかに変わる。
速くなる。
だが、崩れない。
タケトシが動く。
横から入る。
タイミングが合う。
一瞬、流れがずれる。
その隙。
ミリアが踏み込む。
拳を打つ。
当たる。
だが、浅い。
効かない。
すぐに引かれる。
距離が戻る。
「……強いな」
タケトシが低く言う。
事実だけを。
ミリアは答えない。
ただ、見ている。
動き。
癖。
選び方。
さっきの影とは違う。
だが、似ている。
無駄がない。
選び続けている。
ミリアの中で、何かが重なる。
さっきの戦い。
あの感触。
届いた距離。
あれを使う。
ミリアは息を整える。
一歩、下がる。
相手が詰める。
同時に。
ミリアが踏み込む。
今度は、合わせる。
ぶつけるのではない。
ずらす。
流す。
そのまま内側へ。
距離が消える。
拳を打つ。
今度は深い。
一瞬、相手の動きが止まる。
だが――
完全ではない。
押し切れない。
もう一人が入る。
遮る。
連携。
隙がない。
ミリアは離れる。
無理はしない。
崩れない。
視線を上げる。
三人。
変わらない。
崩れていない。
タケトシが低く言う。
「長くは持たない」
ミリアは小さく頷く。
分かっている。
ここは、押し切る場所じゃない。
選ぶ。
次の動き。
その時。
空気が、わずかに変わる。
別の気配。
遠い。
だが、はっきりとある。
ミリアは目を細める。
理解する。
見ている。
あれが、まだ。
ミリアは前を見る。
三人。
そして、その向こう。
選ぶ。
ここで終わらない。
「……行く」
短く言う。
意味は一つ。
抜ける。
タケトシが頷く。
同時に動く。
正面ではない。
斜め。
隙を作る。
崩すのではなく、ずらす。
一瞬の空白。
そこを抜ける。
三人の動きが追う。
速い。
だが、わずかに遅い。
それで十分だった。
二人は走る。
止まらない。
背後に圧を感じながら。
まだ終わらない。
戦いは、これからだった。




