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死体の山で蝿に囲まれていた少女は、“蝿の王女”と呼ばれながら人間になることを学んでいる  作者: ベルモット
第3章 使われる力

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本隊

 路地を抜けた先で、ミリアは足を止めた。


 空気が違う。


 重い。


 さっきまでの連中とは、明らかに異なる。


 前方。


 影が並んでいる。


 三人。


 数は多くない。


 だが、それで足りる。


 動きが揃っている。


 隙がない。


 タケトシが低く言う。


「……来たな」


 確認ではない。


 確信だった。


 ミリアは視線を外さない。


 距離を測る。


 近い。


 だが、踏み込めない。


 踏み込めば、崩される。


 そう分かる。


 中央の一人が、一歩前に出る。


 音はない。


 だが、圧だけが伝わる。


「対象、確認」


 低い声。


 感情がない。


 まっすぐにミリアを見る。


「抵抗、確認済み」


 淡々と続く。


「回収を開始する」


 その言葉と同時に、動いた。


 速い。


 だが、あの影とは違う。


 見える。


 だが――重い。


 ミリアが踏み込む。


 先に動く。


 間を取らせない。


 拳を振るう。


 防がれる。


 正確に。


 無駄がない。


 すぐに返される。


 衝撃。


 腕が弾かれる。


 距離が開く。


 ミリアは止まらない。


 踏み直す。


 角度を変える。


 再び入る。


 だが、同じ。


 読まれている。


 もう一人が動く。


 横。


 挟まれる。


 ミリアは位置をずらす。


 抜ける。


 だが、遅い。


 掠る。


 服が裂ける。


 浅い。


 だが、重い。


 今までと違う。


 ミリアの呼吸が、わずかに変わる。


 速くなる。


 だが、崩れない。


 タケトシが動く。


 横から入る。


 タイミングが合う。


 一瞬、流れがずれる。


 その隙。


 ミリアが踏み込む。


 拳を打つ。


 当たる。


 だが、浅い。


 効かない。


 すぐに引かれる。


 距離が戻る。


「……強いな」


 タケトシが低く言う。


 事実だけを。


 ミリアは答えない。


 ただ、見ている。


 動き。


 癖。


 選び方。


 さっきの影とは違う。


 だが、似ている。


 無駄がない。


 選び続けている。


 ミリアの中で、何かが重なる。


 さっきの戦い。


 あの感触。


 届いた距離。


 あれを使う。


 ミリアは息を整える。


 一歩、下がる。


 相手が詰める。


 同時に。


 ミリアが踏み込む。


 今度は、合わせる。


 ぶつけるのではない。


 ずらす。


 流す。


 そのまま内側へ。


 距離が消える。


 拳を打つ。


 今度は深い。


 一瞬、相手の動きが止まる。


 だが――


 完全ではない。


 押し切れない。


 もう一人が入る。


 遮る。


 連携。


 隙がない。


 ミリアは離れる。


 無理はしない。


 崩れない。


 視線を上げる。


 三人。


 変わらない。


 崩れていない。


 タケトシが低く言う。


「長くは持たない」


 ミリアは小さく頷く。


 分かっている。


 ここは、押し切る場所じゃない。


 選ぶ。


 次の動き。


 その時。


 空気が、わずかに変わる。


 別の気配。


 遠い。


 だが、はっきりとある。


 ミリアは目を細める。


 理解する。


 見ている。


 あれが、まだ。


 ミリアは前を見る。


 三人。


 そして、その向こう。


 選ぶ。


 ここで終わらない。


「……行く」


 短く言う。


 意味は一つ。


 抜ける。


 タケトシが頷く。


 同時に動く。


 正面ではない。


 斜め。


 隙を作る。


 崩すのではなく、ずらす。


 一瞬の空白。


 そこを抜ける。


 三人の動きが追う。


 速い。


 だが、わずかに遅い。


 それで十分だった。


 二人は走る。


 止まらない。


 背後に圧を感じながら。


 まだ終わらない。


 戦いは、これからだった。

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